まさか「赤身肉=赤い肉だけ」と思ってる? 栃木・小山の焼肉店でハッとした夜

肉を前にした時、人はどうして興奮を隠しきれないのでしょうか。

どうしてうっかり、「肉ーーー!!」と、叫びがちなのでしょうか。

 

そんな疑問が拭えないまま、栃木県小山市で予約の取れない焼肉店「うしやのせがれ」をご紹介したいと思います。ここはあえて、コーフンを抑えて冷静に、その素晴らしさをお届けする予定。

 

ところでそこのお兄さん。まさかとは思いますが、「赤身肉=赤い肉だけ」と思っていませんよね……?

両手いっぱいの
和牛盛りを召し上がれ

©2018 Etsu Moriyama
和牛盛り合わせ7種(7000円+税)。他に3種(3000円+税)と5種(5000円+税)もあります

この、“うしやのせがれ”というちょっと変わった店名、実は文字通り、店長・神山さんのお父さんが牛農家(うしや)を営んでいて、その息子さん(せがれ)が開いたお店だから。

まずは、“予約をしないと食べられない特別な盛り合わせ”とやらをお願いしたのですが、席に運ばれてきた実物が想像以上に圧巻で。

おやま和牛を中心に、その日美味しいところを揃えた和牛の盛り合わせ7種。写真手前の真ん中から時計回りに、リブしん(リブロースの芯)、タンの薄切り、カイノミ(バラ)、サーロイン(かつ毛和牛)、ミスジ(うで)、ネクタイ(もも)、トロカルビの7種。これ、東京で食べようと思ったら、値段は倍以上するかも。正直、

 

「おおおおおおおおおお」

 

って言いましたよね。食べる前だけど。それどころか焼いてすらいないけど。鼻息が荒くなりました。

引き続き冷静にお伝えしていきたいと思います。

ペロリだったんだ
合計1キロの肉を

©2018 Etsu Moriyama

それにしてもこんなに盛りが良いと、儲けはあるのか不安です。

 

「確かに、そんなにないです(笑)。けど、お肉がたくさん出ることでお客さんには常に新鮮なものを出せるし、美味しいお肉をいっぱい食べてもらえればそれでいいかなって」

 

と神山さん。というかもはや神……(涙目)。しかも盛り合わせの1品はだいたい100グラムずつなので、一皿は700グラムもあるのです。そうとは知らず、この量を取材スタッフ2人でペロリ。量を聞いた途端にさすがに食べ過ぎた〜と思いましたが、一緒にお店を切り盛りする奥様・由佳子さんに、

 

「たくさん食べても脂がいいので、もたれたりしないですよ。いっぱい食べてくださいね!」

 

と言っていただいたので、気合いも新たに引き続き、地元の方々がオススメのものを何品かいただいてみました。まずはハツ。

©2018 Etsu Moriyama
ハツ(500円+税)
©2018 Etsu Moriyama

プリプリとした歯ごたえに、感じざるを得ないその鮮度。そして、コプチャン(小腸)。

©2018 Etsu Moriyama
コプチャン(480円+税)

このコプチャン、よそと何かが違う。あまりホルモンが得意ではない私でも、美味しくいただけたんです。やっぱりここでも感じざるをえない、その鮮度……うおおお!(失礼)

炙るのは3秒だけにしてよね

©2018 Etsu Moriyama

そして、中でも一番好みだったこの“赤身肉3秒炙り”というメニュー。見てください、この「サシ」。私は赤身肉って、赤い肉のことだけだと思ってたけど、この赤身肉はご覧の通りの「サシ」入りです。

どゆこと?

お肉業界的には赤身肉というと、通常「モモ肉」のことを指すんだそうですよ。で、和牛のモモ肉、中でもランクの高いものには、今回のようにスペシャルびゅーてぃほーなサシが入るんだそうです。

 

「でもカルビなどのサシに比べて、赤身のサシはさっぱりしていて食べやすいですよ」

 

とは神山さん。この、“3秒炙り”の加減がまた難しいのだけど、是非とも焼き過ぎに十分注意して、いい感じに召し上がってみてください。さっぱりしているからいっぱい食べられます。ってことで、食べすぎにもご注意ください。

©2018 Etsu Moriyama
赤身肉3秒炙り(940円+税)

せがれのせがれから
せがれのおやじまで

©2018 Etsu Moriyama

そして、お店に行ったらこんなところにも注目です。それは、玄関に飾ってあるちょうちんや、ハシ袋にも描いてあるこの味わい深い牛のイラスト。ちょうどお店をオープンする時に、息子の榮彬(まさあき)くん(当時小学一年生)に描いてもらったとのこと。つまりはこのイラスト、「うしやのせがれの、せがれ作」。Tシャツ売ってたら、たぶん買ったと思います。

 

それからこちらも。

©2018 Etsu Moriyama

背番号29(ニク)のスタッフ・ユニフォーム。なんか、そこはかとなく漂うベースボール臭……。そういえば、お肉をさばく神山さんの頼もしい腕っ節を初めて見た時、この人に野球をやらせたら、めちゃめちゃ打ちそうだなって思ってたんです。で、実際に話を聞いたらやっぱり高校野球をやっていて、しかも四番バッターだったそうで。本当のスラッガーでした。

©2018 Etsu Moriyama
©2018 Etsu Moriyama

そんな神山さん率いるチーム・うしやのせがれ。お客さんのオーダーから調理、提供までの抜群のフォーメーションは強豪校さながらだし、連日小山で焼肉のホームラン打ちまくってるし(うまい肉を提供してくれているという意味)、本当の野球チームなら、きっと春夏連覇まちがいなしだなって思います。

 

でも、ゆくゆくは、実家の牛農家の方も継げたら良いなと思ってます、そんな風にも言う神山さん。小さい頃から父・喜久治さんの背中を見て育ったので、もともといつか自分も肉に関わる仕事がしたいと考えていたそうなのです。まずは東京の精肉店などで修行して、後に地元小山で、自ら選んだ厳選肉をできるだけリーズナブルに提供する焼肉店を開くことになったけど、うしやのおやじは、いつも温かく見守ってくれていたんだとか。

いつかせがれが跡継ぐなんて聞いた日には、うしやのおやじ、喜ぶだろうなぁ。

でもその前に、うしやのせがれにはまだまだ、小山で美味しいお肉のホームランを打ちまくってもらわねば。

かっ飛ばせー、セ・ガ・レ!!

©2018 Etsu Moriyama
©2018 Etsu Moriyama

焼肉 うしやのせがれ
住所:栃木県小山市立木593-2
TEL:0285-35-6627
営業時間:17:00~23:00 (L.O.22:30、最終入店は22:00)
定休日:火曜日

Top image: © 2018 Etsu Moriyama
取材協力:小山市
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。