「歴史的偉人の子孫」を撮り続けた写真シリーズが深い
英国を拠点として活動する写真家Drew Gardner氏は、自身のプロジェクト「The Descendants」を通して歴史上の偉人にそっくりな子孫たちの写真を15年以上撮り続けている。
そのモデルとなっているのは、「モナ・リザ」に描かれたリザ・デル・ジョコンドやナポレオン・ボナパルト、チャールズ・ディケンズなど誰もが知る人物の末裔たち。
撮影にあたっては、衣装や小道具、照明にも徹底してこだわり、偉人らの有名なポートレートを完全に再現。撮られた写真は比較できるように横に並べられ、既に20人以上の作品が完成しているようだ。
しかし、Gardner氏、はじめは「歴史上とても有名な人々の子孫が私たちと同じように通りを歩いているというのはとてもおもしろい」との思いでスタートしたシリーズを、5年前から不快に思うようになったという。
彼は、自分が撮っている写真に登場する人物に白人男性が多いということに気付き、多様性に欠けていることを認識したというのだ。
以降、同シリーズでは有色人種や女性を積極的にモデルとして採用し、より多様性を表現した作品へと昇華している。
とくに、第3代アメリカ合衆国大統領であるトーマス・ジェファーソンとその末裔であるシャノン・ラニア氏が撮影された作品において、ラニア氏は混血となっており、奴隷を所有していたとされるジェファーソンに自分を似せることを拒否。“そっくりな末裔”という目的からは大きく外れているが、より深い意味を持った作品へと進化を遂げたのだ。
Gardner氏は「アメリカの歴史において、白人男性の道を進み、有色人種と女性の役割を軽視することを望まない」と語り、同プロジェクトを追ったドキュメンタリーも撮影されている模様。
そんな同氏の作品はこちらから鑑賞が可能。数世紀を超えて受け継がれた遺伝子には、共通点も多いが、価値観は時代を超えてアップデートする必要があることを教えてくれる。