なぜ、「日本のテクノロジー×スペインのデザイン」は勝利の方程式なのか?(後篇)

前篇では、いま私が携わっているプロジェクト「Japanese Technology Meets Spanish Design」について書きました。これは、日本のテクノロジーとスペインのデザインを融合させることで、前者が持つ価値を最大限に引き出し、経済的な価値に大きく転換させることで日本企業の国際的な競争力を高めるという構想です。

今回の後篇では、他の欧米諸国ではなく「なぜ、スペインのデザインなのか?」を説明するとともに、具体的な成功事例について紹介しましょう。

なぜ、スペインなのか。

日本とスペインの歴史的な背景に目を配ると、両国ともゼロから新しい何かを生み出すよりも、海外からアイデアを輸入し、それを国内で独自の形にカスタマイズして改良していくのが得意だということが分かります。これは、地理的な特徴が影響しているのかもしれません。

例えば、スペインがあるイベリア半島は、他のヨーロッパ諸国からピレネー山脈で分断されています。日本もアジアの島国ということもありアジア諸国から分断されています。

こうした地理的な特性が海外から輸入したアイデアを自国で独自の形で発展させるというユニークな文化を作った要因の一つかもしれません。また、日本が中国や朝鮮半島の文化を取り込んでいったように、スペインもアラブの文化を多く取り込んでいます。

この特徴は日本の価値を引き出すことを考えた時に非常に重要なポイントです。なぜなら、こうした柔軟性がないと、融合させた時に真っ向からぶつかってしまい、シナジーを生み出しにくいからです。

実は、こういった特徴はデザインの面でも見られます。ほとんどの日本人にとってはヨーロッパのデザインと言えばどれも同じに感じるかもしれませんが、ゲルマン語圏とラテン語圏では大きな違いが存在するのです。

ドイツや北欧といったモダニズムの主要な思想家が生まれているゲルマン語圏の国々では、デザインは機能性に重きを置いています。一般的にこうした国々のデザインがミニマリスティックなのは、機能性をより重視しているためです。

その一方で、フランスやイタリアといったロマンス語圏の国々ではデザインはより感性的でアーティステックな要素が強くなるのです。インテリアデザインなどを思い浮かべると分かりやすいかもしれません。

もちろん、これはゲルマン語圏のデザインに感性の要素がないとか、ロマンス語圏のデザインは機能性を無視しているという意味ではありません。デザインの傾向に大きな違いが見られるということです。

スペインはどうかというと、機能性と感性をバランス良く両取りしています。

これは、スペインのデザインが歴史的に様々な国から多くの影響を受けているからかもしれません。他国からの様々な影響は、スペインのデザインが機能性と感性のバランスを取る源泉になっていると考えられます。日本と同じように外から輸入したアイデアを自国流にアレンジ、改良していくという文化が成せる強みなのかもしれません。

世界には数千、数万におよぶ様々なデザインのスタイルが存在します。普遍的にこれが一番という答えは存在しません。どのデザインが良いかは優先度や価値観の問題ですし、デザインの優劣をつけたいわけではありません。

ただ、日本企業のテクノロジーの価値の最大化という観点からだと、スペインのデザインが最適と言えます。日本企業の持つテクノロジーの多くはその複雑さや精密さからアートの域に達しているものが多く存在します。

しかし一方で、プロダクトドリブンのため、消費者と製品の感情レベルでの繋がりが強くありません。特にグローバル市場でこの傾向は顕著です。

そのため日本企業に必要なのは、日本のテクノロジーという機能的な部分が主体でありながらも、感性的な部分もバランス良く持ち合わせ、消費者との感情的な繋がりを生み出せるデザインなのです。

機能性にしても感性にしても、どちらか一方が強すぎては日本のテクノロジーの良さは引き出されません。例えば、世界トップの品質の気象関連センサーを製造するEKO(英弘精機)とのプロジェクトでは、海外版ウェブサイトをリデザインした途端に海外売上が前月比1.7倍、月間ベースでも過去最高を記録しました。

SIDO Japanという富山県の工場で職人の手によって作られた包帯から下着を作るブランドとのプロジェクトも好例です。

製品は世界トップの品質で、あのマドンナがコンサートで使用する程です。しかし、グローバルブランドとしてのブランド力強化に課題を抱えていました。

そこで包帯という素材の持つ価値やブランドの哲学を改めて掘り下げ、取るべき戦略を見定め、それらを視覚化していきました。ヨーロッパを真似したようなデザインや注目を集めるためのイラストなどではなく、日本と包帯の根底にある価値を引き出し、スペインのデザインによってそれらを体現したことで、実際に海外進出を果たす前から『Brand New』や『graffica.info』など海外のブランディングやデザイン関連の重要なウェブメディアや雑誌で特集されました。

また『Behance』というクリエイティブ系のソーシャルメディアで同プロジェクトを共有したところ、1800を超えるLikeを獲得するなど海外のクリエイティブ層から大きな支持を得たのです。

結果としてヨーロッパのセレクトショップから販売依頼があるなど、テクノロジーの価値が最大限に引き出されました。日本のモノづくりの価値がスペインのデザインによって再解釈され表現されたことで、その価値がきちんと伝わったのです。

イノベーションやテクノロジーと言うと、ついつい新しいものを求めがちですが、既に持っている価値をどう引き出すかという点は非常に大切です。

病院に行けば症状に合わせて処方箋が出されるように、今日の日本が抱える課題には、日本に合った解決策が必要です。欧米企業のように買収、吸収合併をするのも一つの方法かもしれませんが、スペインのデザインによって既に持っているテクノロジーの価値を引き出すのもまた一つの方法なのです。

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