瀬戸のホテルは、地下街のうなぎ屋と居酒屋で選ぶ

愛知県・瀬戸市への取材ということで、Googleマップで宿泊先の「瀬戸パークホテル」を目指してきたけれど、現地に着いてもなんだかわかりづらい。あるのは神社だけ。

専用の駐車場もあるって聞いたのに、これまた見当たらない……と思って神社の参道を歩いてみたら、あったあった。

瀬戸パークホテルは、神社の境内の中にある珍しいホテルなのだ。

瀬戸パークホテルを制する者
瀬戸を制す

©2018 inagaki masanori

瀬戸の街を観光しようと思ったら、行動の起点はここ「瀬戸パークホテル」になる。そもそも街なかには、宿泊できる施設が少ないからだ。

さて、どうディープに楽しもう?

国道を挟んだ向こう側には大きな末広町商店街が延びているのでそちらまで足を伸ばすのも悪くないけれど、徒歩1分の「宮前地下街」も無視できない。地上にあるのになぜか「地下街」という。

宮前地下街に繰り出す前に、まずは瀬戸パークホテルの駐車場内にある深川神社を散策してみた。

敷地内に突然フォトジェニック
ミニ「千本鳥居」

©2018 inagaki masanori

ホテルの駐車場の目の前には、ミニ千本鳥居がある。

この「深川神社」の建立は奈良時代の771年で、瀬戸の焼き物の祖である加藤四郎左衛門景正(通称:藤四郎)をまつる陶彦社やお稲荷様が鎮座する。この参道が、かつて瀬戸ではメインストリートだったのだ。

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ところで、瀬戸に来た理由は大きくふたつある。瀬戸焼を見ることと、うなぎを食べること。

まったく関係ないようで、このふたつは密接につながっている。瀬戸焼の窯で働いていた男たちを支えたパワーフードの筆頭こそが、うなぎだ。

徒歩1分、待ち時間90分の
うなぎ「田代」

©2018 inagaki masanori

瀬戸パークホテルから徒歩1分。宮前地下街まで歩くと、名店「田代」がある。瀬戸のいたるところにうなぎ屋は点在しているけれど、とくにこの田代は行列を覚悟したい。

だから心して、開店すぐの11時半に訪れた。ところがすでに宮前地下街には田代のうなぎを求めて列をなす人、人、人。

店主に聞けば、1時間半後に来てくれと言う。ううむ、すごい……。

反則レベルの香りが
宮前地下街に広がる

©2018 inagaki masanori
「田代」の鰻丼 並2900円(※取材時)

しばし商店街の周りをプラプラして、時間をつぶすこと90分! それにしても宮前地下街にずっと漂っている香り。こんなの反則だ。

活うなぎをその場でリズムよくさばき、串を打ち、炭火にのせる。その間およそ数十秒。関東風の柔らかい焼き方ではなく、カリっとした香ばしい焼き上がり。

地元の人はテイクアウトがメインだそうだ。お店は一応19時まで開けているけど「いや、17時には売り切れてることがほとんどだね」とのこと。

瀬戸・宮前地下街の
「久兵衛」で地元の人と一杯

©2018 inagaki masanori

瀬戸パークホテルに泊まるなら、宮前地下街の「久兵衛」で一杯飲もう。酔いが回ったときにすぐホテルに帰れるだけじゃなく、大将の与太話を聞いていると、今の瀬戸の街の輪郭が見えてくる。

「うまいもんが食いたいなら、別の店へ行け」なんて言いながら、代々受け継がれる瀬戸の窯を巡ってきたことを話すと「あの窯の息子に会ったか。ここにもよく飲みに来るよ」なんて話をしてくれるわけだ。

店内には、今週の瀬戸弁なるものが飾ってある。「だましかっとる」「ぶったれ」。なかなか当たらないし、答えもなかなか教えてくれないけど、ああでもないこうでもないと言いながら、瀬戸の夜は更けていく。結局、2日つづけて飲みに行ってしまった。

©2018 inagaki masanori
いい色をしている黒いおでん。値段は大将の気分次第でちょっと適当

勝手な思い込みかもしれないけれど、久兵衛に飲みに来る地元の人たちは、今も昔のまま生きてるんじゃないだろうかと思ってしまう。瀬戸焼を誇りに思っていて、瀬戸の街に根付いていて。

古く産業の歴史があり、かつて瀬戸の中心地であった宮前だからこそ、そんな風景がぼんやりと見えてくるのだ。

©2018 inagaki masanori
ホテル内の神社から見た、宮前地下街。クルマの列はうなぎ待ち

「瀬戸パークホテル」
住所:愛知県瀬戸市深川町11
TEL:0561-85-3333
公式HP:http://www.setoparkhotel.co.jp/

 

「田代」
住所:愛知県瀬戸市深川町13
TEL:0561-82-3036

 

「久兵衛」
住所:愛知県瀬戸市深川町14
TEL:0561-82-4271

Top image: © 2018 inagaki masanori
取材協力:瀬戸市
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。