裏メニューは映画の話? 母の夢から始まった、栃木・小山の人気カフェ
ちょっと一服。
愛煙家ではありませんが、お茶を飲んでひと休みする時は、昔からこの表現が一番しっくりくる気がします。
栃木県小山市の駅前で、この、ちょっと一服をするべく場所を探していて見つけたのが、ここ、Cafe FUJINUMA(以下、カフェ・フジヌマ)です。お店に入ると、おしゃれオーラのお兄さんがカウンターに一人。BGMには、小山のローカルラジオ、“おーラジ”が流れており……。
“カフェ”というかたちの母親孝行
おしゃれ系なのか、なごみ系なのか。
言うならばちょうどその中間といった感じで、絶妙な空気感漂う店内。カウンターの中にいたおしゃれオーラのお兄さんこそが、オーナーの藤沼英介さんです。この熟れた感じはいろいろ知っていそうだな〜と思って、小山でのオススメの過ごし方を聞いてみると、
「思川温泉に入って、隣の映画館で映画を観る、ですかね」
とな。お店を始める前は東京の映画制作会社に勤めていたとかで、カフェはもともと母親の由美さんがやりたかったことだったんだそう。
「お店づくりの準備を手伝っていて、終わったら僕はまた映画の仕事に戻ろうと思っていたんですけど、コーヒーの勉強をしだしたらどっぷりハマっちゃって」
結局そのまま小山に戻って来たんだそうです。マグカップなど、お店のあちこちに使われているオリジナルのデザインは、そんなお店を開く時のエピソードも含んだもの。
「山のデザインになっているのは、地元・小山と日本一の山・富士山をかけています。3本線が重なってるんですが、これはもともと店を父、母、自分の3人でやろうと言っていたから。下にウネウネとなっているのは、藤沼の「沼」の部分を表したもので、ちょっと家紋風に。東京で活動している友達のデザイナーに作ってもらいました」
山のてっぺんから上に線が伸びているのは、小山を盛り上げようという思いと、せっかくやるからには頂上を目指そう、という思いが込められているんですって。
極めたら2号店
「でも、まさか2号店まで出すとは思っていませんでした」
そう、Cafe FUJINUMAは昨年(2017年)の12月、小山市内のショッピングモールであるハーヴェストウォークに、うっかり2号店をオープンしたのです。そちらでオススメのメニュー、一つ目はこのフレンチトースト。
「地元のパン屋さんから届いたパンを、自家製の卵液に漬けてるっす」
と、英介さんが男前にプレゼンしてくれましたが、卵液がたっぷり染み込んだトーストには、カリッとキャラメリゼされたバナナ、バニラアイスと生クリームがトッピングされていて、実に不思議なんですが……このフレンチトースト……お皿からあっという間に消えます。多分二人で食べに行ったら、ちょっとよそ見している間に、パッと消える可能性がありますので、ご注意ください。不思議だな〜。
そして、もう一つの食べてみたかったメニューが、このドライカレーでした。母・由美さんがおうちで作っていたレシピをそのまま受け継いだ、人気のカレーなんだとかで。
「おやま和牛と小山のブランド豚・おとんを、7対3の割合で合挽きにして作ってます。あとは国産のにんじんと玉ねぎ、調味料は色々、味噌やソースや酒や……」
母の愛も……?
「あ、母の愛……ですね。それも入ってますね」
はいそこ大事なとこ〜。それから、酸味のパンチが効いていて、甘めのカレーに合う感じのピクルスも、由美さんのレシピです。野菜は地元の生産者さんの美味しいものを、毎朝仕入れに行っているんだそうですよ。
お店のインテリア、買えちゃうよ
中二階席があったり、実はカウンターの奥にも席があったり、間取りがちょっと個性的で素敵な2号店なのですが、実はお店の手前のあたり(外に面した場所一体)にある椅子や机は、“LIFE FURNITURE (ライフファニチャー)”という栃木市にある家具屋さんのものだそうで、値札のあるものは全て購入することができるのだとか。まだ立ち上がって2年ほどで、卸売しかしていないブランドなんだそうですが、どれも機能性を備えながらも味わい深いデザインです。
「これも、カッコいいんで見てってください」
と英介さんが言っていたのは、2号店に置いているグラインダー(コーヒー豆挽くやつね)。MAZZERというメーカーのZMで、日本販売開始第一号モデル。日本に数台しかないんですよ、と嬉しそうに教えてくれました。
マッツァーのゼットエム、とりあえず、デジタルディスプレイになっているところが、なんか、カッコよかったです(機械に疎くてすみません)。
もちろん豆へのこだわりも
ちなみに、駅前の本店の方でその存在感をあらわにしているのが、このロースター。カフェ・フジヌマでは、生の豆を焙煎して出しているのですが、それは流行りでもあり、お店の個性を出しやすいからなんですって。
「焙煎自体は、焙煎機のメーカーさんが教えてくれるんで、半年くらい勉強させてもらいました。でも焙煎って正解は結局自分で編み出せ、みたいなところがあるんで、あとはひたすら豆仕入れて焼いたのと、毎年一回スペシャリティコーヒー協会の合宿に参加したり」
英介さん曰く、個人でやってる人が全国から集まって、朝から晩までずっとコーヒーについて話すっていう“超楽しい”三日間なんだとか。
「むちゃくちゃ楽しいですよ! 普段一人で突き詰めるしかないから。どうやってあそこのハゼの前の温度調節してますかとか」
焙煎中に、コーヒー豆がポップコーンみたいになる瞬間があって、それをハゼと言うんだそうです。で、それをどう迎えるかによって味が変わるのだとか。
「例えば熱をガンガン加えていくのと、ゆっくり長い時間かけてハゼを迎えるのとでは味が違くて、そのパターンは無限にあるんですよ。その焼き方によって、そのお店の味が決まる。普段、自分の焙煎機でしか判断できないのを色々な焙煎機を使うことによって試せるし、焙煎そのものについて学んだり、議論したりもできるんです。ベテランの方々でも、全然頭硬くならずに新しいこと学ぼうとして合宿に来てたりして、めちゃくちゃ勉強になりますね」
ビバ・学びの姿勢。
話を聞いた後、飲んでいたコーヒーの味に益々深味が加わった気がして、思わずこう叫んだのでした。
「おかわり!」
美味しいクレープと
“フジヌマ映画クラブ”の話
そういえばお店には、“フジヌマ映画クラブ”なるものが存在するのだとかで。本店にあるスクリーンを使って映画鑑賞会をしたり、英介さん自らが撮った動画を流すこともあるそうですよ。
以前は本店の常連さんと、一緒にショートムービーを撮るなんて遊びも。
「それは、小山市内で年一回開かれる、“思川映画祭”っていうイベントががあって、そこに出してました。フリー部門は全国から作品募ってちゃんと審査して上映されるんですけど、僕たちが出している小山部門はちょっと審査ゆるめです(笑)。でも、自分の撮った映画がスクリーンで流れるわけですから、正直すごい夢がありますよね」
それもすごく楽しそう。でも肝心の、お店のPR動画とかは撮ってないんですか? って、聞いてみたんです。この時、特別に作ってもらった美味しいクレープをモグモグしながら……。
「絵コンテ書いてみたけど、1枚目で手が止まっちゃって。映像やってたのに、本気出してこれかよって思われるのは嫌なんで、なかなか進まないんですよね」
まだ、これからなんだそうです。一応、お店の登記簿には書いたそうですよ。“映像制作”も。だからそのうちできるんだと思います。絶対にいいものが。なぜって彼、なんでもこだわって極める性格なんですもん。
最近なんて、うっかりJCRC(ジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップ)という焙煎の大会で、日本で6名しか進めない決勝に進出しちゃいましたから(これ、めちゃくちゃすごいらしいですよ)。
いろいろ期待しちゃうぜカフェ・フジヌマよ。
最近、ちょっとお店をお休みしていた母・由美さんも本店で復帰。月〜水曜日限定で、特製週替わりマザーズランチがいだだけるようになったんだとか。
いろいろ順調だぜカフェ・フジヌマよ。
じゃあ、残るはやっぱり、最高のPR動画が出来上がるのを待つのみ、ですかねぇ〜?
「Cafe FUJINUMA 本店」
住所:栃木県小山市中央町2丁目8-16
TEL:0285-37-8704
営業時間:月火水11:00〜15:00(マザーズランチ)、15:00〜21:00(カフェ)、金土13:00〜24:00(カフェ&バー)
定休日:木曜日、日曜日
「Cafe FUJINUMA ハーヴェストウォーク店」
住所:栃木県小山市喜沢1475
TEL:0285-22-3556
営業時間:10:00〜22:00(L.O.21:00)
定休日:なし
公式SNS:facebook, Instagram(本店、ハーヴェストウォーク店)