イーロン・マスクがCEO退任、Twitter社初の「女性CEO」が後任に。ただし、その裏には巨大な闇が
昨年末に話題となった、イーロン・マスクの「Twitter社」CEO進退を問う投票ツイート。
この投票において「退任すべき」との意見が半数を超えたため、マスク恒例の“ツイッターファースト”思考に則り、今月本当に退任となった。
後継に使命されたのはLinda Yaccarinoという女性で、Twitter社初となる女性CEOが誕生したことに。さあ、「女性の社会進出を祝う」ムード……かと思いきや、そろそろ世界も気づき始めている。
巨大企業において女性が重要な立場に任命されるのは、決まって会社が「崖っぷち」の時。
現在Twitter社は、マスクの横暴とも言える大改革により混乱し『ウォール・ストリート・ジャーナル』いわく、収益が40%近く減少したほどの大低迷期。
マスクが辞任し、女性が立てられたこと自体は良いことかもしれないが、Lindaは絶望的な状況と多大なプレッシャーを背負わされたことになる。
そしてこれは、会社からの「うちは(マイノリティにも公平な)先進的な企業です」アピールにも感じられるもの。真であれば、もはや前任の男性によるエゴに等しい。
特に今回のケースにおいては、マスクが不信任投票の際に「もしもこの地位を引き受けるほどのバカがいるなら、私はCEOを辞任する」、と明確に後任CEOについてネガティブな見解を表明しており、彼女はまさにその“バカ”にされてしまったということになる(ただし、マスクは本質的に企業や自己の利益より人類全体への貢献を意識して動いているという見方もあり、一概に後任を貶すための発言ではない可能性もある)。
なお、このような女性CEOの着任パターンはこれまでにも散見されてきた。
2012年に「Yahoo」のCEOを任されたMarissa Mayerは、「Google」や「Facebook」に対して明確な差をつけられたYahooを立て直すべく、Googleから引き抜かれたものの再建は叶わず、「ベライゾン社」への売却交渉の後に退任。
また、2014年に「Reddit」のCEOとなったEllen Paoも、プラットフォームの浄化を押し付けられたが、ユーザーからの大反発を受けわずか1年で退任している。
『WIRED』が専門家に尋ねたところによると、このスパイラルが生じる理由はシンプルで、「このような状況以外では、女性や他のマイノリティの人々が活躍を期待できるポジションに就ける機会が少ない」から。
一見すると女性の社会進出のように思えるCEO就任のニュースは、それ自体が女性の社会進出が浸透していないことの裏打ちなのではないだろうか。
通常の状況では重要な役職を任されることが少ないため、企業が“善のアピール”をして立て直す必要がある(=それほど危機的な状況)に限って責任者の立場を押し付けられる。このパターンで失脚した女性に2度目のチャンスが訪れることは少ないらしく、批判を受けて失脚した後には、再び白人男性に取って代わられることも多いそう。
これが、巨大企業(特にUSテック)における女性の役割であり、専門家が“救世主効果”と呼んでいるものなのか……。
大企業の女性CEO就任は、たとえ困難な状況であってもチャンスと捉えることもできる。が、そこでしくじれば(ほぼ仕組まれたものでも)生涯のキャリアに大きな影をもたらすリスクが潜んでいる―――。
かなり凄惨な話だが、米国(および世界)の実態として危惧されているのが現状だ。
もちろんすべての女性CEOがこうなっているわけではないし、女性やマイノリティの人々の躍進は喜ばれるべきこと。
ただ、家父長的な巨大企業、ことTwitter社のような巨大テックが見せる"外面”には、少なくとも注意はしておく必要があるかもしれない。