「サウナの効果・効能って実際どうなの?」サウナーの医師に聞いてみた

疑問をぶつける相手——それは、帯広・北斗病院に勤務する加藤容崇医師が適任だろう。

週に5日はサウナに足を運んでいるという加藤医師。一方で、日本サウナ学会を立ち上げ、“ととのう”をはじめとするサウナの効果を科学的なアプローチから解明する取り組みもおこなっている。

医師でありサウナー。はっきり言って、これ以上の人物はいない!

3月6日に発売される著書『医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?』の内容に沿う形で、巷であれこれ語られるサウナの効果・効能の真偽をハッキリさせるべく疑問をぶつけた。

加藤 容崇(かとう やすたか)

慶応義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット特任助教・医師、北斗病院・医師、日本サウナ学会 代表理事。サウナ好きが高じて、“ととのう”をはじめとしたサウナの効能を科学的に解明する取り組みをおこなっている。著書『医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?』が3月6日に発売。

撮影協力:かるまる池袋店

Q1.
集中力・発想力が高まる?

「MEGという最先端の医療機器があります。簡単にいえば、超高精度の脳波計。最新鋭の機械なので本来は認知症や薬物乱用など医学的重要度に応じて使用されるものですが、私は真っ先にサウナの効果に応用しました(笑)。MEG研究者は驚いていると思います。

30人のサウナに入る前と入った後の脳波を比較すると、頭頂葉の右側の機能が大きく活発化していた。頭頂葉は“認識”を司るエリア。いろいろな情報を統合して認識します。

アイデアが煮詰まるときは、脳内のひとつの回路の中だけをぐるぐると回っている状態。サウナに入ると一旦回路がシャットダウンしてリブートするので、新しい回路がつながってひらめきが生まれるんです。ある意味、“ゾーン”に入っているとも言えますね。

要するに脳内のノイズが消えるということ。ループに入ってるときって、しょうもない脳内ノイズが勝手に頭に入ってくるじゃないですか?

それにしても、頭頂葉の右側だけというのがおもしろい。左はいわゆる『左脳』的な働きで計算や論理的思考を司り、右はいわゆる『右脳』的で感覚的な機能を司る部分。サウナなんて右も左もないのに……不思議ですよね」

Q2.
肩こり・腰痛も癒える?

「広く誤解されているのですが、サウナに入っているときは基本的に深部の血流は低下します。体を冷やすために血液が皮膚側へ多く流れる。

そのあとに水風呂に入る。これこそが重要。急に皮膚の血管が引き締められて深部の血流が増えるので、硬くなって血流不足となっている肩や腰にも血流が流れて痛みが和らぎます。

あくまでもサウナと水風呂のセットの効果と覚えておいてください」

Q3.
脳の疲れが取れ、睡眠の質が高まる?

「『Science』という超一流の科学雑誌に、睡眠に関する論文が掲載されていました。

ノンレム睡眠時に脳細胞が脳脊髄液によって洗い流され、古い代謝物質が綺麗になり頭がクリアになるという論文です。脳が活動的なレム睡眠とは異なり、脳が一斉にシャットダウンするノンレム睡眠も、じつは非常に重要なものだったというわけです。

私が独自に計測した結果、そのノンレム睡眠の時間が、サウナに入った後は1.5倍から2倍程度長くなることがわかっています。だから、脳疲労が取れてよく眠れる。しかも、睡眠全体のうちの前半にノンレム睡眠が起こるため、睡眠時間の短い現代人でも短時間で回復する。

ただし、1杯程度ならともかく、深酒をすると効果が消えることもわかっていますので注意してください(笑)」

サウナの効果・効能の研究結果
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Q4.
呼吸器系疾患・認知症・うつ病の予防効果も?

「これらに関するフィンランドの研究結果があります。

週に1回しかサウナに入らない人と、4回〜7回入る人とを比較したところ、呼吸器系の疾患にかかるリスクが約40%軽減されたそうです。認知症にいたっては60%以上

それにしても、フィンランドの研究結果なので、サウナに入る回数が週0回という人がいないのがおもしろい。こちらとしては週に一度も入らない人を用意してほしいんですが(笑)。フィンランドにそんな人はいない!というプライドなんでしょうか。

うつ病の予防にも効果的と言えます。電気ショック療法というものがあるのですが、脳に非常に強い刺激を与えるわけです。基本的に認知症や精神疾患の方は脳波の平均周波数が低下しており、刺激に対して反応ができなくなっている状態。だから刺激を与えることが大切で、それにより脳が活性化するんです。

アクティブに活動している高齢の方が認知症になりにくいのは、日常的に脳に刺激を受けているから。サウナや水風呂は入るだけでかなり強い刺激になりますからね。

加えて、Q3でもお話したノンレム睡眠による脳の洗浄とのダブルの効果があると考えています」

Q5.
美肌になる?

「深部体温が38度以上になれば、ヒートショックプロテインという物質が出ます。傷んだ細胞を修復する働きを持つタンパク質です。

深部体温38度ということを考えると、深部が温まりにくいドライサウナ(乾式)は難しいかもしれません。ロウリュをおこなったウエットサウナ(湿式)とでは深部まで温まる効率がまったくと言っていいほど違います。医学的な観点では、美容にはウエットのほうがいいでしょう。

ただし、勘違いしないでください。私はドライとウエットに優劣をつけたいわけではありません!あくまでもどちらが医学的に最適なものなのかということに興味があるだけ。立場としてはニュートラルです。

ウエットのほうが気持ちいい!とかではなく、体が温まりやすくて組織修復が起こりやすいのはウエットだという、ただそれだけのこと。美容なんて関係ない、ドライのほうが気持ちがいいという人は、これまで通りでまったく問題ありませんよ」

Q6.
気になるダイエット効果は……?

「長い目で見れば、ダイエット効果は十分にあると思います。ただし、サウナ直後のカロリー摂取に気をつければ。

サウナに入って休憩すると、甲状腺ホルモンの分泌量が増えて代謝が上がる。このことはすでに論文で発表されています。代謝が上がれば脂肪は燃焼しやすくなります。加えて、サウナ後は睡眠の質も上がるので日中の活動性、エネルギー消費も上がるでしょう。

ただし、サウナ後は代謝が上がる一方、副交感神経が優位になる。ごはんがとにかく美味しく感じるんですよ(笑)。しかも消化・吸収の機能が非常に高まっていて、どんどん自分の肉にしてしまう。

だから、痩せるかどうかは直後の食事次第。サウナに入ってさえいればたくさん食べても痩せるなんて、そんな魔法のような効果はありません。

このトピックについては気になる方も多いと思いますので、こちらの記事でさらに詳しく解説しています!」

 

『医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?』

脳疲労が瞬時に消える!ビジネスのパフォーマンスを最大化する正しいサウナの入り方!

著:加藤 容崇 発行:ダイヤモンド社

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