「根拠なんてないけど、シェフになれると思った」――マティー・マセソン

「もうタトゥーは入れたくない。あとは痛い場所しか残ってないし、もう痛いのはゴメンなんだよ、オレは(笑)」

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足の先から首元までびっしりとタトゥーを入れた強面の大男は、挨拶代わりにそんなジョークを飛ばしてきた――マティー・マセソンは北米を中心に注目を集める“シェフ”だ。と言っても、高級レストランの星付きシェフってわけじゃない。彼が有名になったきっかけでもあるトロントの「PARTS & LABOUR」は庶民的な食堂だったし、出演するYouTubeやTV番組でもただレシピを紹介するようなプログラムはほとんどない。ユーモラスで人懐っこいキャラクターがウケているのだ。

そんなマティーが日本でも人気のカリフォルニア生まれのブランド「RVCA(ルーカ)」が開催するワールドツアーで来日。目的は自慢のチーズバーガーを日本で振る舞うため……というわけで、バーガーにかぶりつきつつ、この型破りでグレイトフル・デッドのTシャツが最高に似合う男にインタビューを決行した。

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──世界的に有名なマティーだけど、残念ながら英語圏ではない日本では知らない人も多いと思うんだ……。

 

あ〜、オッケー。

名前はマティー・マセソン。37歳。

仕事は、恋愛の魅力をみんなに伝えることかな。世界を平和にしたいんだよね。

 

──ん?世界平和???

 

ウソに決まってるじゃん(笑)。ジョークだよ、ジョーク。

多分、シェフで合ってると思うよ。シェフって言っておこうか。クッキング番組に出たり、実際に料理をしたり、他にもいろんなことをやっている。

 

──全身タトゥーでシェフって名乗られると、ちょっと違和感があるよ(笑)。

 

だよね。よくギャングだと間違えられるし(笑)。

もともとはカッコいいと思っていたバンドマンがいて、彼らに憧れてタトゥーを入れ始めたんだ。

手の甲にある蝶々とかいいだろう? あとは、息子と娘の名前のタトゥーも入れていて、それも気に入ってる。

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──うん、かなりクールでワイルドだよね。

 

そう見えるだろ? だけど、俺はもう酒もやめてるんだよ。そりゃ昔はビールにウイスキーにウォッカ、テキーラと、種類も量もたくさん飲んだもんさ。だけど、そんな量を飲み続けていたら死んでしまうって思ったんだ。

まあ、他にもいろんな悪いことをやってきた。

 

──えーっと……。

 

キミが今想像している通りの“悪いこと”だと思うよ(笑)。初めての経験は11学年生だったから、16歳か17歳だね。いや、待って。そんなことはないな……多分13歳か14歳くらいの時の話だな、きっと。

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──そんなワイルドな半生を送ってきたマティーが、どうして料理の世界に?

 

ある日、友だちから電話がかかってきた。「マティー、シェフが必要だから手伝ってくれないか?」ってね。

その時に、根拠なんてなかったけど「あ〜、俺ならできるよ」って答えたんだ。当時はバンドをやっていたヤツらと旅をしていたけど、それをストップして、プロとして料理をやることに決めたんだ。それまでにクッキングスクールに通っていた経験もあるし、しばらくレストランで働いたこともあったから、できると思っちゃったんだな。

だから、シェフになるって夢があったわけじゃなくて、完全に成り行きでシェフになったっていうのが真相だ(笑)。

 

──そんなマティーが考える、プロフェッショナルって?

 

とにかくウマい料理を作ること。

 

──なんてわかりやすいポリシー(笑)。

 

実際、俺は美味しさを追求するだけだよ。一番の食材を使って、なるべくシンプルな調理方法で、最高の料理をつくる。

もちろん、他にもいろんな考え方があるだろうけど、俺はそれがベストだと思っている。

 

──ストレートでいいね!

 

だろう?

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──初来日だけど、日本はどう?

 

とにかく暑いね。暑すぎるよ(笑)。

真面目に答えると、じつは日本を旅行したことのある友だちから「いい場所だよ」とは聞いてたから、ずっと来てみたいとは思っていたんだ。

だから観光もしたい。だけど、場所を全然決めてないんだよ〜。初めてだからしょうがないね。名前とかわからないんだけど、お寺には絶対行くぜ!

 

──あとでオススメの観光スポットを教えますね(笑)。

 

ありがとう。

そう言えば、昨日とんかつを食べたんだけど、めちゃくちゃ美味しかったよ。いや、他にもいくつかレストランに行ったんだけど、疲れていたせいか食べ物の名前は忘れちゃった(笑)。とにかく、とんかつが美味しかったって話。

せっかく日本という国を経験しているわけだから、どこかで俺の料理にいかしたいって思いはあるよ。いつも同じように刺激を受けているから。美術館のアートやレストランの外観、俺はいろんなことを参考にして活動しているんだ。

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──今回はシェフとしての来日じゃなくて、「RVCA」ファミリーとしての来日ですよね。

 

RVCAを立ち上げたパットに出会ったのがきっかけだね。彼から「ハワイで料理をしてくれ」って話があって、そこでRVCAファミリーのサーファーやスケーターと話しているうちに、俺も仲間になりたいと思った。みんなもそうだったみたいだ。「来年も美味しい食べ物を頼むぜ!」って言ってくれたからね。

今回、日本ではチーズバーガーを作ることにしたんだけど、これはハワイでの出会いが影響しているんだ。ハワイのノースショアにはウマいチーズバーガーを食べさせる店がたくさんある。そんなノースショアって場所にリスペクトを示すかたちで、チーズバーガーを選んだわけだ。

 

──今回のイベント食べられるマティーのチーズバーガーは、アメリカやカナダで作ってるのと同じもの?

 

基本的にはね。さっきテストで作ってみたんだけど、ここは普段アパレルショップだろう(※会場はFREAK'S STORE 渋谷店)? 汚したくないから、グリルじゃなくてスチームにすることにしたんだ。この場所を貸してくれている人たちに迷惑をかけたくないからね。

 

──見た目からは想像できない心づかい(笑)。

 

最初に言ったろ? 俺は世界を平和にしたいんだよ!

今はみんなにチーズバーガーを食べてもらって、ハッピーになってほしいという気持ちでいっぱいなのさ。

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去る7月30日、FREAK'S STORE 渋谷店でおこなわれた「RVCA」のイベントは大盛況。型破りな男が作る限定150個のチーズバーガーを求めて、たくさんの人たち(ほとんどが欧米人。やはり海外でのマティー人気はスゴイ!)が列を作っていた。

スタッフによれば、渋谷店がオープンしてから最も長い行列ができたイベントだったそうだ。また、イベントを記念して販売されたTシャツなどのコラボレーショングッズはアッという間にソールドアウト。

マティー・マセソンは、それだけ影響力のあるシェフなのだ。

以後、お見知り置きを。

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