世界一のサウナを作る「ヴァルス計画」が始動【vol.1】

「『ヴァルス計画』というサウナのプロジェクトを立ち上げました。ぜひ取材してもらえませんか?」

3月のある日、そんなメッセージがLINEに届いた。送り手は加藤容崇医師。サウナーにはもうお馴染みだろう。「日本サウナ学会」の代表理事を務め、“ととのう”をはじめとしたサウナの効能を科学的に解明する取り組みをおこなっている人物だ。

「ぜひ話を聞かせてください」

ふたつ返事で快諾し、迎えた取材当日。まさか「世界一のサウナを作る」という壮大な野望を知ることになるとは……!

©2021 NEW STANDARD

──それにしても「ヴァルス計画」って、かなり謎めいたワード。

 

滅びの呪文かっていう(笑)。

 

──なんか壮大な響き(笑)。単刀直入に聞きますが、どのような計画?

 

一言でいうと、日本に世界一のサウナを作るという“壮大な社会実験”です。

 

──世界一のサウナ!……が、なぜヴァルス?

 

ピーター・ズントーというスイスの有名建築家がいます。彼の最高傑作がスイスのクール地方にある「テルメ・ヴァルス」。豊かな自然の中に調和した幾何学的なフォルムとラグジュアリーな空間デザインが特徴で“世界一の温浴施設”といわれているんです。

 

──そこを目指すという決意表明なわけですね。

 

「テルメ・ヴァルス」は有名建築家による、莫大な費用を投じて作られた施設。でも、僕は“それ以上の価値”があると思っていて。

 

──というと?

 

6万個を超える地元産の石を使っていたり、アルプスの自然とマッチしていたり、地元の職人による伝統的な技術を融合させていたり。有名建築家が手がけているとか、総工費がいくらとか、それだけじゃないんです。社会の一部として溶け込んでいて、その社会の価値を上げる装置として機能している。

 

──著名な建築家を呼んで、何十億円もかけて作ればいいという話ではないと。加藤先生が目指すのもそういった施設?

 

ひたすら地元の価値を高めるものを発信する施設にしたいです。脳科学的にいうと、サウナは感覚の増幅装置。深いリラックス状態と鋭敏な感覚が両立する状態になり、良いものは良い、良くないものは良くないとハッキリと感じるようになる。

だからこそ、地元の良いものをたくさん投入して、良い環境で味わってもらえばいいんじゃないかと。

 

──チームラボのサウナも、まさに感覚の増幅装置的な発想ですね。

 

その通りです。感覚を増幅させた状態でアートを愛でる。ヴァルス計画でいうと、「その土地についてまったく知らなかったけれど、めちゃくちゃ良いところじゃないか!」って気づかせるのが目的であり価値。訪れる人のコンディショニングをサウナでしっかりとおこない、ショールーム的にその土地の良いものを訴求する。

© 株式会社OneGreen

──場所はどこ?

 

大前提として、各都道府県、もしくは各地方ごとに小さなヴァルスを作り、その集大成として真のヴァルスを作るイメージなんです。理想というか空想ですが。

現時点では前例もデータも何もない。だから「プレヴァルス」のような感じで、地方で実験をしながらデータを集積していきたい。

 

──「世界一」というのは、何をもって?

 

ヴァルスには3つの要素があります。その地ならではの恵まれた自然と文化、そしてサイエンス。これらを融合させた世界一のサウナを本気で目指します。

何をもって世界一なのかというと、一つひとつのパーツが最適化されている状態。たとえば、Aという木材の香りが医学的にどんな効果があるのか?では、BやCはどうか?と、僕の専門である医学、データをかけあわせていく。

素材や水、光、音、匂い、空間、建築、デザイン……あらゆるパラメータをデータ化していき、“根拠のある世界一”にしたいんです。

 

──サイエンスは加藤先生だからこその強みですね。でも、一つひとつデータ化していくとなると、多くの仲間を巻き込む必要がありそうです。

 

だからこそ、クルー(仲間)を募集しているんです。建築家やデザイナー、木材専門家、林業家、伝統工芸職人など、各界の専門家の協力なしには実現し得ない。サウナの概念をアップデートし、「世界一のサウナを作る」という共通の目的を持って、仲間と楽しみながら関わる人全員が幸せになる。そんなサウナ作りがしたい。

 

──「自然」と「文化」についても詳しく教えてください。

 

実際に話が進んでいる事例を紹介しましょう。じつはいま、プレヴァルス第一号として有力なのが島根県なんです。

 

──島根ですか……!

 

♨︎次回は8日(木)19:00公開予定♨︎

【オンラインサロン『ヴァルス計画』クルー募集要綱】

オープンイノベーション型のサウナ開発を進めるうえで、「株式会社Miteki」の提供するLINEをベースとした「fan.salon」を用いて、オンラインサロンを運営します。

・応募条件:サウナが好きであること。ヴァルス計画に賛同し、ヴァルス計画の実現に協力したい意志があること
・会費:5000円/月(ゴールド会員)、500円/月(一般会員)
・応募方法:まず、LINEで友だち追加をおこなってください

※ゴールド会員はすべての機能が使えます。一般会員は情報の閲覧のみで、イベント参加、人材交流、紹介などの機能が利用できません。ヴァルス計画を覗き見できる体験版とお考えください

加藤 容崇(かとう やすたか)

慶応義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット特任助教・医師、北斗病院・医師、日本サウナ学会 代表理事。サウナ好きが高じて、“ととのう”をはじめとしたサウナの効能を科学的に解明する取り組みをおこなっている。著書『医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?』が好評発売中。

Top image: © 2021 NEW STANDARD
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。