AppleやYouTubeも。なぜ、「アート」を学んだ起業家は成功するのか?(後篇)

前篇では、GoogleやWeWorkといった企業の事例を交えながら、これまでは趣味・娯楽としての側面が強かったアートがビジネスにおける必須科目となりつつあることを述べました。

今回の後篇では、その理由に迫り、なぜアートを学ぶ起業家が今の時代に大きな成功を収めているかを解き明かしたいと思います。

アートを学ぶ起業家が成功を収める背景には、テクノロジーの進歩によって私たちの生活が急速に変化していることが挙げられます。

インターネットやスマートフォンの登場によって、これまで存在していた境界線はなくなり、様々なことがクロスボーダーな時代になっています。日本では英語を話してビジネスすることが国際化だと思われていますが、世界の最前線では国籍や言語だけでなく、職種や専門まで境界がなくなりつつあるのです。

そして、こうした領域を越えたものの考え方こそが、イノベーションを加速させるために求められているのです。

ウォルター・イサークソンは著書『Leonardo da Vinci』で、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アルベルト・アインシュタイン、スティーブ・ジョブズといった偉人たちには共通点があると言っています。そして、その共通点こそが領域や専門性を越えた発想や考え方です。

現代においてアートを学んだ起業家が大きな成功を収めているのは、まさにこの点です。テクノロジーによって物理的な境界線や制約が薄れた環境では、過去の最適化や改善だけではなく、一見全く関係のない点と点を繋ぎ、新しい視点を生み出す力が必要になっています。

インターネットやスマートフォンが普及するまでは自己承認、いわゆるステータスの時代でした。

稼いだお金で車を買い、家を建てることはステータスとされ、会社の中では出世をするために死に物狂いで働いていました。

しかし、現代ではどうでしょうか?

私たちは今、自己実現の時代に生きています。現代ではインターネットを通していくらでも好きな人々や集団と繋がれます。

また、物理的にも転職や留学といったハードルが大きく下がり、自由に自分が所属するグループを選べるようになりました。さらにソーシャルメディアに投稿すれば簡単に人々から「イイね」や「シェア」という形で他人からの承認が得られ、インスタント自己承認が実現されるようになったのです

簡単に承認欲求が満たされるようになり、人々は自己実現を求めるようになりました。また、インターネットによって世界中の人々の様々な生き方を知れるようになったことも大きなポイントです。

こうして、お金や地位、ステータスのために働くという考え方から、自分が本当にやりたいことや好きなこと、自分だけの人生を送りたいという人が急増したのです。生き方やライフスタイルといった点が重要視されるようになり、その考え方は仕事選びや購買行動にまで影響を与えるようになりました。

自己実現の時代において重要なのは物事の「意味」です。働くことの意味、物を買うことの意味、生きることの意味。

20世紀は社会によって人生の意味は明確に与えられていました。しかし、21世紀は一人ひとりが自分で意味を創る時代。

そして、アーティストこそ、意味を創るプロフェッショナルなのです。なぜなら、彼らは色々な角度から物事を観察し、様々な視点で解釈し、これまで無関係であった点と点とを結び、新たな意味を社会に創り出すからです。

もちろん、趣味としてアートを見ることも人生に奥行きをもたらす素晴らしい体験ですし、美意識も鍛えられると思います。しかし、私たちがアートから本当に学ぶべきことは、無関係な点と点を結び新たな意味を創り出す、その物の見方や考え方にあると言えます。

21世紀においてアートを学んだ起業家が大きな成功を収めているのは、これまでの物の見方や捉え方を壊し、新しい意味を作り出し、ジャンルや境界といったボーダーを越えて点と点を繋いで、その意味を具現化できるからなのです。

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