2030年運行開始予定。日本伝統文化と英デザインが融合した「次期東北新幹線」

サステナビリティやSDGsといったキーワードとともに、環境問題への意識の高まりが加速度を増す昨今。移動手段においてもその波は押し寄せ、鉄道、とりわけ「新幹線」への期待は高まるばかりだ。

そんななか、2030年度の運用開始に向けて開発が進む次世代新幹線のデザインが発表され、大きな話題となっている。

©tangerine limited

東北の自然と日本の伝統を映す
流麗なエクステリア

従来のそれと比べ、さらにシャープさを増した印象を覚えるエクステリア。じつは、日本を代表する企業ではなく、AppleやNikeといったグローバル企業のデザインも手掛ける、英国を拠点とする戦略デザインファーム「tangerine」が担当したらしい。JR東日本によると、新幹線のデザインを海外のデザインファームが担当するのは今回が初。

同社は30年以上にわたり、デザインイノベーション創出を支援してきた実績を持つ。今回のような新幹線車両全体のデザインは初めてだそうだが、これまでにも数多くの日本企業と協業してきた経験を持つ彼らだからこそ表現できる、日本らしさと革新性の融合に期待が高まる。

これまでにない移動体験の提供のため、エクステリアは「東北沿線の自然風景や都市の景観、日本の文化」からインスピレーションを得てデザインされたという。深い緑と翡翠色のラインが織りなす車体は、東北の豊かな自然を表現しているかのようだ。

特筆すべきは、日本文化の象徴的シンボルとして車両側面に描かれた「桜の花弁」をモチーフにした曲線。車両間を滑らかに繋ぐことで、桜が咲き乱れる日本の美しい風景を思い起こさせると同時に、躍動感とスピード感をも表現している。

洗練された空間と快適性
乗客をもてなす、おもてなしのインテリア

インテリアデザインにおいても、tangerineのこだわりは随所に光る。「すべての利用者にとって、洗練された心地よい空間を作り出すこと」を追求したと語るtangerine。柔らかな照明、温かみのある素材、そして日本の伝統工芸の意匠。細部にまでこだわった空間は、乗客に安らぎと高揚感を与えるだろう。

長時間の移動でも快適に過ごせるよう、座席シートは人間工学に基づいて設計されているという点も見逃せない。こうした細やかな配慮の一つひとつが、これまでにない上質な移動体験を創造するキーとなるに違いない。

©tangerine limited
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次世代新幹線が提示する、未来へのレール

「tangerine」Chief Creative OfficerのMatt Roundは、次のように述べている。

「次期東北新幹線のデザインプロジェクトは、鉄道分野における日英の協力関係における画期的なマイルストーンとなりました。ユーザー中心のデザインに日本の心とホスピタリティ、そして革新性を取り入れた次期東北新幹線は、持続可能な交通手段として、これからの高速鉄道による旅の概念を再定義するでしょう」

次世代新幹線は、単なる移動手段を超え、新たな文化や価値観を創造する可能性を秘めている。そして、同時にCO2排出量の少ない鉄道は、まさに次世代モビリティの要。tangerineとJR東日本の挑戦は、環境に配慮しながら快適な移動を実現する、未来への道を切り拓くものとなるだろう。

Top image: © tangerine limited
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