瀬戸の焼き物職人を支えたホルモンの名店「金福」

「瀬戸」は、狭戸から来ていて、ざっくり言うと谷地だ。

この谷地の山肌に、戦前まで陶器を焼く「登り窯」と呼ばれるものがいくつもあった。住民のほとんどが窯業に従事していて、好景気を維持していた。なにせ当時の職人たちは月2回の給与日があり、宵越しの金を持つ男などいなかった、なんて話もある。そんな瀬戸では、男衆を支えるための食文化が根付いていた。

精肉より、ホルモン

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「瀬戸蔵ミュージアム」にて

登り窯は、年に数回ほど生産に入る。数千の器が大量の薪で1300度まで熱されて、90時間もの間、最適な火の状態を保つ。「焼き手」は最も責任が重大だったため、手取りも一番多かったそうだ。

瀬戸は古い工業都市であって、陶芸というより窯業。だから、すべてが分業制で、焼き手の他に、絵付師、ろくろ師らが各工程にプライドを持って臨んでいた。ともかく、陶器を焼くことは大変な重労働でチーム作業だったのだ。そんな窯職人たちが求めたのは、精肉ではなくホルモンだった。

今でも、瀬戸市民は焼き肉と言えば、ホルモンを食べるという。かつて瀬戸ではホルモンは「センマイ」と呼ばれていて、網ではなく鉄板で、もやしと一緒に味噌で炒めて食べられていた。焼き肉屋よりも「センマイ屋」が多かったほどだ。部位のセンマイとはまた違う。

窯職人が通った名店
焼肉「金福」

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瀬戸市の旧市街を彩る末広町の入り口に、「金福(きんぷく)」はある。

いま、この旧市街を歩くと、特別な日以外はそのほとんどがシャッターを閉めてしまっている。名画座や寿司屋跡が、過去の栄華をのぞかせる。末広町は、深川神社から続くかつてのメインストリートであって、ここでお金を使うことが粋な職人の姿だったのだ。金福の親父はこう教えてくれた。「違う窯元が同じ日に来ると、金の使い方で張り合ってくれたもんよ」。

炭火ではなく、昔ながらの琺瑯でできたガスコンロで一気に焼いていくと、かみ応えのあるホルモンが楽しめる。もちろん、カルビやタンもうまいけれど、やはり瀬戸ではホルモンをメインに据えるのが礼儀のようだ。

塩ミノ、塩ホルモンを食べながらビールをグビグビ飲む。量を食べたい学生のために作ってしまったサービスメニュー(?)もあるようなので、じっくり通ってみたいとも思う。地元の人にとっては、運動会や花見のときにホルモンをテイクアウトしていったような、家族との思い出に寄り添った名店だ。

観光ガイドに載っているようなタイプの店ではないが、45年もの間育ててきた肉を見る目が、親子二代で大事にされている。そして、今も多くの陶芸作家が通う。

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〆は、マジで辛い韓国スープか、金福特製の醤油ラーメン。韓国スープにはライスを入れるとこれまた美味しい。

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「金福」
住所:愛知県瀬戸市末広町1丁目31
TEL:0561-82-9522

Photo by 稲垣正倫
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