令和のギャルはBad Bitchだ。平成とは違う「2つの要素」に注目

「ギャル、超かわいい〜✌️」と聞けば、TikTokに大量発生するダンス動画が思い出され、反射的に“ギャルピース”のポーズを想像する人も少なくないはず。

では、俗にいう「ギャル」とは、今の時代いったい誰のことを指すのか?それを知っている人はどれくらいいるのだろう。そこで、筆者の完全な独断と偏見ではあるが、「令和のギャル」を定義していこうと思う。

コンテンツと化した「平成ギャル」
マインドが必須の「令和ギャル」

©株式会社N.D.Promotion

昨今、JKのあいだでルーズソックスが流行ったり、TikTokでパラパラダンスが人気だったりと「平成ギャル」がリバイバルしていることはご存知の通り。

少し古い調査結果ではあるが『2022年上半期Z世代が選ぶトレンドランキング』において、「平成ギャル」は「流行ったコト・モノ」の2位に選ばれ、続く3位も「ルーズソックス」がランクイン。また、「ギャル」というワード自体も「流行った言葉」ランキングで2位ということからも、ギャル文化の復活がうかがえる。

いっぽうで、ルーズソックスやギャルピースなど、見た目にもわかりやすいものがバズりトレンド化するものの、そのほとんどを“コスプレ”と表現しても間違いではない。なぜなら、令和のギャルの必須要素はそのマインドにあるからだ。

令和における「ギャル」の新常識

平成ギャルの“復活劇”を通して筆者はあることに気がついた。令和のギャルには、2つの新しい基準が存在している。

以下、ギャル文化の変遷を平成ギャルのスタンダード→令和ギャルのスタンダードに分類し定義してみたい。

①己を貫くマインドセット
(派手な外見→強い内面)

平成の時代のおけるギャルは、一般的に派手な外見をもってギャルの「属性」が語られてきた。いわゆる、白ギャル、黒ギャル、ヤマンバといったように。

ところが、令和のギャルを同じように外見で判断できるかと言えば、さにあらず。なぜなら、ここ数年のあいだに「マインドギャル」なるものが台頭してきているから。

Z世代を研究するプランニングチーム「Zs」に所属する大学生らの生の声を『Business Insider Japan』が紹介している。いわく、Zs定例リサーチによると、マインドギャルには4つの要素があるらしい。

①その場のノリを楽しめる前向きな姿勢
②人に振り回されずに自分の意思を貫く
③違うことはハッキリと否定する
④嫌なことがあってもクヨクヨしない

上記の特徴は「自分を貫けるマインドセット」と一言にまとめられるだろう。では、なぜ見た目ではなく、内面に焦点が当てられているのか。それは“SNS疲れ”によるところが大きいのではないかと筆者は推測する。

SNS時代においては常に他人のジャッジの目に晒され、自分を魅せる生き方が当たり前。加速度的なスパンで更新されていく流行に必死で追いつこうとする……そんなSNSとのつき合いかたに、みんな疲れてしまっているのではないか。そんな世の中において、自分の軸を大事にしつつ楽しむギャルのマインドにスポットライトが当てられていると筆者は見ている。

つまりは、見た目が派手じゃなくても心にギャルを宿し、それが令和におけるギャルの在りかたのスタンダードとなりつつある。こうしたことが起因となり、昨今は明確なギャルのアイコンが不在であっても、文化として成立できてしまう。これが令和のギャルではないだろうか。

というのも、平成ギャルの代表的存在といえば、安室奈美恵だった。“アムラー”なる存在がギャル文化の発端と言ってもいいほどに、当時の若い世代に絶大な影響をもたらしたモデル像が存在していた。だが、令和において安室ちゃんのような圧倒的カリスマは存在しなくてもいいわけだ。

外見ではなく内面のギャルさに重きが置かれるようになったことが理由か、ギャル的スタイルへの執着のようなものがなくなったともみて取れる。要するに「マインドギャル」の台頭が、ギャル文化の大きな転換点だったと言えるのではないだろうか。

②社会へと目を向け自分磨きする
(おバカキャラ→意識高い系)

マインドの他にもうひとつ、令和のギャルには「意志」という概念のアップデートが加えられているとも感じる。

これまでのギャルは「おバカさん」といったキャラクター性をどこかで強いてきた、そんな傾向が世の中にあったことは否めないだろう。砕けた言葉を使用したり、クラブで踊り明かしたり、真面目な印象からは程遠いところに位置づけられてきていた。ところが令和では、ギャルの意識の高さが評価される時代になってきていると感じてならない。

Kemio / X

例を挙げるならば、Z世代のカリスマKemio、ラッパーのAwich、そして「選挙ギャルズ」と名乗る団体がいいお手本。KemioはZ世代から多大な人気を誇っている存在で、若い世代に対する影響力を持っている。普段からSNS上で「選挙にいこう」と呼びかけるkemioは2021年末、「日本経済新聞(電子版)」のアンバサダーに就任。社会に目を向け関心を持つことってイケてる、そんなメッセージを発信している。

Awich / YouTube

HipHop界の女王「Awich」は、2023年7月にリリースし瞬く間にTikTok上でトレンドになった楽曲『Bad Bitch 美学』の中で、こんなリリックを口ずさむ。

“Bad Bitch 常己磨く インスタの前に日記開く”

「Bad Bitch」とは、かっこよくてイケてる、自立している、魅力的でホットな人という意味のスラングだ。歌詞からは自分磨きを怠らず、努力を重ねる意識の高さを読み解くことができる。

senkyo_gals / Instagram

そして、若くて派手なアバターを使用してSNS上で政治に関する情報を発信しているアクティビスト団体「選挙ギャルズ」。

これまでギャルと政治は直接的に交わる関係とは認識されてこなかった。しかし、彼女たちは戦争無理ポン、平和らぶい、人権バリ守ると主張し、「Love and Peace Parade」と銘打ったストライキを決行するなど、アクティブに活動を続けている。選挙ギャルズに対する賛否両論はあるが、それでもギャルも社会の一員としての役割を果たすし、それって超イケてるとエンパワーしていることは明白だ。

意識高く自分を貫ける
令和のギャル=Bad Bitch

というわけで、今の時代「ギャル」の新しい基準となる要素は2つ。己を貫くマインドセットと、社会問題に目を向けたり自分磨きを怠らない意識の高さ。

ギャルを構成する要素の変化は結果として性差関係なくギャルを誕生させ、マインドを共有するようにギャル仲間を増やしている。こうした考察から、令和のギャルを以下のように定義し結びとしたい。

令和のギャルとは、意識が高くて自分を貫けるBad Bitchだ──。

Top image: © K-Angle/Shutterstock.com
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。