避妊だけじゃない!ピルの効果とメリットを医師に聞いてみた

「ピル=避妊薬」という認識はもう古い。ピルを“女性の生活を向上する手段”として活用する人が増えてきています。

「ピルを飲む、飲まないの議論はもう10年前に終わっている。飲むのがあたりまえで、飲まないことがリスクなんです。」

と語るのは、『女性のためのピルの本』の著者であり西国分寺レディースクリニック院長・医学博士の佐藤力氏。

今回はそんな佐藤先生に、ピルの新常識とその効果、メリット・デメリットまでピルに関するあらゆる疑問をぶつけました。

佐藤 力(サトウ チカラ)

西国分寺レディースクリニック院長・医学博士
東京医科大学大学院修了。現在は婦人科・産科・美容外科を併設するクリニック「西国分寺レディースクリニック」で女性の健康と美をサポートする。月間1500件を超えるピルを処方しており、ピルの処方数は全国トップクラス。2019年5月には著書『女性のためのピルの本』(幻冬舎)を出版。

日本と世界のピル事情

日本と世界のピル事情
©iStock.com/areeya_ann

日本では「避妊薬」のイメージが強い

──ピル(低容量ピル)の日本での歴史について教えてください。

1999年9月に「低容量ピル(経口避妊薬)」が日本で発売されてから20年以上経ってます。当時「避妊薬」として日本に入ってきた歴史があるので、親世代では、「ピル=コンドームなしで性交渉できる避妊具」というイメージが強く残ってしまっているんですね。だからいまだに「ピルなんて飲んでんの?」なんて批判めいたことを平気でいう人がいるんです。

私の病院では、ピルは避妊薬という紹介はしていません。なんならピルは避妊薬ではない。生理を飛ばしたり、PMS(月経前症候群)や生理痛を軽減したり、肌荒れを改善したりと「女性生活向上薬」といっています。

海外と比較して日本での普及率は低い

──海外と比較して日本のピル発売は遅れているんですか?

ピルが日本で承認・発売されたのはアメリカの40年遅れなんです。バイアグラ(男性の勃起不全治療薬)がたった半年というスピードで承認されたことを思うと、ピルの承認には以上なほど長い時間がかかってます。

──なぜそんなにも時間がかかったのでしょうか?

ピルを承認・発売することで性のモラルが低下するのではないかとか、ピルがコンドームに代わることでエイズ(HIV)や性感染症の蔓延を招くのではないかという懸念があったからですね。

──ピルが日本に上陸して20年以上経つわけですが、今の普及率はどうなんですか?

ピルの利用者は年々増えてきていますよ。とはいうものの、世界の普及率と比べると日本はまだ非常に低いです。韓国や中国といった近隣諸国よりも低いのが現状ですね。

──なぜ日本は普及率が低いのでしょうか?

「ピルを飲むのはなんとなく不安」と思っている人があまりにも多いからです。医学的にはピルを飲む飲まないの議論は10年前に終わっていて、飲むことがあたりまえというのが常識。ピルのデメリットはほぼないですし、現代女性にとって生理はリスクですから、飛ばした方がいいんです。

現代女性にとって「生理はリスク」が新常識!?

現代女性にとって「生理はリスク」が新常識!?
©2020 NEW STANDARD

生理(排卵)によって子宮には大きな負担が!

──先ほどのお話で「生理はリスク」と出てきましたが、どういう意味ですか?

生理って子宮にとって大きな負担なんですよ。しかも現代女性のライフスタイルは、人間の長い歴史で考えると不自然といえます。初潮も早いし、出産する子どもの人数も減って、閉経年齢も上がっている。一生の間に妊娠と出産を何度も繰り返していた昔の人と比べると、妊娠中や授乳期間は排卵や生理が起こらないので、現代女性は約10倍くらい生理(排卵)回数が増えているんですよ。

──10倍も!?それだけ子宮に負担がかかっているということですね。でも薬を使って自然現象をコントロールするのはカラダによくないのでは......?

むしろその逆です。自然が一番怖いんですよ。人間も所詮は動物なので、次の命のために毎月、自分自身が命の犠牲になっているということです。

「生理を飛ばすのはあたりまえ」が世界の常識

──なるほど。かなり衝撃的なお話です......。

先ほども言った通り、世界では生理がリスクというのは常識です。なので、ピルで生理を飛ばすのはあたりまえ。だって飲んだ方が、健康上のリスクが低いですから。(笑)

ピルを飲むことで得られる効果、メリットとは?

ピルを飲むことで得られる効果、メリットとは?
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効果① 生理をずらしたり、飛ばしたりできる

──生理を理由にいろいろあきらめなくていいって素敵!

繰り返しにはなりますが、生理の時期や回数をコントロールすることで、大事な日を避けることができます。人生がかかった試合や受験、旅行、就活、婚活、ハネムーンなどなど生理や生理痛で台無しにしている場合じゃないですよ!

効果②ニキビや肌荒れ、PMSの改善

──ピルを飲むと肌がキレイになる、PMSが治るっていうのは医学的根拠はあるんですか?

はい、ピルの飲むことでホルモンの変動がなくなるので、ニキビや肌荒れ、PMSの改善が期待できます。クリニックによってルールは異なりますが、ピルは高校生から50歳まで服用可能なので、あきらめないで婦人科に相談にきてください!

効果③将来妊娠しやすくなる

──ピルを飲み続けると妊娠しにくくなる、とは聞いたことありますが逆なんですか?

そうなんです。卵子の数は生まれた時から決まっています。毎月したくない妊娠の準備をして、無駄に排卵させて、卵を捨てるのは非常にもったいない。特に生理不順の人は、これ以上刺激して卵を無駄にしないでください。生理不順とは排卵不順のことですから、不妊症になりやすくなる危険性があります。できれば、妊娠したいときまで卵子を温存して、妊娠力を高めて欲しいものです。

効果④ガンの発生を予防できる

──ピルがガン予防になるなんて知りませんでした。

そう、これ勘違いしている人が多いんですけど、ピルはガン予防になります。最新の日本家族計画協会のデータ(※1)によると、ピルの服用によって乳ガン、卵巣ガン、子宮体ガンなどのガンが抑制されることがわかってます。ガンが怖いっていう人、じつは飲んでない方が怖いんですよ!欧米では、ピルを飲んでいない人の方が少ないですよ。

※1 参考文献『Hannaford PC, et al, BMJ335,651,2007』

ピルの副作用・デメリットはある?

ピルの副作用、デメリットについて
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──メリットの多いピルですが、副作用やデメリットも当然ありますよね?

カラダが慣れない飲み始めの頃は、倦怠感、胸の張り、吐き気、頭痛、むくみ、軽い出血といった症状が出る人もいます。こういった症状は通常、ピルの服用開始から1〜2ヶ月でおさまるものです。

──なるほど。ほかにはありますか?

あとは血栓のリスクが高まることですね。これがピルの唯一のデメリットといえるかもしれません。ただリスクが高まるといっても、5人/1万人中(ピルなし)が6.1人/1万人中(ピルあり)に増える程度なので、ごくわずかな増加です。喫煙者が血栓になるリスクは非喫煙者の167倍ですから、それに比べたら微々たるものですね。しかも、ガンのリスクは減るので、総合的にみたらやっぱりピルは飲んだ方がカラダにいいと思います。

──ピルの唯一のデメリットは、血栓のリスクが高まること。でもそれ以上にメリットが大きいということですね。

ピルの気になるあれやこれや

ピルについてのQ&A
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ここからは、ピルに関する疑問を1問1答形式で答えていただきました。

Q. ピルを飲むと太るというのは本当?

ウソです!ほとんどのピルは太りません。正確には、ピルの種類によっては太るものもあるというのが本当ですね。太る可能性があるピルには、アンドロゲンを活性化させる成分が入っています。筋肉がつきやすくなる、元気になるという理由であえてアンドロゲン活性のあるピルを好む人もいますけどね。ピルを飲む目的も、体型も人それぞれなので、医師に相談してみてください。

Q. ピルは何歳から飲んでいいの?

医学的には生理を3回以上経験した女性なら飲んでもいいです。海外では小学生からピルを飲んでいる人も珍しくありませんからね。10代の頃はホルモンバランスが不安定なので、生理不順や無月経、生理痛などが起こりやすい時期ですし、10代や学生さんにこそピルを積極的に利用して欲しいものです。ただ、クリニックによって何歳からピルを処方できるかのルールは異なるので相談してみてください。

Q.飲んではいけない人や飲まない方がいい場合はある?

ピルは女性なら誰でも飲んでいいというものではありません。厚生労働省が日本産科婦人科学会などの協力を得て作成したガイドラインに、ピルを服用してはいけないとされるケースが載っています。クリニックに行く前に知っておきたい人は参考にしてみてください。

まとめ

「ピルはただの避妊薬じゃなくて、女性のための生活向上薬だ」と仰っていた佐藤先生の言葉が印象的でした。日本ではピルに対して、ネガティブな印象を持っている人が少なくありませんが、飲まない方がリスクがあるというのは衝撃的な事実。避妊以外にもさまざまなメリットがあるピル。「なんか不安」という理由で今まで避けてきた人は、怖がらず婦人科に相談してみてくださいね。最近ではオンライン診療も増えているので、活用するといいかもしれません。

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