持続可能なファッションとは?スペインの至宝「Maria Lafuente」デザイナーインタビュー【第2回】

前回の記事では、自身の名を冠したブランドで、スペインの、そして世界のサステイナブルファッションを牽引し続けてきたデザイナーのマリア・ラフエンテさんの生い立ちに迫りました。今回の記事では彼女のキャリアとファッションに対する考え方について話を聞いていきます。

Maria Lafuente(マリア・ラフエンテ)

スペインのファッションブランド「Maria Lafuente」の創業者にしてデザイナー。サステイナブルファッションの最前線を走り続け、15年にわたってジャンルを牽引。「Mercedes Benz」主催の「Madrid Fashion Week」には2006年から参加している。ハイファッションとサステイナビリティをはじめて融合させたデザイナーの一人で、世界最大級の森林認証制度を設けるNGO「PEFC」 の「Fashions Change, Forests Stay 2021」の大使などにも選ばれている。また、世界有数の名門ミュージアム「プラド美術館」でコレクションを発表するなど、その斬新なアプローチにも注目が集まる。

──これまで数々のファッションウィークに参加され、スペインのファッション業界でもっとも重要な人物の一人とされるラフエンテさんにとって“ファッション”とはなんでしょうか?

 

ファッションは単なる流行りでなく、もちろん、キャットウォークや照明といったショーのなかで見られる魔法でもありません。

ファッションとは生き方でありアートであり、私たちが誰であるかを現しています。また、自分と調和したものを身につけることで、自分自身の気持ちも高まります。

©María Lafuente

そして、身につけた人には、情熱と愛情を込めて作られたものを大切にしたいという心も芽生えるのです。

素材やデザインにこだわるだけでなく、作り手の想いがこもったものこそが本当のファッションだと考えています。

 

──なるほど。ちなみに、ブランドのロゴに蝶を使っていますが、どういった意味がこめられているのでしょう?

 

ロゴの蝶は“開放性”を意味しています。

自分自身であることの自由と、私たちを元気にしてくれるものをほかの人と分かち合うことを意味しています。

また、もちろん、自然や私たちを取り巻くすべてのものへの愛も含まれています。このブランドを通して人々と共に成長し、社会にポジティブな種を残したいと考えています。

そういった思いがこの蝶には込められているんです。

©María Lafuente

──ファッションやブランドに独特な哲学をおもちなんですね。では、これまでのキャリアのなかで重要だったプロジェクトをいくつか教えてください。

 

すべてが重要ではあるので選ぶのは非常に難しいのですが......もっとも重要なプロジェクトの一つは、スペインオリンピック委員会のユニフォームやアクセサリーといったコーポレートアイデンティティを制作したことです。

このプロジェクトでは、社会的、政治的、文化的に非常に異なる領域から、スペインを代表する人々が身に着けるアイデンティを作り上げました。

また、国連の持続可能性に関するサミットで、ファッションについてだけでなく、持続可能な開発目標について語る世界初のデザイナーとなったことも大きな出来事でした。この功績が認められ、スペインのサステイナビリティの分野でもっとも重要な認証の一つである「PEFC España」を獲得することができました。

 

──スペインのファッション業界におけるサステイナビリティという概念を変えるきっかけになったともいえますね。

 

そうですね、非常に重要なターニングポイントでした。

また、映画『パラノイド・ガールズ』でハリウッドの「アカデミー賞」にノミネートされたことも、私のキャリアのなかでの成功のひとつです。

社会から疎外された女性たちや、さまざまな活動をおこなうNGOと連携して支援活動をすることで、世界は多くの社会的、そして連帯的活動を必要としていることを認識しました。

そのほかにも、スペインの「国立パラドール・ホテル」のコーポレートアイデンティティを制作したり、ブランドの成長のなかで大きな節目となったプロジェクトはいくつかあります。

ブランドが世界中の多くの人に知られ、愛してもらえているのは、私たちが服にこめたメッセージがしっかりと届き、そんないくつかの光栄な出来事があったからだと考えています。

すべての事象は、雨粒が集まって川となり、流れ出て海になる、そんな自然のように連綿とつながっているものなのです。

©María Lafuente

【取材後記】

マリア・ラフエンテさんの話を聞いていて印象的だったのは、ブランドの根幹に他者や社会、自然とのかかわりという点が非常に強く根付いていることです。ファッションというとオシャレとか流行りとか、どうしても表面上の話になりがちですが、彼女はファッションという芸術を通して、世界をよりよい場所にしようとしているのではと感じました。次回の記事では、マリア・ラフエンテさんの現在と未来に迫りたいと思います。

【第3回】は9月28日19:00公開

Top image: © María Lafuente
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。