何故、今の日本に“ギャル”が必要なのか?「ギャル式ブレスト」バブリー
いま、Z世代の人たちの中で「ギャル」というワードが、再び注目を集めている。
ひと昔前には、絶滅危惧種とまで言われた「ギャル」だが、今回はファッション的な文脈でなく、マインド面から「ギャル」という概念に光が当たっているのだ。
そんななか、「ギャル式ブレスト」というキーワードで世間を賑わすバブリーさんは、成績優秀な中学時代を経て、高校を中退し、大阪・東京で実際にギャルをしていた人物。
一見かけ離れているようにも思える「ギャル」と「ブレインストーミング」。だが、彼女が主催するワークショップの参加者からは「どんなやり方よりもアイデアが出る」と話題だ。
「ギャル」が持つその“マインド”に、いち早く目をつけていたバブリーさんに話を聞いてみると、なぜ今の日本社会でギャルが求められているのかを理解できた気がした。
今の日本に足りないピースは、もしかすると“ギャルマインド”なのかもしれない。
山梨県甲府市生まれ。生徒会長だった中学時代を送ったあと、高校を中退し、大阪でギャルに。その後、世間を賑わす「ギャル式ブレスト」を展開。現在は、CGOドットコムの総長。「Forbes JAPAN NEXT100」にも選出。
元生徒会長と“ギャル”との出会い
——中学生のときに生徒会長をやられていて、成績も優秀だったという話を聞きました。当時どのような生徒だったのか、エピソードを教えてください。
学校のルールはすべて守って、成績表はオール5、勉強も1番で、バスケ部の活動でもキャプテンをやっていました。いわゆる優等生と呼ばれる生徒でしたね。
——勉強も主体的にやられていたと。
そうですね。ただ、やりたくてやっていたというよりは、親や先生の言うことを信じて、意思を持たずにやっていた感じですね。
——そこから、16歳の時に学校に行かなくなったんですよね。
いわゆる地元の進学校に進んだんですけど、入学初日に「東大に行け」って言われまして。当時の私は、ちょっと中二病が遅れてきたタイプだったので、その時に「なんで勝手に決められてるんだろう」って違和感を覚えて。そこから学校へ行かなくなり、3ヵ月ぐらい不登校になって、高校2年生の春くらいに中退しましたね。
——成績優秀だった生徒が、その後どうやって“ギャル”と出会ったのでしょう?
当時、ネット掲示板で出会ったちょっとヤバい男の人がいて、その人とは当時付き合ってたんですけど(笑)その人がいる大阪に行こうと思って、家出しました。その人がめちゃめちゃヤンキーで、その人の周りにいた女の子たちがギャルでしたね。
——なるほど。東京ではギャルというと、原宿・渋谷といったイメージがあると思うんですけど、大阪ではどの辺りで遊んでいたんですか?
んー、難波か梅田でしょうか。でも大阪って、私の印象だと強くて可愛い子はみんなギャルでした。どこかに生息しているとかはあんまりなくて、至るところにギャルたちがいる感じでしたね。
シンプルながら深みある「ギャルマインド」
——そこから、「CGOドットコム」を起業されるまでの流れを教えてください。
「CGOドットコム」は、2020年の2月に立ち上げて、法人にしたのが、ちょうど1年前になります。
起業したいっていう強い気持ちがあったわけじゃないんですけど、繋がりと流れに恵まれました。ギャルって、今でこそ流行ってるんですけど、少し前には「ギャルが絶滅した」みたいなニュースも出ていて、当時はオワコンと言われていました。
ただ、当時から私はギャルの価値はファッションじゃなくて、マインドにこそあるんだよと思っていて、「ギャルマインド」を「自分軸・直感性・ポジティブ思考」の3つと定義してから、会社を立ち上げました。
——「ギャルマインド」から起業に繋がったと。
当時は、東京の方にギャルの知り合いがいなかったから、まずは草の根的にギャルたちとネットワークを広げていったりしましたね。
私もこう「N1(ビジネス用語:個人の体験としてという意)」で勇気をもらって、自分を変えることができたので、もしかしたら世の中にも勇気を届けられるかもなっていうのが、その時になんとなく思ってたことで。
そしたら某大手企業のおじさんが、じつは元湘南のギャル男で、今は上司に忖度をし、部下には気を遣って、間に挟まれてすごい孤独を感じてるみたいな話をちょうど聞いたんです。
もしかしたら、企業の忖度とか、固定概念に縛られるっていうのは「ギャルマインド」を通して変えられるかもしれないっていう気づきから、「ギャル式ブレスト」につながりました。
——なるほど、根底には、自分が「ギャルマインド」から勇気をもらったという事実があるんですね。
そうですね。そこは、間違いなく大きいです。
——ちなみに「CGOドットコム」には、本当にギャルの社員が多いんでしょうか?
今は半々ぐらいですね!半分はCGOと言って、ギャルたちのことを「チーフ・ギャル・オフィサー」と呼んでます。もう半分は、「MG(マインド・ギャル)」と呼んでいて、彼らがビジネスサイドをやってくれています。
簡単にいうと、ギャルクリエーターたちと、マインドギャルと2つに分けていますね。
「ギャル式ブレスト」、イノベーションが生まれる場所
——「ギャル式ブレスト」が生まれたきっかけについても、教えてほしいです。ギャルとブレストを組み合わせようと思った経緯はなんなんでしょうか?
私、最初は「ブレスト」って言葉すら知らなかったんです(笑)ただ初めに実証実験として、企業の人とギャルたちにお話をしてもらうみたいな場を創っていてて。
そしたら、ギャルたちのアイデアもおもしろいんだけど、「自分が自分らしくいられるようになった」とか「すごくコミュニケーションの量が増えた」、「なんかぶっちゃけて喋れるようになった」みたいなフィードバックを多くもらえることに気づきました。
そこで、もしかするとギャルたちは周りにいる人に、脳内ビッグバンを起こす力を持っているんじゃないかと思いまして。それを活かせる場として、どうやら「ブレインストーミング」という型があることを知って、その2つを組み合わせることになりました。
——実際に、「ギャル式ブレスト」をやられている光景や実績を見させてもらいました。スーツを着ている社員たちの中に、ギャルたちがいる光景はちょっとカオスだなと思いつつも、最終的に出てきたアイデアを見てみると、一見奇抜だけど、本当に実現できそうな革新的なアイデアがあることに感銘を受けました。
「ギャル式ブレスト」には、ルールが5つあります。
「ため口で話すこと」
「お互いをあだ名で呼び合うこと」
「役職や肩書は公開しないこと」
「5分以上沈黙しないこと」
「持っている服の中で一番好きな服を着ること」
この場でギャルたちには、自分が意見を出す場ではないんだよと伝えています。ギャルたちにみんながモチベートされることによって、それぞれが持っているギャルマインドを引き出すということを目標としているから。
あと、空間の部分もこだわっていて、暗くして、ミラーボールを置いて、音楽はEDMを流したり(笑)いろんな意見が出やすい空間を創っていますね。
——「一番好きな服を着ること」っていうのはおもしろいですね。
自分が好きな服ってなんだろうって考えてもらうところから、「ギャル式ブレスト」は始まっていて、そもそも自分は何が好きなんだって考えてもらえたり、自分軸ってどこにあるんだろうねっていうをファッションで表現してきてもらうことは大事にしてます。
——ギャルマインドってシンプルだけど、よく考えてみると奥深いなというのはつくづく思うところです。
そうですね、ありがとうございます(笑)
——あと、「敬語は禁止」っていうルールもあると思うんですけど、自分はなかなかこれが難しくて。このルールはうまくブレインストーミングで作用するんでしょうか?
やっぱり最初は慣れなくて、上司に敬語を使っちゃう人もいるんですけど、空間に馴染んだりとか、自分自身もひと皮剥けていくことで言葉もだいぶ変わってきて、皆さん最後のほうには問題なく、タメ語で喋ってますよ。
——実際に参加された方の感想を見ていると、自分の意見が肯定されている感覚っていうのが嬉しかったという人が多い印象でした。いわゆる日系の企業では、そういった雰囲気が新鮮だったりするんでしょうか?
そういってくれる方は本当に多いですね。別の企業でも、やっぱり無理を前提としてるコミュニケーションが当たり前のことが多くて。
「ギャル式ブレスト」では、どうやったらやれるんだろうとか、次に繋がるようなコミュニケーションが多くなるんですよね。
結局、今想像できることって、誰かがもう実現してたりするから、イノベーションの種にはなり得なかったりするんですけど。今は不可能かもしれないけど、もしかしたら数年後に実装可能なアイデアを潰さないっていうことが利点かもしれません。「イエス・アンド法」にも近いですけど、ポジティブなコミュニケーションを取っていくということは、今めちゃくちゃ重要なんじゃないかなっていうの思ってます。
——たしかに、多様なアイデアを出しまくることが目的である「ブレインストーミング」と、“ギャル特有”の「ポジティブマインド」っていうのは親和性が高いように思います。
そうなんですよね。ワークショップとかブレストに出てくださった企業の方々から、は、「どのブレインストーミングよりも、アイデアの量がたくさん出る!」っていうフィードバックを頂いてます。
日本をアゲ↑↑な社会へ
——他のフィードバックでは、「ギャル式ブレスト」を通して、組織にも良い影響が出たというコメントを見ました。公式サイトには、「組織コンサル」っていう言葉も出てくると思うんですが、ギャルには組織を変える力もあると。
はい、そう思っています。今の日本の会社の状況に課題感を感じてる方は多いんだろうなっていうのをとても感じています。やっぱり、日本の会議体とかを見てみると、誰かに気を使ったりすることは当たり前ですよね。個人としての問題もあるし、良いアイデアを持つ社員を組織として受け止められなかったり。
結果的に当たり障りのないアイデアばっかりが出てきて、新しいことはそこからは生まれないですよね。
——なるほど。今の日本社会に漂っている滞った空気感に対して、ギャルマインドは刺激を与える存在になるのかなと思いました。
本当にそうですね。アゲアゲ↑になった方が良いと思ってます(笑)
——また、それぞれの強みを活かして、それぞれが役割を果たしていくっていう組織構造自体も、他の企業に影響を与えるのかなと思います。
そうかもしれないですね。あと、私たちは、従来のギャルのイメージとはかけ離れたものとコラボレーションをすることを得意としているんです。今まではギャルといえば、コスメ、メイクだったりファッションなんかの仕事をしていることが多いと思うんですが、私たちが仕事を一緒にしているのは、建築会社だったりレガシー産業だったり。
そういった会社たちと関われるコラボレーションを積極的に行っていて、そこに差分があるからこそ、おもしろいイノベーションが生まれると信じています。
——最後に、バブリーさんが、ギャルという存在を通して、どのように世界を変えていきたいのか伺いたいです。
私のバックグラウンドの体験が大きいですけど、社会における「ギャル」の捉え方には、今も疑問があります。「頭が悪そう」なんていう言葉は、私もよく言われてきましたけど、実際関わってきたギャルたちは頭が良かったし、自分の軸を持って生きているカッコ良い人たちが多かったんですよね。「ギャルだから、こうでしょう」っていう偏見は変えたいと思ってます。
また、ギャルたちは、ファッションカルチャーと繋がりが深いので、モデルさんになっている子は多いんですが、なかには夜のお仕事に流れる友人たちも多くて。もったいないとかじゃないですけど、見た目だけでなく、中身にも社会的な価値がつくとすごく素敵だなと思っています。
自分たちは、ギャルたちの中身の部分をちゃんと発信して、価値を高めて、彼女たちに還元していく流れが会社としてできれば良いなと思っています。
【CGOドットコム 会社概要】
CGOドットコムは、「ギャルマインドで世の中をアゲにする」ことをミッションに、さまざまな人の「ギャルマインド」(自分軸/直感性/ポジティブ思考)を引き出す組織。主力サービスである「ギャル式ブレスト」は、ギャルとのブレストを通して、組織内のコミュニケーション硬直化の改善・新規事業創出のためのマインドセット獲得のサポートを実施。これまで、三菱鉛筆(株)や東急建設(株)など、30社以上の企業団体への導入実績がある。
・「ギャル式ブレスト」に関する問い合わせ:https://cgo-gal.com/contact/
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