幻の「高砂染」を、100年後の今、よみがえらせる

絶滅危惧種も、文化も方言も、失くなりかけて初めて私たちはあわあわと守り始める。失くなるのは、きっと減点だから。神様みたいな存在がいるとして、その人に出された試験みたいなもの。人間は試験勉強なんかしなくて、本番になって悪あがきをする。優等生とはほど遠いのかもしれない。

だけどそれは、本当にただの悪あがきなんだろうか? 「高砂染」の復刻プロジェクトをきっかけに、少し考えてみた。

「幻」と呼ばれる理由

時は江戸時代、姫路藩。

現在の兵庫県姫路市・高砂市・加古川市にあたるこの地域で「高砂染」という染め物が生まれた。最盛期には幕府・朝廷への献上品として重宝されたのだが、昭和初期には絶えてしまう。さらには戦火に巻き込まれ、現存している絹縮緬着物は1着だけ。まさに「幻の染め物」だ。

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100年の時を経て
オリジナルの復刻を

その「高砂染」が途絶えて約100年。高砂市の企業「エモズティラボ」が、その復刻に乗り出した。

これまでも「高砂染」を研究し、イベントなどを通してその存在を伝えてはきたものの、「オリジナルの高砂染を復刻しないことには、その本質的な価値にはたどり着けない」と、プロジェクトをスタート。できる限り当時の技法で復刻し、1年以内の完成を目指しているという。

失われたものを数えるか
今あるものと向き合うか

で、冒頭の話。ふと、ルートヴィヒの言葉を思い出した。

 「失われたものを数えるな。残っているものを最大限に生かせ」

ルートヴィヒは、戦争で傷ついた兵士たちにスポーツをさせることで、社会復帰を促した神経学者だ。「パラリンピックの父」としても知られている。

私は、自分が失ったものを数えていたと気づいた。そして、残っているものを最大限に生かそうとすることは悪あがきではなく、今与えられたものと向き合い、しっかり「人間」を生き抜くことなんじゃないか、と今は思う。

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残された1枚の着物から100年前の技術を復刻すること。そこには、人間が人間である意味のようなものが、込められている気がする。

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