このお団子な〜んだ? 栃木・小山の郷土料理、ナマズのアレです

チャンスがないと食べないもの。たぶん「ナマズ」もその類。クセがあるんじゃないかって? みんながモジモジしているうちに、私はお先にいただきましたよ!

 

しかも、栃木県小山市の南部・下生井周辺には、「ナマズの叩き団子」なる郷土料理もあるんです。ナマズを食べるならここ、と地元の方にオススメされた「しんますや」さんに行ってきたので、合わせてご紹介しますね。

ナマズ柄の暖簾をくぐった先で
釣りの話

©2018 Etsu Moriyama

「この辺は、昔から川漁師が何人もいて、川魚を獲って食べてたんですよね。コイとかフナとか。ナマズとかうなぎ、ドジョウとかは、今よりも獲れましたよね」

 

こんな風に筒状の、竹で編んだ道具でね、と言って店主の光野さんが見せてくた資料は、栃木県立博物館の企画展「川のある暮らし」の際に作られた資料。ナマズ料理についての取材協力のお礼にもらったんだそうです。

©2018 Etsu Moriyama

「俺は昔、棒の先に短い仕掛け(ミミズ)をくっつけて、掘った穴にそれを刺して釣ってましたよ」

 

とカメラマンが子どもの頃の釣りの話を始めると、

 

「そう。ウナギなんかはその巣穴にミミズをそろ〜っと垂らすんですよね。我々が子どもの時は置き針と言ってさ、夜のうちに何十本も仕掛けを作って置いてましたよ。竹竿の先に糸をくっつけて、そこにタナゴとか、ミミズとかくっつけて。一晩置くんです。で、朝見に行くと、そこにウナギだとかコイがかかってるんです」

 

と楽しそうに話し出した光野さん。

 

「夏はカエルでナマズを釣る」(光野さん)

 

「カエルの背中に薄く引っ掛けて、泳がせると、ボゥンッ!! って言ってナマズがかかる!」(カメラマン)

 

「そう。それを飛びつきっていうんですよ、この辺は」(光野さん)

 

……とまぁこんな感じで、釣り少年二人は盛り上がっておりましたが、私はそろそろナマズ料理をいただくことにしました。

「今まで食べた白身魚で一番」
って23歳が言いました

©2018 Etsu Moriyama

ちなみにしんますやでは、「ナマズの天ぷら」と「ナマズ叩き団子」の二種類のナマズ料理を食べることができます。まずは、ナマズの天ぷらから。一見普通の白身魚の天ぷらのようでいて、初めてお店に来た時に一緒だった23歳のスタッフに「うまーい! 今まで食べた白身の中で一番うまーい!」と言わしめた代物。

ふわふわ、とだけ言っておきましょうか。

淡白ながら滋味深いというのも付け加えておきましょうか。

臭みですか? 全然ありませんでした。とにかく食べてみたら、ナマズってこんな感じなんだ! ホッホー! と、言ってしまうかもしれない、そんな感じです。

君はこの味の
詳細を知りたいか?

©2018 Etsu Moriyama

そして次はこれ、ナマズの叩き団子です。頭や骨などのいわゆる「アラ」の部分をたたきにして、そこに卵、味噌、ごぼう、豆腐などと混ぜて油で揚げたもの。つまりは天ぷらなどメインで使う部分の残りを、捨てることなく上手に使った料理です。臭みですか? やっぱり全然ありません。

 

「ナマズとかウナギとか、川魚ってぬるぬるしてるでしょう。そこをお塩で綺麗に洗うんです。それから水に晒す。なんの料理でもそうだけど下処理が大事なんじゃないですかねぇ」

 

川魚をおいしく食べるコツを聞きながら、自家栽培のそば粉を使ったおそばもいただきましたよ。

©2018 Etsu Moriyama
そば(単品500円+税、天ぷら盛り合わせ付きで1200円+税)

そばは、喉で食うんだよ。

と、そば好きカメラマンに傍からツウっぽいこと言われましたが、私は初心者なので普通にズルっといただきました。そばにうるさい男曰く、香りがあって、これはうまいそば。つゆも辛口で好み、とのこと。そしてとにかく盛りが良いです。

 

「ごはんも、よかったら食べてみて。小山のふゆみずたんぼ米」

©2018 Etsu Moriyama

と言って、奥様の文子さんが持ってきてくださったこのふゆみずたんぼ米というのは、稲刈りが終わった田んぼに冬から春にかけて水を張り、そこで育てられるお米のこと。農薬や化学肥料に頼らず、微生物や生き物の力を利用する安全な農法で育てられるものだけど、除草剤も何にも使わないので、草が生えてあまり量は獲れないんだそうです。お手製のお新香と一緒にいただきましたが、大変気に入りました。甘みも柔らかさも私好み(取材の後、本当に買って帰った)。

 

「この辺は粘り気のある土でね、お米が美味しく育つんですよ」

 

思川、渡良瀬川など川が多く、その川は今よりも蛇行していたりして、かつては洪水が多い地域だったんだそうです。その一方で肥えた土も運ばれてきて堆積した、その恩恵を受けているというわけ。

ちょっと渋めな
おつまみの話

©2018 Etsu Moriyama

カウンターには、こんなものがありました。

 

「そこに挿してあるのは、フナなんですよ。冬の間で西風が吹いてる頃、二週間くらい干して乾燥させて、昔この辺りでは保存食にして食べていたんですね。これをお酒のつまみにしたり、甘露煮にしたりして」

 

火鉢でちょっと炙ったら、大根おろしとおしょうゆを少し。そんなおつまみを想像したらすごく良くて、思わず「美味しそう」って口にすると、

 

「うん美味しそうだよね」

 

って共鳴したので、きっと光野さんも呑んベぇなんだと思います。

ちなみに、「しんますやに行くならホンモロコという小魚の天ぷらに、ふゆみずたんぼ米から作った日本酒を合わせると最高だよ」という地元民情報もゲットしていたので、もちろんいただきました。先ほど見せてもらった資料の続きを眺めながら、ちびちびと。

©2018 Etsu Moriyama
天ぷら盛り合わせ(700円+税。内容によって少し変わります)。ホンモロコは琵琶湖原産の高級淡水魚。淡白でうま味があり、京都の料亭などでも使われる食材なのだとか。
©2018 Etsu Moriyama

たった1時間後が
夏休みのあとのようで

©2018 Etsu Moriyama

もしお店に行ったら、壁にも注目してみてください。生き物の写真がいっぱい飾ってあります。これは、みんなお客さんが撮った写真。すぐそばに、渡良瀬遊水地というラムサール条約に登録された湿原があって、そこに来る野鳥や植物、風景の写真なんかを撮影して、持ってきてくれるんだって。

ここ数年は、毎年コウノトリ(名前はひかるくん)が来ているとかで、そのコウノトリの写真を撮りたくて毎日のように来ているカメラマンもいるんだそうですよ。写真を眺めていると、いろんな生き物が身近にいる環境が、なんだかすごくうらやましくなりました。

 

「昔は遊水地の中にも小さい沼がいっぱいあって、もっと魚もいっぱいいたんですよ。田んぼの脇には用水路や泥でできた堀があって、そこにナマズなんかが穴掘ってすみかにしたり。今はほとんどコンクリートになっちゃって、生き物も減ったんじゃないかなぁ。でもいろいろ対策をして、昔みたいに戻すって話も出てますよ。生き物のために」

 

遊水地内の沼では年に一度、在来生物を守るために外来魚を駆除するイベントも行われているそうで、獲れた外来魚を料理してくれって持ってくるお客さんも。なんと、ブラックバス(白身魚)なんかは、塩コショウしてバター焼きにすると結構美味しいそうですよ。

©2018 Etsu Moriyama

ちなみにこれ、と言って光野さんが何かを持ってきてくれたのですが、桶の中にいたのは、なんと本日の主役、日本ナマズ(一歳半くらい)。日本ナマズは今珍しいそうで、久々に見たーと感動している、そばにうるさい男。その一方で、私はちょっと心臓ばくばくしてました。だって、光野さんがあまりにも突然、そして無邪気に持って来てくれるもんだから(笑)。

光野さんご夫婦といろいろおしゃべりした帰り道、車の中でなんとなく流れていく景色を眺めていました。そしたらなんだか、小山の親戚の家で1ヶ月くらい夏休みを過ごした後みたいな、ぽやっとした気分に(ちなみに小山に親戚はいないんですけどね)。

釣りとか生き物の話をしたからかな?

美味しいものたくさん食べさせてもらったからかな?

おそばとナマズ料理を食べにきただけのはずなんですけどね。

©2018 Etsu Moriyama

「しんますや」

住所:栃木県小山市大字下生井1226−15 
TEL:0280-55-1085 
営業時間:11:30〜14:00頃
定休日:水曜日

Top image: © 2018 Etsu Moriyama
取材協力:小山市
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