世界一のサウナを作る「ヴァルス計画」が始動【vol.2】

自然と文化、サイエンスの三者を融合させた「世界一のサウナ」を作る——。そんな壮大な野望を耳にした前回のインタビュー。

現時点では、前例も何もない。まずは「プレヴァルス」のようなかたちで、地方で実験を重ねながらデータを集積していく考えなのだという。

「そんなの空想にすぎない?」

否。じつは、島根県でこんなにも具体的に話が進んでいる。

©株式会社OneGreen

──プレヴァルス第一号として有力なのが島根県?

 

そうなるかもしれないですね。僕自身も、まさか島根になるとは思っていませんでしたが(笑)。

 

──どういう経緯で?

 

3月2日に「ヴァルス計画」のプレスリリースを出してクルーの募集を始めたところ、なぜか島根の方々がたくさん応募してくださったんです。そこで、Clubhouseで「島根会」を開いてみた。とあるアクティブな方が地元のネットワークを使っていろいろな方を呼んでいて、多くの意見やアイデアをいただけたんです。

 

──地方はネットワークがコンパクト。どんどんつながっていけるメリットがある。

 

◯◯のことならAさんに、××のことならBさんに頼めばいいよ、って(笑)。速攻で打ち合わせの日程調整もしてくれましたし、とにかくスピーディに物事が進んでいくので驚きました。

 

──島根ならではの「自然」や「文化」って?

 

たとえば、島根の石見地方で生産されている「石州瓦」という瓦があります。それをサウナストーンの代わりにしてしまおうかと。

サウナストーンってすごく悩ましいんですね。フィンランドから輸入すると、輸送費だけでとんでもない金額になってしまう。某人気施設では年間100万〜200万円ほどかかっているとか。すごくもったいない。

でも、もしかすると石じゃなくてもいいかもしれない。ちゃんと蓄熱して、ジュージューと音が鳴ればいいかもしれない。そこで、瓦。

 

──石州瓦にはどんな特徴が?

 

一般的な瓦は温度調節をするためにわざと水分を含ませているらしい。内部に水分があると爆発してしまう恐れがあるから、一般の瓦は使えそうにない。

でも、石州瓦は世界一といわれている超高温(1300℃程度)で瓦をガッと焼き締めるから中はカラカラ。実際に島根に行って瓦会社の社長とも話しますが、どうやらロウリュもできそうなんですよ。

 

──島根ならではの瓦をサウナストーンに!いいですね。

 

さらにいいことに、石州瓦を釜で焼く際には、まずメンテナンスとして空焼きをするみたいなんです。要するに、売りものにならない瓦を焼いているから、ゴミがたくさん出る。それを地元ならではの素材としてサウナストーンの代わりに使えるならば、環境の観点から考えてもポジティブですね。

 

──サステイナブルの文脈まで……。

 

そうそう、「鬼師」という鬼瓦を作る職人がいて、彼らは鬼瓦だけじゃなくいろいろな形に成形してくれるそうで。

たとえば、ロウリュをしたら鬼の口から蒸気が出るとか、花びら型の瓦にするとかができるとおもしろい。現状はただの石ばかりなので、デザインを加えればもう一歩進化させられるんじゃないかなと思っています。

©2021 NEW STANDARD

──めちゃくちゃおもしろい。

 

まだまだありますよ。「紙布」という、紙糸を材料として織り上げた布について教えてもらいました。ふわふわでかなり気持ちいいのだそう。

ならば、この紙糸に島根ならではの「石州和紙」を使ってみようと。分厚くて日本一丈夫といわれている和紙。コットンと違って吸収しないからビチャビチャにならない。この特徴はもう……。

 

──サウナマット!

 

そうなんです(笑)。あと、アウフグースにも興味深いアイデアが出ました。

「石見神楽」という伝統芸能があって、石州和紙で作ったお面を被って舞う。本来は扇子を使うみたいですが、それをタオルにして舞いながらアウフグースをすれば、さらに文化的なエッセンスを加えられる。

「石州瓦」も「石州和紙」も「石見神楽」も、島根以外の人にはあまり知られていない。でも、このプレヴァルスのサウナに入れば、島根のいろいろな文化に出会えるわけです。

 

──伝統芸能なので、いろいろと“しがらみ”があるかも。でも、それなら無理にアウフグースとして取り入れなくてもいい。

 

サウナに入ってすごく感受性が上がっていますから、休憩中や食事中に舞ってもらってもいいかも。組み合わせ方はたくさんあります。

 

──奈良県山添村にある「ume, saunaも近しい存在。火入れに村竹を活用したり、ロウリュに名産の大和茶を使用したり。サウナで気持ちいいのはもちろん、その町を知れるというプラスアルファの価値を提供する。そんなサウナがどんどん増えていきそう。

 

あそこは立地条件も含めて、“あえて不自由”をコンセプトにしていますよね。「山添村ってどこだかわからないけれど、とりあえず行ってみるか。で、行ってみたらすごく良いところだった」、そんなストーリーが理想です。

 

──47都道府県それぞれに「知らないけれど良いところ」ってかなりあるでしょうしね。

 

間違いないです。さっきの「紙布」なんてものはほとんど知られていない。職人も途絶えつつあるらしい。

だけど、いらない紙を織って価値の高いものに変換するなんてサステイナブルそのものじゃないですか?間違いなく世に残すべき優れた技術。

じつは埋もれているものって、たくさんあると思うんです。そう考えると地方には豊かな世界が広がっている。それらを一つひとつ、ひたすら分解してサウナに組み込んで発信する。サステイナブルで、職人を救うことにもつながる。ヴァルスをそんな装置にしたいですね。

 

♨︎次回は10日(土)19:00公開予定♨︎

【オンラインサロン『ヴァルス計画』クルー募集要綱】

オープンイノベーション型のサウナ開発を進めるうえで、「株式会社Miteki」の提供するLINEをベースとした「fan.salon」を用いて、オンラインサロンを運営します。

・応募条件:サウナが好きであること。ヴァルス計画に賛同し、ヴァルス計画の実現に協力したい意志があること
・会費:5000円/月(ゴールド会員)、500円/月(一般会員)
・応募方法:まず、LINEで友だち追加をおこなってください

※ゴールド会員はすべての機能が使えます。一般会員は情報の閲覧のみで、イベント参加、人材交流、紹介などの機能が利用できません。ヴァルス計画を覗き見できる体験版とお考えください

加藤 容崇(かとう やすたか)

慶応義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット特任助教・医師、北斗病院・医師、日本サウナ学会 代表理事。サウナ好きが高じて、“ととのう”をはじめとしたサウナの効能を科学的に解明する取り組みをおこなっている。著書『医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?』が好評発売中。

Top image: © 2021 NEW STANDARD

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