脳内の「エラー」を愛そう/東京はみらいの実験場である

さあ、みらいはどうなる! 

と、本気で語り合う人たちが、世界中から東京ミッドタウンに集結していました。5月末に開催されたFIS(Future Innovators Summit)TOKYOに行った人は、貴重な刺激を受けられたのでは?

オーストリアの文化機関アルスエレクトロニカと博報堂を中心に、世界中からイノベーターを集めてアートを展示し、それらをもとに議論。その内容を公開していました。

これは、東京という都市をみらいを研究するラボと見立て、“新たな問い”を探した社会実験と言われています。そう聞くと小難しいけれど、とにかく話が刺激的。

 

テーマは「エラー」。

 

初日に行われたトークセッションでは、イノベーションに欠かせないアートの定義から役割の話、これからこんな可能性があるんじゃない? ってな事例まで盛りだくさん。登壇者によるお話を一部抜粋して紹介します。うーん。なるほどたしかに。

可能性を限定せずに、
機会をつくらなければいけない。

© 2018 TABI LABO

ゲルフリート・ストッカー(アルスエレクトロニカ)

アートについて話すことはとても良いことです。アートは、常に変わっていくもの、付け加えていくものと考えています。芸術作品でもなく、プロジェクトでもない。アーティストは、自由な空間を使える存在です。社会のすき間を埋めていく。

アーティストは教育者になってはいけません。フレームワークに固めてはいけないのです。可能性を限定せずに、機会をつくらなければいけない。

音楽、会場、そういったところで様々な独自性をつくるのはプロフェッショナル。それまでとは違うものをつくるのがアーティスト。だから、クリエイティビティが必要なのです。私たちはそういう人たちを育てています。

 

© 2018 TABI LABO

北風勝(博報堂)

アーティストとは、思想する人というより実践者ではないかと思うんです。問題を見つけたら、何らかの方法でかたちにする人。“問い”を持ち、答えをいくつも出しながら、その実践をかたちにする。

目や耳が、口が、ハートが大事だと言われているときに、腕が大事だということを具体化できる。見えるから、そのアイデアの良し悪しがわかる。そういうかたちをつくる人。

問いを発するパワーが、答えを発するパワーとイコールバランスにならないと解決できないことがあると思っています。アートとインダストリー、芸術と科学、感性と論理、そういう考えかたもあります。良い問いがあれば、良い答えが出るかもしれません。

答えはいくつもあっていいし、出しにくいものですから、ひとつに絞る必要はなく、みんなでたくさんだす環境づくりが必要なんじゃないかと思っています。

ゲルフリート・ストッカー(アルスエレクトロニカ)

我々の多くはインスピレーションをエラーから得ています。エラーをもっと許容する環境を生み出すべきです。

エラーとミステイクは違います。前者は予期できない。もっと枠の外で考えなければなりません。エラーは人類にとって最愛の友なんです。

 

石綿祐子(アーツカウンシル東京)

東京都歴史文化財団の組織として行政の立場から言えば、この街は保守的です。そこまで進歩的ではないと思っています。東京は国際都市と言われますが、外からみて何をしているのかわからないという声がすごく多い。井の中の蛙なのではないかと感じています。

ただ、2020年オリンピックに向けた文化プログラムを戦略的に展開しようというところで、いまはいいチャンス。いままでできなかったことをやっていこうと思っています。そういった意味で、海外から人々に集まっていただいて、こういう場が生まれたのは大きなことです。

この活動については、4年前から見ていました。大変ユニークでポテンシャルが高いと思っています。ここからアイデアをいただくことで、一歩進む可能性はあると思います。

芸術文化への支援は、未知数に対する、これからどうなるかわからないものに対する支援です。都市の新しい価値として、このアートは普遍的になっていくというようなものをどう見つけていくのか。それを考えるのが、行政の役割だと思っています。

 

北風勝(博報堂)

FISがリンツ市以外で開催されることには大きな意味があるんです。私たちは住んでいるのでここを社会実験の場と感じづらいが、海外から見るとものすごく実験的な、可能性を持った場所と何度も言われました。

話を聞いてみると、観光地としてではなく、空気や雰囲気から、可能性を強く感じるらしいんですね。我々がリンツに行くと、第三者として東京を見れるのですが、帰ると不感症のような状態になってしまう。だから、海外の目で見てもらうことで、東京のみなさんも、実験的な場として考えられるはずです。

© 2018 TABI LABO

山中俊治(東京大学生産技術研究所)

アイデアはエラーなんですよね。脳内で何かが正しくないものとつながっちゃった。それがアイデア。進歩するためにはとても必要。

日本社会や企業、政府はこれを許さない。あると動けなくなる。なるべく潰そうとする。これは、この国の特徴であり、いまの停滞の原因になっている気がするんです。いいエラーを起こしたいですよね。

 

マーク・ダイサム(クライン・ダイサム・アーキテクツ)

建築という仕事上、エラーは高くつくから避けなくちゃいけないけれど、ロンドンでビクトリア時代の建物が家として使われていることも、そういうことなんですよね。本来とは違う目的で利用されている。これは、面白くて良いポイントだと思います。

言葉としてはエボリューションのほうが前向きかもしれません。FISは、周りの人がそれを一緒に経験できるのが素晴らしい。公共の場でエラーを起こす。そこから学ぶ。

東京はパブリックスペースが狭い。地下鉄は面白いですよね。ロンドンなら新聞を開いて読めるし、何を読んでいるのかオープン。だけど、日本はそうではないし、ブックカバーを付けているから何を読んでいるのかわからない。

見られているということはストレスです。本音と建前の考え方もあると思うんですが、プライバシーを侵害されている感じがする。だから、わたしたちは企業のMTGスペースに、廊下で仕事ができるように、のれんで区切ったスペースをつくったんです。パブリックとプライベートの境目をちょっとだけつくることが大切だと思っています。オフグリッドも大事。

 

アストリッド・クライン(クライン・ダイサム・アーキテクツ)

わたしも、通信できない山奥に家をつくっています。だれもオフィスから連絡できないところです。そうすると自由を手にしているという感覚があるんです。一応緊急用の連絡先は用意していますけど(笑)。

 

ゲルフリート・ストッカー(アルスエレクトロニカ)

東京は、商業地と個人の場が曖昧ですよね。商業地も公共の場になっている。公と私の中間。それは個ではなく、自分がゲストとして公共の場に入れる状態。

SNSも同じです。商業スペースのなかにいるわけです。だけど、個でもある。これを搾取されていると見れば怒りを感じるけれど、私のことをわかってくれていると思えれば問題ない。

 

山中俊治(東京大学生産技術研究所)

スマホを見ることで、ネットを通して別のパブリックスペースに接続し直しているんですよね。それが日本の電車です。その重層的な場が、東京という過密都市では明快に展開されている。

パブリックとパーソナルの境界線が崩れ始めているんです。そこには身体的なものやインターナル(内面)も含まれているのですが、インターナルでさえパブリックに繋がり始めている。これもテクノロジーワールドなんだなと。

3Dプリンターはひとつの例で、プロダクトがもっとパーソナルなスペースに入り込んでくる。同じかたちの椅子に座っているけれど、本当にフィットしているのはごく一部。椅子に対して、身体の大小がある。でも、それが全部違う椅子であり得る。そのときにパブリックの概念は変わります。未来のパブリックスペースは、そうなるのではないでしょうか。

思い思いの椅子に座っていてもパブリックが成り立つ。我々は、量産というルールを勝手にしいているんです。大量につくると安くなるから。みらいを見ると、パブリックとパーソナルが違ってくる。

 

© 2018 TABI LABO

アストリッド・クライン(クライン・ダイサム・アーキテクツ)

そうすると、エモーションにつながっていきますよね。もっとアートに近くなります。アートはすごくパーソナルな表現だから、そうなればいいですよね。

写真は、広場の階段に机を置いて、小さなワークスペースにした事例です。かんたんですが、みんなで働けます。エモーションは大事。ただ働くだけってつまらない。今日すごかったよって伝えたくなるような思い出がないと、心細くなるんじゃないかなと思うんです。

 

山中俊治(東京大学生産技術研究所)

アートはパーソナルワークだけど、共感を求めるんですよ。理解されなければ成立しない。パーソナルが共感を得てパブリックになるというのがこれからのプロセス。

だから、プロトタイプは重要です。たんなる実験機ではない。社会に重要性を訴えるメディアでもある。マーケットを刺激し、研究を支援するための予算を生み出すものでもある。テクノロジーと社会を繋ぐ役割もあります。だから、このイベントで、ぜひプロトタイプをつくってほしい。

 

© 2018 TABI LABO

アストリッド・クライン(クライン・ダイサム・アーキテクツ)

ある美術館の外にあるベンチがとっても普通だったんです。多分、予算に合うもをいくつか買ったんだと思うんですよ。それがもったいないなって。

美術館ですよ? アートですよ? なんでもっと、アーティスティックじゃないんですか! って(笑)。

 

ゲルフリート・ストッカー(アルスエレクトロニカ)

産業革命が間違っていたのではないかという印象のある人はいると思います。いま、ワクワクするみらいについて考え直すいい機会だと思います。過去の間違いを改善するきっかけを探したい。

エラーは人類のイノべーティブの最先端。人間がロボットと違うところは、不完全なところだと思います。この35億年の歴史で、自然がどれだけのエラーを起こしてきたのか。じゃあ、この20万年の歴史のなかで人類は? これを考えなければいけません。それがエネルギーになっていきます。

 

マーク・ダイサム(クライン・ダイサム・アーキテクツ)

コワーキングスペースが非常に重要です。だれかが間違っているよと気づかせる何かがある。音があったり、おたがいにやり取りをする、いろんなモバイルが進化しているので、かんたんにいろんなことができるが、研究室はコピースペースではないと。

 

田中和子(博報堂)

エラーを礼賛するわけじゃなくて、それも含めて考えていこうというのがFISです。非常に多様な人たちを集めています。国籍も専門性もバックグラウンドも展示も多様です。何を聞いても認識自体から違う。そのなかで出てくるクリエイティブクエスチョンが価値。

いまもここには、騒音があったり、鳩が来ちゃったり、いろんなことがあります。ラボのなかにいるだけではわからないことがあるから、みなさんとやりたいと思うのは、どうやったら失敗を恐れずにチャレンジできる仕組みや実験場、環境がつくれるのかということです。もしかしたらFISがきっかけになるかもしれません。

 

ゲルフリート・ストッカー(アルスエレクトロニカ)

アルスエレクトロニカは、30年ほど前に、東京よりも小さな街で始まったアートとテクノロジーを結ぶ祭典です。FISは、プロセス自体がフェスティバルそのもの。都市で開催することで、コントロールされた安全な場所で、それが実用的なのかを見ることができます。

ラボという言葉は答えを出す場所ではなく、答えを探しに行く場所だと思っています。東京というエキサイティングな場所で、クリエイティブクエスチョンという結晶をつくりたいですね。


※このイベントはすでに終了しています。詳しくはコチラから。

Top photo: © 2018 TABI LABO
Licensed material used with permission by AETI
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