「完全自動運転は実現する」 イーロン・マスクが語る夢と現実のギャップ
“スマホの次”を予感させる技術として、世界中から注目を集める「自動運転」。 なかでも、電気自動車メーカー「テスラ」CEOイーロン・マスクが描く未来は、私たちの想像を遥かに超えるもの。 彼は、人が運転する時代は終わり、自動運転車が社会を大きく変革すると予言する。
今月、マスクは「ロボタクシー」と名付けた完全自動運転車の発表イベントを開催した。果たして、これはモビリティ革命の幕開けとなるのだろうか。それとも、描く未来は「絵に描いた餅」に終わってしまう?
繰り返される
「完全自動運転」の約束と現実
マスクの自動運転に関する発言は、常に注目を集めてきた。
2016年、彼は「テスラ車は国の反対側からでも呼び出せるようになる」「工場で生産されるすべてのテスラ車は、人間よりもはるかに安全なレベルで完全自動運転を実現するためのハードウェアを搭載する」と高らかに宣言。以来、幾度となく公の場で自動運転の実現に向け繰り返し発言してきたことは記憶に新しい。
ところが……これらの約束はまだ実現には至っていない。米メディア「The Verge」の記事は、テスラ車が「現時点で完全自動運転を実現できていない」ことを明確に指摘している。
10億マイルのデータと44の死亡事故
「安全神話」の光と影
自動運転技術の開発には、膨大な走行データが不可欠だ。その点、テスラは世界中に約500万台の販売台数を誇り、10億マイルを超える走行データを収集しているという強みを持つ。
しかし、その裏には「安全神話」への疑問もつきまとう。同記事によると、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、テスラ車の事故を1000件以上調査しており、そのうち少なくとも44件で死亡事故が発生しているという。
テスラは自動運転の安全性をアピールするいっぽうで、事故発生時の責任問題やデータ収集の透明性など、解決すべき課題も多い。
「移動革命」の先にある未来
マスクの掲げる「自動運転社会」は、移動手段の概念を覆す可能性を秘めている。渋滞の解消、交通事故の減少、移動時間の有効活用など、そのメリットは計り知れない。
しかし、自動運転技術がもたらす未来は、バラ色ばかりではないはず。雇用問題、倫理的な問題、サイバーセキュリティリスクなど、解決すべき課題は山積みだということも理解しておく必要がありそうだ。自動運転技術の光と影、そしてその倫理について議論が深まることを願いたい。
👀GenZ's Eye👀
映画『アイアンマン』の主人公トニー・スタークのモデルがイーロン・マスクなのは有名な話。最近のマスクは大型ロケットを再利用可能にしたり、人間に近い動きができるヒューマノイドロボット、そしてロボタクシーを発表するなど、イノベーターとしての地位を確立している。しかし、そんな革新的な技術が私たちの生活を支える日はいつ来るのか。テスラ車も少なからず街なかで見かけるが、カテゴリーは高級車である。本気で未来について考えていくのであれば、低価格で安全な完全自動運転EV車の普及に力を注いで行くべきではないだろうか。