独学で日本食を極めたスペイン人シェフ、フリアン・マルモルの夢とは?【第3回】
独学で日本食を学び、ミシュランの星を獲得したフリアン・マルモル氏の生き方と考え方、そして日本食に対する彼の情熱について迫った、第1回と第2回。
最終話となる今回は、彼の今後のビジョンについて聞いてみたいと思います。
「料理人は、世界でもっとも尊く、素晴らしい職業です」。
そう言い切る気鋭の日本食シェフが思い描く未来とは......?
「Yugo The Bunker」オーナーシェフ、「OKASAN」共同創業者。自動車業界から一転して独学で日本料理研究と会員制レストランを
──圧倒的な情熱で独学で日本食レストランを立ち上げ、ミシュランの星まで獲得されたマルモルさんですが、今取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。
現在、いくつかの大きなプロジェクトを抱えています。
6月から9月にかけてはリゾートエリアの5つ星ホテルのなかに、お客様に合わせたサービスを提供するレストラン「GODAI」をオープンします。
また10月からは、首都・マドリードの新たなラグジュアリーアイコンとなる「フォーシーズンズホテル」のなかの「Galería Canalejas」というフードホールで、2つの新しいコンセプトレストランを展開します。
その第一弾である「モンチス」は、日本料理とメキシコ料理の交差点となり、技術や料理の創造性と卓越性が発揮される場です。日本の哲学を取り入れたメキシコの「おまかせバー」は、ヨーロッパでは初、世界では2番目のスタイルです。
ハンバーガーやサンドウィッチなど、人気のあるフォーマットを再定義することで、訪れる人々に驚きを与えたいと思っています。
そして最後に、私のもっとも個人的なプロジェクトである「Kuu」です。
私の家が新しいイノベーションを模索するための秘密の料理研究開発所となります。私のキャリアに付き合ってくれているスポンサーやブランドだけを対象とした8人までのプライベートなイベントを開催します。
向こう数ヵ月間は激務になりますが、心から楽しみにしています。
──日本では、食は非常に重要な文化の一部です。 日本でレストランを開いたり、プロジェクトを展開したいと思いますか?
もちろん!それは私の大きな夢のひとつです。
──今後のキャリアにおいて、どのようなことを実現したいと考えていますか?
私が仕事上で達成できる最大のことは、新しい料理人やシェフの模範になり、インスピレーションを与えること、そして世界でもっとも素晴らしい職業の一つである“料理人”としての情熱を世界の人々に伝えることです。
──では最後に、何かクリエイティブなことに打ち込みたいと思っている人たちへのメッセージをお願いします。
夢を追い求め、それを実現するために挑戦することを強く勧めます。
なぜなら、それこそが自分の人生を充実したものにさせる“唯一の方法”だからです。
【取材後記】
フリアン・マルモル氏との会話を通してもっとも印象的だったのは彼の持つ情熱です。
日本に行ったことのない彼が独学で日本食を学ぶというのは、常識的には考えられない選択といえるかもしれません。しかし、彼の持つ情熱は、その不可能を可能にしてしまいました。
どんな仕事をするにしても、何かをやり遂げるには本気で臨む必要があります。
彼に話を聞くことで、自分が本当に情熱を持てることに時間を使うことこそが、人生を豊かにする鍵であることを再認識させられたのでした。