業界の常識を変える「スペインのファッションブランド」
私が暮らすスペインと日本とでは、「サステイナブル」の考え方が根本的に異なると感じています。
では、どう違うのか?
第一回目はレストランを、第二回目はクリエイティブ企業を題材にして説明しました。第三回目となる今回は、あるファッションブランドが主役です。
服を作って売りっぱなし……ではない
最後に、今スペインだけでなく欧米全体で注目されているファッションブランド「ECOALF」を紹介したいと思います。
日本でもリサイクル素材や天然素材から服を作るフッションブランドが増えていますが、彼らが取り組んでいるのは、ファッションを通じた海、ひいては地球環境の改善です。
多くの人がすでに知っているように、海には多くのプラスチックゴミが廃棄され、その量は年間800万トンにもなります。そうしたゴミは漁師が漁を行う度に魚と一緒に引き揚げられています。
ECOALFは漁業協会からこうしたゴミを買取り、スペイン国内の工場でプラスチックゴミや廃棄された漁業用の網を繊維に加工し、そこから服を作っているのです。
さらに海の環境改善のために基金を創設し、「UPCYCLING THE OCEANS」というプロジェクトを通してスペインやタイでプラスチックゴミの回収と再利用の教育活動やゴミの回収作業に参加しています。
それだけでなく、ファッション業界という産業のあり方と消費者の意識を改革するために、彼らは自分たちが過去に販売した製品の回収作業にまで着手。利益のためにひたすら新しいアイテムを作って売りっぱなしにするのではなく、過去に販売した服を回収することで、生産、回収、再利用というサイクルを作り、業界の構造を変えようとしているのです。そのために創業者のハビエル・ゴジェネチェは世界中のカンファレンスに登壇し啓蒙活動も行っています。
このように、スペインおけるサステイナビリティは、表面的・部分的なものではなく、企業の意思決定や行動にまで反映されています。なぜなら、こうした活動は他者から評価されるために行っているのではなく、明確な目的意識とミッションのもとに実践されているから。
経済的な規模で言えば日本は世界3位、スペインと比べれば4倍以上あります。そんな日本だからこそ、本質的なレベルでサステイナビリティを実践すれば、世界に誇れる美しい国になれるかもしれません。