バーチャルギャル「葵プリズム」をプロデュースするVIMの狙いとは?
バーチャルギャルとして知られる「葵プリズム」。彼女をプロデュースするのは、モデルエージェント「VIM」だ。
とは言っても、名前や人数などの具体的な情報は未公開……。「VIM」を運営するのは、株式会社yutoriのCEOである片石貴展さん。
「VIM」にはどんな人たちが協力しているの?葵プリズムをプロデュースする理由は?など、インタビューに答えてくれました。
「現実と虚構の境界線をバグらせたい」
──まず、VIMというモデルエージェントをつくった理由を教えてください。
オッケーです。その前に個人的な話から始めますね。
僕は1993年生まれなんですけど、僕らの世代は先天的な要素にこだわりすぎているような気がします。確かに容姿や運動神経は自分の一部なんだけど、固執するとツラい……。
自分で選べない要素が多いから、人生は運ゲーだなと思っているんですよ。
──言われてみれば、親が金持ちとか、東京に生まれたとか、すべて偶然ですね。
そう。でも、そんな“たまたま”でしかない要素を理由にイジメられたりもして、僕は少なからずトラウマとして抱えている時期がありました。トラウマやコンプレックスにとらわれると、やりたいことを思うようにできなくなってしまうんですよね。
そこに新たな価値観を提示することで、自分を変えて人生を楽しむ道が見えてくると思うんです。
──聞きづらいんですけど、どんなイジメだったんですか?
僕は原宿が好きだったので、その周辺にある古着屋で洋服を買っていたんです。で、ボロボロの服を着ていたら、必要以上にバカにされたんですよ。
当時は何かを表現することはイタいって思われていたから、それの延長線上で僕が着ていたのは“イタい”洋服だったんでしょうね。
詩を書いている人が「ポエマー(笑)」という感じで笑われていたし。
洋服の話みたいなのが積み重なって、自己表現をする時の足かせになってしまったんです。
他の人の話を聞いてみると、同じような経験している人が多かった。そういう人って、自分で自分を冷笑しちゃう。変に客観的になるクセがあって、誰よりも先に自らの価値を下げるんです。
──そんな考え方や生き方を変えるのがVIMのやりたいこと?
そうそう。
あえて完璧ではないバーチャルのキャラクターの言葉を通じて、そういう人たちの自己実現の後押しをしたいと思ったんです。
そして、僕がアウトプットの方向性が合っているなと思った人たちに声をかけて、葵プリズムの考えていることやファッションに共感するクリエイターたちが集まりました。
──ちなみに人数は?
十数人って感じです。
──あ、そこは教えてくれないんですね(笑)。葵プリズムのプロデュースはどのようにやっているのですか?
数人のクリエイターが葵プリズムと意思疎通をしています。で、リアル世界に発信をしているんです。
世界観や発言は、基本的に彼女たちにお任せです。
──葵プリズムが伝えたいことはなんでしょう?
SNSで本人に聞くのが一番だと思います。InstagramやTwitterでコメントをしてみてください。
──片石さんやVIMからは何かあります?
本当に伝えたい想いは表に出すべきじゃないと思っていて。徐々に感じとってもらえれば、嬉しいですね。
──彼女をプロデュースすることにした理由は?
新時代のインフルエンサーには、みんなが言いにくいことを言う適正があるといいと思うんですよね。
言いたいことを言えるギャル、葵プリズムみたいな存在が必要なんです。自分らしく生きればいいのにくすぶっている人の頬をたたくみたいな(笑)。
──生きにくい世の中で希望の光となるのが葵プリズムなんですね。
彼女をInstagramでフォローすることで、今ツラいと思っている人が変わるきっかけになるんじゃないかなと思っています。
SNSは見た目や属性を捨てて、内なる自分をさらけ出すのにピッタリな場所だし、最初はなりきりでも、いろんな人たちに支持されていくうちに、それが本当の自分の個性になっていったりする。めっちゃ夢がありますよね。
──『レディ・プレイヤー1』みたいに?
そうですね。僕は仮想か現実かにとらわれる必要なんてないと思う。そんなに価値があるわけじゃないから。
とはいえ、VIMはバーチャルのなかでもリアリティを追求しているんですけどね。
──というと?
葵プリズム以外にもバーチャルモデルを今後プロデュースしていくんですけど、ちゃんと盛り上がっているコミュニティに刺さるように設計していきます。やっぱり架空で終わってしまうと、親近感が湧いてこない。
現実を深く理解して、虚構の世界に落とし込む。それだけでなく、虚構の存在が現実を変えるみたいなことを起こしたい。現実と虚構の境界線をバグらせたいんです。
──……バグらせる?
当たり前のことでも、違う角度から考えてみると異常だったりする。「こういう見方もあるんだよ」と提示すれば、虚構が現実になることもあるかもしれない。固定概念の外側にあるものにも注目させたい。
葵プリズムが人間に影響を与えるってのもバグってます。実際にバーチャルギャルが人の気持ちを変えられるなんて、今ならではの考えだと思うんですよね。
──バーチャルモデルの走りである「ミケーラ」は洋服を販売しています。
そんなことも葵プリズムでやりたいなと思っています。今の段階でも彼女が手がけるファッションブランドは需要があるはず。
「結局、バーチャルでしょ?」で終わらせたくない。彼女の真似をする人がたくさん出てくるような仕掛けをつくっていきたいです。
──リアルにも影響力を持つってこと?
そう。
今まではリアルなものがバーチャルになっていたけど、これから先はバーチャルなものがリアルになることもあります。だから、VIMは現実にもフォーカスしていて。
デモやストライキもいいかもしれないけど、今の時代ならSNS上で同じ効果のあるアクションを起こせる。VIMとして直接的に何かを表現するというより、葵プリズムという一個人からメッセージを発信しているように。
そして、今までの価値観を変えていきたいです。一緒に葵プリズムと働いてくれる人がいるなら、いつでもお待ちしています。
──そんなこと言ったら、仲間になりたい人はたくさんいると思いますよ(笑)。
いいですよ。今僕たちは仲間を募集しているので、興味があったら僕のTwitterにDMしちゃってください。