「医学的に正しいサウナの入り方は?」サウナーの医師に聞いてみた
サウナ、水風呂、休憩(外気浴)で1セット。これを3〜4セット繰り返す——。
サウナの入り方の基本は広く知られているが、各パートに注意点があることはあまり知られていないかもしれない。“正しい入り方”を実践するだけで、サウナで得られる効果はより大きなものになるはずだ。
教えてくれたのは、前回に続き加藤容崇医師。サウナー歴の長い人でも「知らなかった」が絶対見つかる!
※最終更新日時:7月6日 10時00分
慶応義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット特任助教・医師、北斗病院・医師、日本サウナ学会 代表理事。サウナ好きが高じて、“ととのう”をはじめとしたサウナの効能を科学的に解明する取り組みをおこなっている。著書『医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?』が3月6日に発売。
撮影協力:かるまる池袋店
【サウナの入り方のポイント】
・サウナ室の最適温度は80~85℃
「あなたの周りにも100℃オーバーがいいという人がいるはず。でも、そのまま受け取ってはいけません。あくまでもそれはドライサウナの話。ウエットサウナと分けて考える必要があります。
ウエットサウナで考えると、室内温度は80〜85℃が理想的。これ以上だと暑すぎて耐えられないと思いますよ。
まずは脳内のドライ設定を一度捨て去ったほうがいい。検索サイト『サウナイキタイ』も温度表示ではなく、温度と湿度の合算みたいな独自のスケールを作ってくれると嬉しいのですが(笑)」
・サウナ室内では足をできるだけ高い位置に
「人間の活動に関わる自立神経は日々擦り減っているのですが、サウナに入ると回復します。そのときに大切なポイントが、頭と足先の温度をできるだけ近づけること。床に足をつけて普通に座ると20℃近く差が生じ、大きな負担になる。
医学的には温度を一致させるのが理想なので、できれば横になりたいところ。しかし、それは難しいので、空いているときはあぐらをかいたり体操座りをするのがいいでしょう」
・サウナ室に入る時間は10〜12分じゃない
「一般的には10分前後だと思いますが、その日の体調次第のため“時間”で考えないほうがいい。特に女性は高温期、低温期がある人もいるし、男性でもその日の体調によって全然違うんです。無理せず、暑いと思ったら出るほうがいい。
もう少し具体的なことをいうと、『心拍数』を指標にするのがオススメです。私は小走りをしたときの脈拍数を覚えておいて、そこに達したらサウナ室を出るようにしています」
・夜のサウナ室は暗いほうがベター
「夜のサウナは、明るさにも気をつけましょう。
人が眠たくなるのは体内時計によってメラトニンというホルモンが分泌されるため。この働きがおでこに光が当たることでリセットされてしまう。朝だと勘違いして、メラトニンが出なくなるのです。
夜にサウナに入ってしっかり眠りたい人は、おでこに強い光を浴びないほうがいい。もちろん目に当たってもダメなのでテレビもNG。明るい施設は清潔に見えますが、眠りが浅くなるので夜は避けたいところです」
【水風呂の入り方のポイント】
・水風呂の最低温度は16~17℃
「人間の体には10種類以上の複数の温度センサーがあります。それらのセンサーが生命の維持に問題がある場合に反応する最低温度が16〜17℃くらい。それを下回ると“温度”としてセンシングできず、痛み・痛覚になる。すると、交感神経が著しく活性化する。強い刺激は依存症を生みやすいため、依存症を生まないギリギリの温度ラインが16〜17℃というわけです。
サウナにハマり始めると、極端になってくるのもわかります。グルシン(水温が一桁、シングル)の水風呂は、確かに気持ちがいい。
一回くらいなら大丈夫ですが、日常的に入って慣れてしまうと体の要求のベースラインが上がってしまい、普通の水風呂では満足できなくなってしまう。それこそが問題です」
・水風呂がぬるい場合の対処法
「町の銭湯に多いですよね。私も銭湯サウナが大好きなのですが、水風呂がぬるい!そんなときは炭酸水を飲みます。体の末端が冷え、体の冷却効果があります。強炭酸のものだと、かなり冷たく感じられますよ。
銭湯を訪れて炭酸水が売られていると、わかってる!って一気に好きになります。おそらくお酒を割る用途だと思いますが(笑)」
・理想的な水風呂は浮遊浴!?
「サウナ室で足を上げるのと同じ理屈です。サウナ後は足がもっとも温まっていないのに、水風呂は底が一番冷たい。しかも水圧もかかってさらに冷えてしまう。体の上と下がバラバラになってしまうんです。
だから、理想は“浮遊浴”で、体をフラットにしてあげること。『アクア東中野』や『ニューウイング』のように水風呂が広ければ可能です(笑)。水流がないとなお理想的。水流のあるところだけ冷えてしまいますから。
水風呂が小さくて難しい場合は、足を水面から出してしまってもいいと思います」
【休憩(外気浴)のポイント】
・水風呂から休憩までは2分以内がマスト!
「ポイントは水風呂から出て2分以内に横になる(座る)こと。“ととのいタイム”は2分しかありません!
どういうことかというと、休憩中は副交感神経優位になる。それなのに、サウナと水風呂の影響で交感神経のアドレナリンが残っている。普通は切り替わるものだから両者が共存することはサウナ以外ではほぼあり得ない。この変な感覚こそが“ととのう”の正体です。
両者が共存するタイミングまでの猶予が2分しかない。どんどんアドレナリンの機能が弱くなり、ただのリラックス状態になってしまいます。
繰り返しますが、水風呂から上がってからは時間との戦い。動線が命です。“ととのいイス”が埋まっていてもアウトなので、しっかりとタイミングを見計らってください」
【サウナの注意点】
・水分補給
「こまめな水分補給は当然ですが、じつは飲みすぎにも要注意。一気に大量に飲むと水中毒を引き起こすリスクがあります。少量を複数回に分けて補給しましょう」
・高血圧・子ども・妊娠中
「血圧が高すぎる人も注意が必要です。胸が痛くなる、ドキドキするなどすでに症状が出ている人は避けたほうがいい。
子どもは10歳以上なら問題ありません。5〜10歳は体がまだ適応し切れないため、大人と一緒に短時間という条件付きでOK。5歳以下は絶対にダメです。
妊娠中の人は、フィンランドの研究結果では問題なしということにはなっています。しかし、体温を上げすぎると催奇形性のリスクが高まってしまう。念のため入らないほうがいいでしょう」
【withコロナ時代のサウナ 13の注意点】
・入館、退館時を含めて、こまめに手を洗う
・館内では可能な限りマスクを着用する
・荷物は受付に預けず自分で管理。ビニール袋を持参し、着替えや荷物はビニール袋に入れてロッカーに入れ、退館時に使用したビニール袋を捨てる
・手で顔を触わらない。触れる場合は手を石鹸で洗ってから
・対人距離を1メートル以上(2メートルが望ましい)保つ。施設が混んでいたら利用を控える
・会話は必要最低限にしてなるべく控える
・不特定多数が触れる部分への接触も必要最低限。触れた後には手指を消毒、あるいは手洗いすることを心がける
・浴室内など共通接触部分が水洗いできる場合は、水で流してから触れる
・痰切りは控え、咳やくしゃみをする際にはタオル等で口を覆う
・水風呂、浴槽には顔をつけない、潜らない
・トイレは特にウイルスが多いことが報告されているため、接触は最低限、利用は最短時間にし、使用前後に必ず手を石鹸で洗う
・現金での支払いを避け、可能な限り接触を必要としない方法(電子マネー等)で支払う
脳疲労が瞬時に消える!ビジネスのパフォーマンスを最大化する正しいサウナの入り方!
著:加藤 容崇 発行:ダイヤモンド社