緑茶の名産地・島田だからこそできた。プラチナ「和紅茶」の秘密
ひとときのコーヒーブームもひと段落した感があり、さて、次は緑茶だ、紅茶だ、なんて話題になるけれど、じゃあ実際「紅茶ってなんだ?」って聞かれたら、僕自身よく分かっていなかったり……。
そこで今回お邪魔したのが、「島田市緑茶化計画」を推進する静岡県の島田市で、純国産の紅茶「和紅茶」を生産する、カネトウ三浦園さん。そこでは紅茶、そしてお茶の生産に対するプライドとこだわりに触れることができました。
趣味みたいなもの!?
最高級の「和紅茶」とは
「日本茶アワード2016」でプラチナ大賞、「日本茶アワード2017」でも紅茶・後発酵茶部門でプラチナ賞を受賞した、カネトウ三浦園の「和紅茶」。
島田市といえば緑茶の名産地ですが、じつは紅茶の賞も島田の茶園が受賞していて、言うなれば、緑茶と紅茶の名産地。
ちなみにカネトウ三浦園は紅茶専門ではなく、むしろ緑茶がメイン。それなのにどうして賞を受賞できたのか。代表の三浦克暢さん曰く「趣味みたいなものだからこそ、こだわり抜くことができた」そうなんですが……。
「紅茶は全体の1%くらいです」
そもそもカネトウ三浦園は、創業140年を超える歴史ある茶園。茶畑の総面積は約670アールで、そのほとんどで緑茶を生産しています。紅茶は、そのなかの数パーセントほどで、売上ベースなら1%ほどだとか。
「受賞茶はすべて手摘みしたものです。だから元葉の大きさをすべて揃えることができて、品質を高く保てるんです。まあ、それも趣味みたいな量しか作っていないからできるんですけどね(笑)」
そう言って三浦さんはガハハと大きく笑いますが、わずか1%のために大事な収穫時期の2日間を使ってお茶刈りと製造をするなんて、趣味で出来ることではないはず。そこには緑茶同様、三浦さんの強いこだわりが見え隠れしています。
さて、そんなカネトウ三浦園の和紅茶ですが、今回は春に採れた「一番茶」と夏に採れた「二番茶」を飲み比べます。
上品な味と香りが楽しめる一番茶に対して、強い日差しをいっぱいに浴びて育った二番茶はキリッとした味わいのなかに渋みがあります。個人的には二番茶が好みでした。三浦さんに聞いてみると、やっぱり女性は一番茶、男性は二番茶を好む傾向があるようです。
これまで「日本の紅茶はウッディで、海外の紅茶はフルーティ」というイメージだったそうですが、カネトウ三浦園の和紅茶は「日本っぽくないね」と言われることもあるというほど、香りが華やか。
ところで紅茶って
どうやって作るの?
緑茶も紅茶ももとは同じツバキ科の「茶」の葉っぱが原材料です。しかし、その加工方法によって、それぞれ異なる「お茶」となるのです。
まず緑茶は葉っぱの状態で「蒸す」→そして「揉む」→最後に「乾かす」という手順。
対して紅茶は、まず「萎凋(いちょう)」という、葉を萎れさせて香気の発揚を促す工程があります。次に「揉捻(じゅうねん)」で葉を揉む。さらに「篩い分け(ふるいわけ)」で塊になった葉をほぐして発酵させ、最後に乾燥。
さて、カネトウ三浦園の
「和紅茶」のこだわりは?
カネトウ三浦園では機械摘み手摘み、どちらも行なっていますが受賞歴がある「和紅茶」は、すべて手摘みのもの。人間の手によってひとつずつ大きさを確認しながら摘むので、葉の大きさを揃えることができます。これによって発酵ムラなどを防ぐそうです。
そして、もうひとつの特徴が、揉捻などをする際、県の施設内にある専用機械を使っているところ。
緑茶の傍らで紅茶を作っている茶園もありますが、緑茶用の機械を活用していることは少なくないそうです。しかし、たとえば揉捻では紅茶と緑茶で目的が変わります。緑茶用の機械では、紅茶に最適な揉捻がとても難しいそうです。
紅茶は
手をかけすぎてはいけない
もちろん、土作りにも余念がありません。やはり良い農作物は良い土から生まれるもの。「ただし……」と三浦さんは付け加えます。
「紅茶の場合、肥料はあまりマメにやるとダメなんです。抑えめにして、少しストレスを与えることで、良い香りや味の紅茶ができるんです。緑茶に比べてちょっとズボラに、ラクするぐらいがちょうどいいんですよ(笑)」
そうは言いつつも、結局お話を最後まで聞くと、化学肥料と有機肥料を使い分けるなど、ズボラなんてことは一切なし。
ちなみに、価格が強気の設定なのも「とはいえ、手間暇がかかってないわけではないので(笑)、この値段でも欲しい、と興味を持っていただけた方に買ってもらえればと」という思いから。そこまで言われると逆に気になってしまうもの。
やっぱり賞を獲るような和紅茶は、ラクして作れるものではないようですね。
「カネトウ 三浦園」
住所:静岡県島田市切山1591-15
TEL:0547-45-2916
公式HP:http://kanetoumiuraen.shop-pro.jp/