スペイン人に学ぶ、充実した人生を送るための「5つの鍵」
スペインの首都、マドリッドに暮らして約5年。戦略デザインコンサルのアドバイザーを務める傍ら、本の出版や講演、アートの展示など創造性に関わる仕事をしています。
日々の暮らしの中で、スペイン人から学ぶことは本当にたくさんあります。それは、彼らが「人生を謳歌するエキスパート」だから。
ここでは、私たち日本人の参考となる「彼らの生き方」を紹介したいと思います。
01.
好きなことこそ全力で
情熱の国と言われる所以は、スペイン人が好きなことに注ぐ時間を大切するからと言えます。好きなことは情熱を持てるので、自然とクリエイティブになり、パフォーマンスも向上します。スペインから素晴らしいアーティスト、シェフ、アスリートが大勢輩出されるのは、彼らが好きなことに全力を注ぎ、情熱を持って取り組んでいる結果です。
45歳でアートを始め、51歳でソフィア王妃芸術センターに展示したアーティスト。保険会社の部長という安定した地位を捨て、マドリッドトップにまで上り詰めたシェフ。20代をオリンピック選手として過ごし30代でホテルグループを作った起業家など、情熱を持って生きるのに年齢もジャンルも関係ありません。
スペイン人にとっての遊びや趣味は、暇つぶしやストレス発散とはわけが違います。子供が遊びに夢中になり時間を忘れるように、趣味や遊びも全力。だからこそ様々な発見や創意工夫が生まれ、結果として飛躍的な成長を遂げてしまうのです。
人生を謳歌するには、好きなこと、遊び、趣味を疎かにしてはいけないのです。
02.
仕事は人生のほんの一部
スペイン人にとって仕事は人生のほんの一部分です。当然のことですが人生には、お金を稼ぐこと以上に大切なことがたくさんあり、多くの人がその価値観を共有しています。
もちろん、仕事は大切なこと。日本人よりも精力的にビジネスをしている人がスペインには大勢います。働いている時間が短くても、働いている際のエネルギー量が違うのです。
とは言っても、彼らは仕事のために生きているわけではありません。仕事が忙しくてやりたいことが何もできない、家族と過ごす時間がないなんていうのは本末転倒なのです。本当に大切なことはお金を稼ぐこと自体ではなく、稼いだお金で家族や友人、そして自分のために、どう時間を使うか。豊かで充実した人生を送るには、人生という限られた時間をどう使うかが鍵なのです。
03.
お金は量よりも使い方
スペイン人はお金を使うことが大好きです。リーマンショックの真っ只中でも小売業界の売上高が落ちなかった程よくお金を使います。
しかし、スペイン人の人生が豊かなのは、物を沢山買うからではなく、体験にお金を使うから。例えば、食事に行けば気軽に奢り奢られます。それは、年功序列でも立場の問題でもなく、一緒に時間を過ごす相手をもてなしたい、素晴らしい時間を共有したいという気持ちからです。レストランではチップは強制ではありませんが、実際には多くの人が僅かなチップを払います。それも、美味しい食事で豊かな時間を提供してくれたレストランに対する気持ちなのです。
また、道端や電車では、音楽の演奏や芸を披露しているアーティストや大道芸人に、多くの人がチップを払います。文化的活動に対する敬意や応援の意味もありますが、そういった文化的な体験に対してお金を払っているのです。人生を豊かにするのはお金ではなく、お金の使い方だということをスペイン人は教えてくれるのです。
04.
皆と分かち合う
誰かと何かを共有するというのは、人生を豊かにするために非常に重要な要素。スペイン人は自分の所有物、知識、経験を独り占めせずに惜しまず周囲と共有します。持っているものを独り占めしたところで、満足感や充実感はたかがしれているからです。
人々と共有すれば、自分だけでなく多くの人の人生が豊かになります。今では世界最高峰の食の街として知られるサンセバスチャンは一昔前はいたって平凡な街でした。しかし、若いシェフが集まって各レストランの秘伝の味や調理法を共有したことで、街全体の食のレベルが上がり、結果的にミシュランの星を獲得したレストランの集まる密度が世界一高い街にまで成長したのです。
大切なのは他人に迷惑をかけないことでなく、他人とどう喜びを共有できるか。荷物を持っている人がいたら助ける、道が困っている人が教える、喉が渇いている友人がいたら飲み物を分ける、空いている部屋を人に貸す。自分が知っていることや持っている物、経験してきたことを惜しみなく人々と分かち合うことで、より多くの人が喜びを感じることができ、結果として自分が感じる喜びも増えるわけです。
05.
オンとオフはハッキリわける
日本人から見るとスペイン人は仕事をしていないイメージかもしれません。今でも午後の2時から5時頃はシエスタを取っているお店も多く存在します。
しかし、国全体で見ると1時間あたりの生産性はスペインの方が日本よりも高いのです。それは、スペイン人は精神論で頑張るのではなく、ちゃんと休めばその分しっかり働けると理解しているからです。1~2時間おきにコーヒータイムを取って休憩したり、2~3週間の長期休暇を取ってリフレッシュすることでダラダラ働くことを防ぎます。
例えば、暑くて生産性が落ちる夏は少し早く始業して午後3時には終業するなど、仕事をしながらも楽しく生きる工夫を施します。パフォーマンスの高い企業であればあるほど、休むことや休暇を取ることを徹底しているのです。休むことを考えずに仕事をしている時の生産性ばかり気にしていても、ストレスが溜まる一方で非効率。人間は機械ではないですから、疲労が蓄積され生産性が落ちます。働くより先にまず休みを取る工夫をしっかりすることで、働いている時間の生産性を高めることが出来るのです。