古都よりも深く長く、2人の描く未来と馳せる想い。
2017年2月18日、僕はパートナーの男性と結婚式を挙げた。近隣では、台湾、さらに欧州でもいくつかの国々で婚姻制度の平等化が始まり、2018年1月、僕の大好きな二人が、京都から夫夫として認められることとなった。
自分のことのように嬉しくて、そんなお祝いのあった夜。何度も胸がグッとした。
約25年、共に過ごした
ふたりの歴史
僕が彼らと知り合ったのは、12年ほど前に遡る。
Gさんは昔すごくとんがってたんだろうけど不器用でマイルドな人、いわゆる職人さん。
矛の人。パートナーのDくんはバーをこなれた感じで盛り上げる、守りや盾のようで支える人。すごく体が大きい(笑)。
そんな二人はそれぞれファッション業界に身を置いてた時期があり、当時の僕もまたアパレル店員をしていたので話が合ったのだった。
当時、二人は日中にセレクトショップを営み、夜はゲイバーを切り盛りしていた。息の合う二人。それぞれの感情をジャストサイズでぶつけ合って、すごい相性の良いバディを見つけて一緒に仕事をしてるんだなあ、くらいにしか思っていなかった。
実は、二人がマスターとチーママという関係以上に、パートナーと知ったのはここ数年のこと。
京都に来るたびに何度かバーもショップも行くことがあったし、ある時には奈良の大仏や周遊に連れて行ってくれたこともある。
数年前、今度は小料理屋を始めて、そこでも二人はまたずっと一緒だった。
必ずホットスポットの裏手くらいの隠れ家に出店する二人。そういう真っ直ぐではないところが、個人的に好きだ。
小料理屋では、ストレートのアルバイトの子の採用もしたし、僕らのセクシャリティは内緒。このお店がどんどん忙しくなって、昨年にはついに小料理屋さん一本でやることになった。
そして最近、突然二人のイベントが決まり、僕は持っていたバトンを託す人たちを見つけることができた。
古都にて最初に公的に認められた
同性パートナー
昨年末に彼らから「パートナーシップ契約並びに任意後見人契約の手続きをした」と連絡があった。
やはり二人も、また共に過ごすであろう行く末を考えていたのだ。保険関係の手続きに踏み切ろうとしていた時に、その生命保険会社でLGBT向けにもサービス可能としていたそうだが、最後の最後になって役所からの『公的な証明書』が必要になったという。
そこで保険会社の担当者さんが奮闘し、二人も熱が上がったところで、役所もまた譲歩し公正証書を取ることができた。
彼らが保険の手続きで詰まってしまったから、古都の歴史を変えたというシンプルにしてダイナミックなことを成し遂げた二人。
ケンカ早いことをよく知っていたが、ここではその瞬発力が発揮されたのかと思う。
住まいは遠いけれど、近くで景色を見ていた一人として、去年僕らがそうだったように今年は彼らが振り切ってくれて本当に良かった。こういう継続的なニュースは、我々に勇気や活力を注いでくれるものだと信じている。
彼ららしかったパーティー
二人は終始カウンターでゲストに振る舞う料理やお酒を作っていた。
途中からゲイバー時代のスタッフも手伝うものの、二人はやはりカウンターから出ようとしない。おもてなしがずっと好きな二人らしい振る舞い方だった。
なくなってしまったゲイバーの、あの会員制的な雰囲気を作って、みんなで飲んで賑やかにしたかったのかもしれない。
毎日ケンカするという二人でも清々しいほど笑顔だった。軽口で罵り合ってもニコニコが絶えない。
僕らは別のカップルさんと上のフロアで会話とお酒を楽しんでたけど、下のカウンターから聞こえる笑い声にどれだけ嬉しく思えたか。
そんな声がポジティブが伝播して来るだけで本当に幸せな時間だった。
そんな中でふいに「僕らなんて5、6年でケンカばかりで今でもヒヤヒヤすることもある。どうしたら25年も続くの?」と訊いてみた。
「毎日ケンカしているからこそ続くものなのよ。」とDくん。
「もう空気みたいなもん。」とGさん。
二人それぞれの表現らしくて微笑ましくて、とてもシンプルで頷けるものだった。
今までなんども京都に来ているけど、こんなに幸せな気持ちになったことはあるだろうか。
僕らの将来と覚悟
つくづく考えさせられてしまった。
彼らは公私に認められ、僕らもとい僕は公を諦めた。
なるようにかならないと待ち侘びてしまっている僕に、今回のイベントや報告はポジティブに背中を押してくれた。
彼らも僕らも、それぞれパートナーと一緒である前提の未来を思うことは同じだ。
この強い思いが、民間を行政を少しずつ動かし後世を豊かにすると信じる。
25年以上深めた夫夫愛は、古都京都の歴史をひっくり返した。
そして2018年は始まったばかり。西日本だけではなく、日本じゅうのもっと多くの行政と民間を突き動かすことになると思う。
そして様々な人の価値観を良い方向に変えるだろう。
改めて、ふたりの幸せがとても嬉しい。