世界が野菜を欲しがる「山下農園」に認められた次世代のフレンチシェフ

日本、いや東京では、世界各国の料理を楽しめる。でも、やっぱり“料理の王様”って感があるのがフレンチ。

フランスでは世界中のシェフが日々腕を磨き、切磋琢磨しています。そして、美食を誇るこの地で、日本人シェフが腕をふるうフレンチレストランの評価はとても高い。
発表された2019年版のミシュランガイドによると、フランス全土で日本人シェフが獲得している星の数は38個を数えるほどに、ジャパニーズ・フレンチがんばってます。

そんなフレンチの世界をこれから牽引するんじゃないかという注目すべき日本人シェフが、パリにいた……。

パリ8区で料理の腕をふるう日本人

©Japonisme Concours de la Cuisine Francaise 2019

2019年の夏、「Japonisme Concours de la Cuisine Francaise(ジャポニズムフランス料理コンクール)」という、パリで活躍する日本人シェフによる料理コンクール で優勝したのが、高柳好孝(たかやなぎ よしたか)シェフだ。

高柳好孝/「La Scène Thélème」シェフ

2001年 辻調理師専門学校を卒業。
当時ミシュラン1ツ星であった「ジョージアンクラブ東京」に勤めた後、渡仏。「ルグランヴェフール」「ホテルムーリス」「ヤニックアレノパリ」などのミシュラン3ツ星の名店を経て 「レストラン アガペ」では2年間シェフを務める。
2019年3月に「La Scène Thélème」(パリ 8 区)のシェフに就任。

フレンチシェフたちが野菜を渇望する
「山下農園」に選ばれた

実は高柳シェフが今回優勝したのは、フランス中の料理に関わる人が嫉妬するコンクール。
というのも、発起人がパリ郊外の街・シャペにある日本野菜の専門農家「山下農園」経営者、山下朝史さんという点にある。

©Japonisme Concours de la Cuisine Francaise 2019

日本のテレビにも度々紹介されたことのある山下さん。独自の哲学を持ち、星の数に関係なく取引先を決めていて、3ツ星レストランでも断るというほど。店からの注文は一切受けず、どのシェフにどの野菜を持っていくか山下さん自身が決めていて、つまり「好きなときに好きな野菜を好きな値段」で売るスタイル。
それほどに山下さんの野菜はフランスの料理界で重宝される稀有な存在であり、味わいを認められている。

野菜を使う代表格で言えば、“厨房のピカソ”や“皿の上の魔術師”とも言われるフレンチ界の巨匠ピエール・ガニエール。この天才シェフとでさえ、山下さんは野菜の味の生かし方が違うと調理方法にも注文をいれるという。

その他、「Restrant Astrance」のパスカル・バルボや「Restaurant Fleur de pave」のシルヴァン・サンドラといった有名シェフが利用者のリストに並ぶ。フランスだけでなく世界各国のシェフたちが「山下さんの野菜を使って料理をしたい!」と切望。

©Japonisme Concours de la Cuisine Francaise 2019

その山下農園を経営してきた山下朝史さんが、フランスで活躍する日本人シェフに、日本人として誇りを持って、フランス料理界に貢献してほしい!という願いをこめて開催に至ったコンクール。今後、優勝者である高柳シェフの店「Restaurant La Scene Theleme」には、山下農園の野菜を届けていくという。

日本以上に本場フランスのシェフたちからも注目されるのは間違いない高柳シェフ。彼に、さっそく自分の生み出すフレンチやこれからの気構えや今後のことについて伺った。

©Japonisme Concours de la Cuisine Francaise 2019

次の“THE フレンチシェフ”を知る10の質問

ーーコンクール優勝おめでとうございます。山下農園のお野菜を使うようになり変化とかあります?

ありがとうございます!今まで、食材の無駄は出さないようにと心がけていましたが、その意識がより強くなりました。ニンジンの葉などは捨てずに使うようになりましたし、蕪などは剥いた皮の出汁を取るために使うようになったり、全部使いきってます!
山下農園のお野菜をお客様に紹介すると、とても反応がよくて皆さんとても喜ぶんですよね。山下さんは、フランスではかなり有名な方ですから。

©Japonisme Concours de la Cuisine Francaise 2019

ーー今のフレンチに求められているものとは?

地元フランスと海外からのお客様で違ってくると思いますよ。
フランスの方は、元来からのクラシックな料理を知っているわけですよね。うちのようなレストランなど、色々な星付きのレストランを食べ歩かくことも多い様子。そういうお客さまたちは、ちょっと冒険しているような料理が好きだと思います。
逆に、旅行や観光で来る方たちはクラシックなものが好きだったりします。こういっちゃいけないんでしょうけど、客層次第なんですよね(笑)
それにシェフがそれぞれ個性をもって違っていますし。僕はひとつにまとめる必要もないと思うんです。

ーー高柳シェフはどのようにアプローチを?

フランスで働き今年で12年になります。この地に長年お世話になっているのもあり、日本のテイストを取り入れて……というよりかはフランス地産の食材にこだわっています。フランスの食材を90%以上使ってね。
スペインやイタリヤからの美味しい食材もたくさんありますが、もっとよりよいフランスの食材を日々追及するようにしています。

©Japonisme Concours de la Cuisine Francaise 2019

ーーそもそもどうしてパリでシェフを?

流れ……ですかね(笑)僕がフランスに来た当時はスペインや北欧なども流行っていた時期。なので、フランスにいる必要も無いなと思ったこともありましたが、VISAが取得できたということもありここに滞在することを決めたんですよね。
料理にしか興味なかったのもあり、環境や言葉など違えど日本との差を感じたことは無かったんです。修行しにきたといより趣味の延長という感じですかね。うん、趣味です!仕事だと思ったら、とっくに辞めていました(笑)
オーナーシェフとしてやってきたのなら、感覚は違うのでしょうけど。

ーーパリの日本人シェフってやっぱりライバル意識とかある?

ライバル意識があればお互いが伸びると思いますが、プレイヤー同士があれこれ言ってもしょうがないじゃないかと思うんですよね。それぞれが色々考えながら頑張っていますし。お客様視点であればお互い何でも言い合って問題ないと思います。

ーーフレンチレストランの今っぽい楽しみ方ってどんなもの?

まずは空間を楽しんでほしいです!料理だけでは無くて、お客さま・厨房・サービスコンセプトが一体となって楽しめるお店を見つけほしいです。
全体のコンセプトが一致したお店で食事ができる、ということが楽しさになるのではないかと。

ーー理想とするようなお店ってどこかにあったり?

いや、自分で創るしかないです!お店の仲間全員がチームとして、色々なアイデアを生みながら模索していくしかないんですけど。

©Japonisme Concours de la Cuisine Francaise 2019

ーーこれからチャレンジしたいこととかって?

言葉としては使いたくないんですけどビストロノミー(価格と雰囲気は庶民的な"ビストロ”と吟味された食材と技が施されたハイレベルの美食"ガストロノミー"を併せ持つお店)と表現すればわかりやすいかもしれない、よりカジュアルなファストフードには興味があります!
……出資者募集中です(笑)。

ーーちなみに日本に戻ってきたりは?

日本帰国!?帰国はできません。僕の居場所はないと思うので(笑)。
2年に一度ほど帰るけど、夏の休暇は日本が蒸し暑いのもあって家族と地中海に行ったりですしね。

 

ーー日本でもその味を堪能したいけど……残念。ただ、日本で高柳シェフを知った皆さんに何かメッセージをください!

旅をしましょうよ!旅をしないとチャンスは訪れないですから。日本人が活躍する場はたくさんあると思います。失敗したら日本に帰ればいいわけですから。開拓できていないような素敵なポジションってあると思うんです。
自分の目で見て、感じたなら、必然とやるべき事が見つかってくると思います。探した人だけには、見つかるものがたくさんありますよ!

優勝後に、さっそく動き出した

©Japonisme Concours de la Cuisine Francaise 2019

山下農園の野菜に認められたという称号が、あらゆる方面で注目を浴び、その後の活躍にも期待が集まるだろう高柳シェフ。実はコンクールの協賛社などと、スペシャルディナーの企画や特別アイテムの検討など様々な動きがあるという。この結果はあらためてのレポートにて。

この今後についても気になるが、こう早々に活躍されてしまうとすぐに高柳シェフの「La Scène Thélème」が予約のとれない人気店になってしまいそう……。まずは、フランスへの旅行計画を急ぎますか。

高柳シェフの店『La Scène Thélème』

【住所】18 Rue Troyon, 75017 Paris
【電話】+33( 0)1 77 37 60 99
http://www.lascenetheleme.fr/

インタビュー: SHIORI SATO

Top image: © Japonisme Concours de la Cuisine Francaise 2019
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