同性婚と宗教・文化……インド最高裁が表明した「立場」とは
今や総人口世界一位を誇るインドは、必然的に性的マイノリティの人口も多い。
政府によると、インドには少なくとも250万人ものLGBTQ+の人々がいると推定されており、専門家の推計ではさらに多く、1億3,500万人とする研究もある。
そんな同国だが、法律上は同性婚が認められていないのが現状だ。
この状況を打開すべく、インド最高裁判所へ「同性婚の合法化」を訴える請願書が提出。議論が進められていたものの、AP通信の報道によると、裁判所が出した答えは「拒否」だった。
否決の理由として挙げられているのは、まず、同性婚の可否を決めるのは「議会の問題」であるから。
法律を作成する組織は国会であり、裁判所の役割はあくまでも法律的紛争の解決など。日本と同じく、司法は立法そのものには関与できないのだ。
また、少子化対策を含めた生物学的な理由や、“インドの文化にそぐわない”という文化・宗教的な背景もあるようだ。結婚は男女間のものだと考える古来の伝統は根強く、実際にいくつかの宗教団体も反対しているという。
無念の結果に終わった本裁判だが、請願を行った人々は「裁判所の決定にはがっかりしましたが、希望を失うことはありません」と前向きなコメントを発表している。
というのも、否決の代わりに、裁判所は同性カップルの様々な可能性を探るべく、特別委員会の設置を政府に提案したのだ。
この進展を後押しているのは、インドにおける同性愛や性的少数者に対しての認識が、少しずつ変化してきているということ。
2018年には植民地時代から存在していた「同性愛の人々に対して最高で10年間の懲役刑」の刑罰が廃止されたり、最近では有名人がゲイであることを公言したり、ボリウッド(ムンバイの映画産業)もLGBTQ+問題に取り組むなど、認識の拡大に努める人々は増えている。
さらに、「Pew Research Center」が実施した調査では、インドでの「同性愛カップルに対する許容度」が2013年から2019年の間で22ポイント上昇。民衆も含め、ジェンダーに関する意識が拡大していることが窺える。
これが進めば、国が同性婚を受け入れる必要性も大きくなるだろう。
また、リテラシーの普及に伴い、法律上の不認可によって生じる弊害も論じられるようになった。同性カップルは、養子縁組や医療保険、年金、相続など、本来保証されるべき権利が守られていないのだ。
今や国際社会にとって大きな存在であるインド。時代の風潮を捉え、国の文化も汲んだ独自のアプローチが確立されることを願いたい。