難しいけどハマった、瀬戸への旅で体験した「染付」
子供心に、なぜ食器には青い絵が描いてあるのか不思議だった。で、今はなんで青い絵が描かれている食器があんなに高いのか不思議だ。
せっかくなので、愛知県瀬戸市にある「瀬戸染付工芸館」で体験してみたのだけれど、なんと難しいことか……。
そもそも描くんじゃなくて
「染める」
予約なしでOK、小皿なら500円で体験できるということで、挑戦しないわけにはいかない。
染付では、呉須(ごす)と呼ばれる絵の具のようなものを使う。青に変色する正体は、酸化コバルトだ。灰色をしているけど、釉薬をかけ焼くことで、美しい藍青色に発色する。
この体験で提供されるのは「うすい・中・こい」の3種の呉須を水で溶かしたもので、あっという間に沈殿するので、つねにかき混ぜている必要がある。
まずはお手本。鉛筆で下書きした線を頼りに、すらすらーっと描かれていく。簡単そうだ。
絵心があるって素敵だ。エビに躍動感がある!
染付の難しさと
絵心のなさに撃沈
写真を頼りに、我が家の三毛猫「しずく」を描いてみる。
素焼きがしてあるので、呉須がスッと染みこむこともあれば、表面ではじかれたようにたまることもある。このあたりの「呉須の乗りかた」が難しくもあり、楽しくもある。
言い訳のしようもない、絵心のなさ。穴があったらなんとやら。
同行した編集者作。はっはっは。
呉須の濃さがどのくらいの焼き上がりになるのか、描いているときにはわからないのも、これまた難しい。アンパンマンの顔は、うすい呉須で塗り、鼻はこい呉須で描いているはずなんだけど、描いているとわからなくなってくる。
仕上がりをイメージして染付けるなんてことは、はるか彼方のスキルだとよくわかった。
表面でコツをつかむので、裏面のほうがうまくなる説。
体験して初めて分かる
展示品のすごさ
一度でも染付を体験してその難しさがわかると、目が養われるようだ。
エビの小鉢、ヒゲを壁面へデザインしたセンス、透き通ったような身の筆使い、水面を著す薄い呉須。
このレベルを目の当たりにすると、もはや言葉も出ない。
どうして、人は手仕事に魅せられるのだろう。17世紀の欧州では、これら東洋の染付が嗜まれ、富と権力の象徴とされていた。その価値の一端が少しわかったような気がする。
月1回開催の体験教室では、五寸皿など様々なものに染付させてくれる。こういうところでさらっと風流な染付ができると、粋なんだろうな。
後日届いた「初・染付体験」の完成品。思ったよりは悪くない(笑)。
「瀬戸染付工芸館」
住所:愛知県瀬戸市西郷町98
TEL:0561-89-6001
開館時間:10:00〜17:00(体験受付16:00まで)
休館日:火曜日、年末年始
体験開催日:休館日を除く毎日開催(※5名以上の場合は要事前連絡)
公式HP:http://www.seto-cul.jp/sometsuke/