フレンチの気鋭シェフが現代の食生活に「干物」をアップデート

希少部位の食べ比べ、サーフ&ターフ、グラスフェッドビーフ、肉割烹……次から次にスタイルが細分化され、とどまることを知らない肉ブーム。2019年も新たな波がボクらの飽くなき“肉欲”を誘惑するに違いない。

一方、魚はどうか。

急速に魚離れが進んでいる。2000年以降減少の一途。2008年にはついに魚介類の消費は肉類を下回った()。

思えば、自宅で魚料理を食べる機会がどれだけあるだろう。調理するのが面倒、煙やニオイが気になる、骨があるから苦手、理由はさまざま。とかく“手がかかる”の印象が、いつしか食卓から魚料理を遠ざけてしまったのかもしれない。

こうした魚離れの現状にアクションを起こした人物がいる。

※水産庁『水産白書』肉類と魚介類の摂取量が逆転参照。

大胆不敵なアプローチ

フレンチ出身の田村浩二シェフ。フランス版ミシュランガイド『ゴエ・ミヨ』において、期待のシェフ賞を受賞した気鋭の料理人だ。いま、氏が取り組んでいるのは、その技術を活かしながら食の領域の課題解決だ。

魚食の減少に大胆不敵なアプローチでつくりあげたのは、とびきりヘンテコな干物だった。自身も海のそばで育った田村さん。らしい着眼点だ。

現代のライフスタイルに寄りそう新しい干物の在りかたを考え、明治10年から続く真鶴の干物専門店「魚伝」とともにリリースしたのが「アタラシイヒモノ」。キッチンを汚さず、簡単につくれて、脇役ではなくメインデッシュになる干物だ。まったく新しいコンセプトなので、名前もそのまま。

干物といえば、お腹から開いた魚介類を天日や風で水分を蒸発させて乾燥させることで、保存性を高め、同時にうまみを凝縮させた乾物。独特の食感も干すことによって生まれる。

塩汁(塩水)に浸してから干すわけだが、アタラシイヒモノ(金目鯛)は塩汁からしてすでにイノベーティブ。

塩、砂糖、スパイス、さらにニンニクを合わせた調味液で漬け込む。従来の製法では考えられない塩汁こそ、洋風干物の真骨頂。フランス料理で素材の塩漬けに用いる技法“ソミュール液”の応用というわけだ。

アクアパッツァ、パエリア、リゾット
アレンジ自在

塩汁が変われば、調理法も変わる。

フライパンで焼き目をつけ、香味野菜、ハーブ、水を加えて軽く煮込むだけでできあがるのは、あのアクアパッツァ。ほかにも簡単な調理でリゾットやパエリアにも応用がきく。もちろん焼くだけでも酒の肴にもってこいだ。

旅館の朝食という印象はどこへやら。従来の干物のイメージが180度変わる。手軽さも味わいも、本家に引けをとらない。

一尾2,700円(税込)で、3〜4人でも十分楽しめる大ぶりサイズ。伊勢丹新宿店の本館地下1階フレッシュマーケットにて販売中。

まったく新しい干物体験が、クセになる。

Top image: © dot science
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