お酒をもっと楽しむ30代にしたいから、瀬戸で自分の「ぐい呑み」を作った

多趣味で不器用な祖父が、生前ろくろをまわしていたのを覚えている。

自作のぐい呑みに片口で酒をあおりつつ、親父と鍋を囲んでいた。小学校のときに遠足で無理矢理作らされたコーヒーカップはどこにいったかわからない。でも、あらためて大人になり、自分で作ったぐい呑みで日本酒を味わえたらどうだろう……。器で酒は変わる、と聞く。

えも言われぬ物欲がふつふつと湧いてきた。

愛知・瀬戸の陶芸教室で
美しい器を知る

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©2018 稲垣正倫

愛知県・瀬戸市に窯を構える陶芸作家、「美山陶房」五代目の寺田鉄平氏が開講している陶芸教室では、初歩から高等技術まで教えてもらえる。80歳を超える老人も通うという人気の教室だ。ここでは「せともの」の瀬戸市でも、さらに歴史の深い「赤津焼」を学ぶことができる。

そもそも、陶芸が「巧い」とはどういうことを指すのか。美しい器とは何か。IKEAのキレイで整った無機質な器に慣れ親しんだ僕からすると「この茶碗は100万円です」と言われてもピンとこない。

だけど、いざ土を目の前にして捏ねてみると、すぐに器の持つ意味がわかってくる。なにせ、円を描く器すらうまく作れない。丸いものを作ることがこんなに難しいとは……。

寺田氏が手を添えると、まるで土に命が宿ったかのように、きれいな円になっていく。そこから、きゅっと握ったり、へこませたりすると、味も出てくる。

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©2018 稲垣正倫

まずは、手で粘土をこねて成型していく「手びねり」で、ぐい呑み作りにチャレンジ。

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©2018 稲垣正倫

どうにも丸くならない……。

「形を崩すのは、きれいな形を作ってからです。徐々に、自分の個性を出していく」と、寺田氏。

丸いものが作れない人が最初からひしゃげたものを作ろうとすると、ただの不器用な器になってしまう。祖父が作っていたぐい呑みは、お世辞にも巧いとは言いがたかったのだけれど、今ならその理由がわかる。あれは、元々が丸くなかったのだ。

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©2018 稲垣正倫

寺田氏が作ったものは、丸くて美しい。

手びねりのあとは「ろくろ」にも挑戦したが、思っていた以上に力加減が繊細で、こちらもまたとても難しく、ついニヤついてしまう。

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©2018 稲垣正倫
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©2018 稲垣正倫

心の有様が
作る器に表れる

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©2018 稲垣正倫

寺田氏に手を加えてもらった、自分のぐい呑みを眺めてみると、ようやく愛着が湧いてきた。長らく離れていた、モノを作る愉しみが見えてくる。

「多くの人が、ぐい呑みを作ろうと思うと大きめになってしまうんです。ちょっと欲張ってしまう」と寺田氏。自分が作ったぐい呑みも、大きくはならなかったけれど、なんとなく不格好だった。

でも、不思議と不格好さに嫌らしさは無い。たぶん、色を出そうと思って作っていないからだ。実直に丸く作ろうとした姿勢が出たんだと思う。

出先にも自分の
「ぐい呑み」を

これまで、我が家にぐい呑みはなかった。この日作ったものが、食器棚に並ぶ初めてのぐい呑みになる。こぶりだし、今後集めてみてもいいなと思っていると、寺田氏はこう教えてくれた。

「ぐい呑みは、形によって日本酒の味が変わるんですよ。飲み口がすぼまっていると、冷酒でも鼻先に溜まる香りが楽しめますが、熱燗ではアルコール臭が鼻をつくのでキツく感じます。広がった器のほうが、燗酒の香りの開きを楽しめると思います。簡単に言うとそんなところですけど、もっと細かく好みが出てきます」

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©2018 稲垣正倫

寺田氏は、自分の作ったぐい呑みを出先に持って行くこともあるらしい。旅先で、MYぐい呑みを懐から出せる男に、なりたいものだ。

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©2018 稲垣正倫

美山陶房の五代目、寺田鉄平氏。第13回東京・ニューヨーク姉妹都市交流陶芸コンテスト佳作(ニューヨーク)、個展など多数。

寺田氏の作品は、とても素朴でモダンだった。体験教室の2階にはギャラリーもある。

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©2018 稲垣正倫
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©2018 稲垣正倫
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©2018 稲垣正倫
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©2018 TABI LABO

後日届いた、MYぐい呑みと片口。感無量。

美山陶芸教室

住所:愛知県瀬戸市西窯町121
TEL:0561-82-4077
体験コース:1〜2時間
3,500円(粘土代・お茶碗2個ほどの焼成代含む)
※定額制あり

Top image: © 稲垣正倫
取材協力:瀬戸市
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