今や「食の都」!?ドバイで驚いたサステナブルなレストラン
10年以上前の話だが、旅行会社に入社してしばらく経った頃、自社で催行していたドバイのキャンペーンツアーが人気を博した。ぼくはドバイへ行った経験がなかったが、一時期その営業担当として、問い合わせいただいたお客様にこの都市の魅力を伝えていた。
その際によく話していたのが、「ドバイにはたくさんの『世界一』があります」という売り文句だった。高さ828メートルの世界一高い建造物「ブルジュ・ハリファ」、世界最大級のショッピングモール「ドバイ・モール」、世界最大の噴水「ドバイ・ファウンテン」、そして世界一長い全自動無人運転鉄道システム「ドバイ・メトロ」などをご紹介していた。
一方で、アラビア風情を残すスーク(市場)や、車で1時間ほどで行ける砂漠など、古き良き中東らしさを感じられる場所もしっかりと存在し、強く興味をそそられる都市だった。
近年では、新たなシンボルである巨大な額縁「ドバイ・フレーム」や、近未来的な外観が特徴の「未来博物館」なども誕生していて、その勢いはとどまるところを知らない。
しかし、「ドバイの食」に関しては、まるでわかっていなかった。
知っていたのは、自給率100%を誇るデーツ(乾燥させたナツメヤシの実)が有名なことくらいである。「ドバイへ旅行したら、きっとアラブ料理ばかり食べるんだろうな」という思い込みや、「口に合うのかな」という不安さえあった。
だけど今回初めてドバイを訪れてみて、もっともイメージを覆されたのが「食」だった。サステイナブルへの先進的な取り組みのほか、ドバイで経験した食のレベルの高さと豊かさをご紹介したい。
ドバイ・サステイナブルレストランの最前線
最初に訪れたレストラン「BOCA(ボカ)」は、ミシュランガイドのグリーンスターを獲得しているお店。グリーンスターは、サステイナブルに関する優れた取り組みをするレストランに与えられるもので、ドバイにはまだ3店舗しか存在していない(2023年現在)。
また、ドバイで初めてミシュランガイドが創刊されたのも、2022年と新しい。人口360万人のうち、8〜9割が外国人という特性もあり、これまでもアラブ料理に限らず多種多様な国の料理を味わえる都市だったが、ミシュランガイドの創刊によりこの国の美食シーンは一段と盛り上がりを見せているようだ。ドバイには、今や世界中からトップクラスのシェフが集結している。
BOCAで提供しているのは、スペイン料理。アラビア湾とインド湾で獲れた新鮮なシーフードや水耕栽培された野菜をはじめ、なるべく地産地消にこだわっている。鮮やかな美食をいくつも味わったが、やはり驚いたのはサステナビリティへの本気度だ。
厨房を少し見せてもらったのだが、ゴミを6種類に分別していた。その中でも特に重要なのが、「使用済み食用油」だという。
「私たちはこの使用済み食用油をドバイの地元企業に送り、バイオディーゼルに変えてもらっています」とオーナーのオマール・シハブさんは語る。
またUAEのスタートアップ企業とも協力し、生ゴミを大量に回収して新たな表土の堆肥にするための準備をしているようだ。UAEの耕作可能な土地は、国土の約5%ほどだという。「その5%を少しでも増やしていくことが、私たちにできる小さな貢献です」。
レストランを100%再生可能エネルギーで運営し、二酸化炭素排出量のレポートまで毎年独自に出している。そこでは、単にレストランからの排出量だけでなく、従業員一人ひとりの出勤方法や移動距離による二酸化炭素排出量まで計算に含まれているという。
もう一軒、グリーンスターを獲得している「Teible(テイブル)」を訪れた。
このシックで落ち着いたレストランでも地産地消を徹底していて、地元農家や小規模農家と連携することで、食材の95%をUAEから調達しているという。
さらに、アブダビのパームツリーの廃材をトイレの壁に使っていたり、植木鉢や棚がプラスチックを再利用したものだったりと、内装にも一貫した価値観が表れていた。店の外にハーブが植えられていて、料理に使っている。
素材の味を生かした、シンプルで美しい、そして意外性のある料理を楽しめた。
中東・北アフリカでトップに輝くレストラン
「Orfali Bros Bistro(オーファリ・ブラザーズ・ビストロ)」は、2023年度の「世界のベストレストラン50」で46位にランクインしたほか、「中東・北アフリカのベストレストラン50」では、なんと2023年度1位に輝いた。
「今ではこの店を目的にドバイへ来てくれるお客さんもいる」とオーナーシェフのモハメド・オーファリさんは笑顔を見せる。洋菓子職人でもある彼の二人の兄弟とともにレストランを経営している。
この三兄弟はシリア出身だが、供されるはシリア料理ではない。中東料理をベースにしながらも、様々な国の料理からインスピレーションを受けて、独創的でモダンな料理に仕上げている。
賞賛されるのも納得で、出てくる料理がすべて素晴らしい。発酵させた生地にたっぷりのブッラータチーズを載せて焼き上げたピザは衝撃の食感とおいしさだった。
間近でシェフが調理する最旬ダイニングホール
2023年夏、高級ホテルやアートギャラリー、そして話題のグルメスポットが軒を連ねる人気エリア「ドバイ国際金融センター(DIFC)」内にオープンしたのが、「The Guild(ザ・ギルド)」である。ゴージャスでありながらリラックスできる雰囲気を含め、東京では味わえないようなレストランだった。
店内は5つのスペースに分かれていて、ダイニングホールの「ザ・サロン」では、テーブルと厨房の間に一切仕切りがなく、目の前で調理する様子が楽しめる。ここまでオープンなレストランは経験がない。
エグゼクティブシェフのポール・ガヤフスキーさんは、少し前までパークハイアット東京の「ニューヨーク グリル」で5年間チーフシェフを務めていた人物。オーストラリア産和牛(WAGYU)のステーキをはじめ、数々の美食を満喫した。
今や世界でもっとも食のレベルが高い都市のひとつになっているドバイ。そのクオリティをぜひ現地で体感してみてほしい。
取材協力:ドバイ経済観光庁
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