新しい「循環型サウナ」を建てたい!「The Sauna」支配人の野望【vol.3】

大事なことは、担い手がどれだけ愛を持って、粘り強くやれるか。その粘りが結果的に10年、20年とつながっていく──。

「サウナイキタイ」から「サウナタテタイ」の時代になることを目指したい。そんな話が聞けた前回。今回は、現在、彼の頭の中にあるというテーマ「循環型サウナ」について。

もしかすると、数年後、長野県に再び“スゴいサウナ”が誕生するかもしれない。

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──話を伺っていると、10年後、20年後の未来を見据えて行動されているのが伝わってきます。

 

未来に何が起きるかなんて、誰もわからないじゃないですか。コロナだって、誰も予想できなかったわけですし。水がなくなっちゃうかもしれないし、電気がつかなくなるかもしれない。

 

──The Saunaにとって重要な薪も使えなくなるかもしれない。

 

薪は必要不可欠。でも、木も無限じゃない。戦後の植林政策で植えられた大量のスギの森林が放置されて花粉の問題につながっていますが、使えなくなったからといってそのままではダメ。

やっぱり、森は手入れしなくちゃいけないものだと思います。森林保全の活動をされている方は全国にたくさんいらっしゃるので、将来的には売り上げの一部を寄付するなどして支援ができればいいなあと個人的には思っています。

 

──The Saunaが“サウナ以上の存在”になっていく。

 

仮にそういう寄付の仕組みができた際には、しっかりと活動を世の中にプレゼンする。それを見た人たちが、「あ、イイな。自分たちもやりたいな」となれば、森林を維持するための資金がどんどん溜まっていく。

「気持ちいいサウナ」であることはもちろん重要。でも、プラスアルファで何か違うことも提案できるんじゃないかと。今、「循環型サウナ」が自分の中の重要なテーマなんです。

 

──詳しく教えてください。

 

ヘルシンキに「クルットゥーリ・サウナ」という大好きな施設があります。フィンランド人建築家のトゥオマス・トイヴォネンさんと日本人デザイナーのツボイ・ネネさんのご夫妻が経営されている施設。

要らなくなったペレット(木くず)を熱源にし、屋根にソーラーパネルを設置して電気を賄う。水風呂はバルト海。食事も提供していないし、とにかく無駄なものが一切ない。

エネルギーを自分たちで生み出し、できるだけ無駄にしない。まさに「循環型サウナ」の代名詞的な存在で、めちゃくちゃカッコいいんですよ。

©野田クラクションベベー

──まさにフィンランドらしい先進的な施設。

 

目の前が原っぱで、モダンな外観も含めてカッコいい。3人以上で来ちゃいけないとか、写真撮影もダメとか細かなルールがあって、とにかくこだわりがすごい。

僕が訪れたのは「The Sauna」を作る前だったので、受付にいたトイヴォネンさんに「日本に帰ってサウナをやりたいと思ってるんです」って話しかけて。そのときは「そうか、OK!OK!」みたいな感じでしたけど、実際に作ったら、ネネさんがネットで見つけてくれたみたいで。

 

──それは嬉しいですね。The Saunaも循環型に近いのでは?

 

薪はどうしても買う必要がありますが、電気はほぼ使っていないですし、野尻湖を水風呂としてもイイですもんね。限りなく循環型ではあると思っています。

 

──循環型サウナに関心が強いのは、やはりアウトドアサウナを主戦場にしているから?

 

そうですね。ウチとしては薪がないと営業できないですし。やっぱり、コロナの影響が大きいです。何が起きても不思議じゃないという危機感。

ただし、僕が考えている「循環型サウナ」は、エコフレンドリーというだけではありません。継続的に施設を回していく(循環させる)ための仕組み作りの意味も含んでいます。疲れた体がサウナを通すと元気になり、「また頑張ろう!」と思える。これも気持ちの循環だと思う。

その気持ちの循環の中で使うものもしっかりと循環させて、常にその施設が持続性のある状態にする。いろいろな意味を総合して「循環型サウナ」と僕は呼んでいるんです。

 

──なるほど。

 

じつは、まだ確定ではないのですが、The Saunaのある長野県信濃町に、新たな循環型サウナを作るプロジェクトが動いています。

プロジェクトリーダーの方に「文化的なサウナ、世の中に何かを提案できるサウナを作りたい」と相談されて、それならもともと僕の頭の中にあった循環型サウナがぴったりだと思って。

 

──おお!信濃町に新たなサウナが!?

 

まだ「できたらいいな」という段階ではあるんですけどね(笑)。設計は「クルットゥーリ・サウナ」のトゥオマスさんにお願いしたいと思っています。すでに話はしていて「ぜひ一緒にやりたい」と興味を持ってくださっている状況です。

 

──憧れのサウナを作ったトゥオマスさんと一緒にお仕事ができたら、こんなに嬉しいことはないですね。

 

「クルットゥーリ・サウナ」のあの雰囲気の施設が日本にあるなんて、それだけでもう作品としてカッコいい。しかもサステイナブル。プラスアルファで考えていくと、「水も循環させたほうがいいな」とかいろいろとアイデアはあるんです。じつは図面ももうできていて(笑)。

最初は大箱でやろうと思ったんですが、ちょっと時代に合わなそう。木材の違う個室のサウナを複数作って、それぞれに水風呂とシャワーを設置しようかな……などと考えを巡らせていますよ。

ちなみに、トゥオマスさんは「俺はフィンランドで一番サウナストーブに詳しい!」と仰っている人物。そんな彼が作るサウナを、ぜひ日本で見てみたい。

この信濃町の循環型サウナこそが、今もっとも実現させたいプロジェクトですね。

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