「僕はサンタに恋をした」……。ノルウェー郵便局の短編ラブストーリー

とあるクリスマスイブの真夜中、Harryの家の中で奇妙な物音が。赤い服をまとった音の主は、そそくさと煙突から消えてしまう。

翌年の同じ日。ふたたびやってきたあの人を驚かさないように、今度は物陰からこっそり眺めてみる。

また1年が経つ。今年は、あの人に似せたマスコットを手作りしてみたり、ちょっとおめかしもしてみた。待ちくたびれて居眠りしていると「きみ、いびきかいてるよ」と声がする。「また来年」という言葉とともに差し出されたのは、自分に似たマスコットだった。

またまた1年、またまたまた1年。世界中にプレゼントを配るのに多忙なあの人と会えるのは、1年にたった1回の短い時間。その時間が楽しいものであるほど、会えない時間がつらくなっていく。

「寂しくなるよ」「また来年やってくるよ」その言葉だけを頼りに待ちわびた、ある年のクリスマスイブ。待っているあいだに「クリスマスにほしいのはあなただけです」なんて手紙も書いてみたりした。しかし、プレゼントを届けにきたのは……見知らぬ配達員。

呆然としながら部屋に戻った彼に、サンタはこう語る。

「今年は助っ人を雇ったから、ずっとキミといられるんだ」

会えなかった時間を、距離を埋めるように、夢見ていたお互いの存在を確かめ合うように、ふたりの唇が重なった。

© Posten/YouTube

「2022年、ノルウェーでは、誰もが愛したい人を愛せるようになってから50年が経ちます。
メリークリスマス、そしてハッピーニューイヤー。
差出人:私たちみんな
宛先:私たちみんな」

こんなメッセージで幕を閉じる、まるで1本の映画のようなこちらは、ノルウェーの郵便局「Posten」が、同国で同性愛が非犯罪化されてから来年で50周年を迎えることを記念するために制作したもの。

同社のマーケティング・ディレクターMonica Solberg氏が「LGBTQ NATION」の取材にこう話している。

「多様性に富んだインクルーシブな職場として、この素晴らしいラブストーリーで、好きな人を愛する権利が基本的人権となってから50年が経つことを祝いたいと思います。これで、今年はサンタさんに少し楽をさせてあげられますね。Postenは375年に渡って人々を繋いできましたし、これからも指向や性自認に関係なく、繋ぎつづけます」

郵便局が荷物を届けるように、ライターも言葉を届けていこう。まずは、誰が誰を愛しても自由だという言葉を。そしていつの日か、それが名実ともに当たり前になったというニュースを。

Top image: © iStock.com/franckreporter
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