人口200人の秘境に音楽が人を呼ぶ。野外フェス「ishinoko」

石川県小松市・滝ヶ原にて10月12日(土)〜14日(月)の3日間、アート・音楽・食の野外フェスティバル「ishinoko」が開催される。

都市部から離れたまさしく秘境。にもかかわらず、国内はもちろん海外からも多くの参加者が訪れる。今年5回目を迎える同フェスに人々が吸い寄せられる独特な魅力を紹介したい。

人口わずか200人の町で築く
新たな「祭文化」の形

©ishinoko株式会社

「いにしえのまつりを、今再び」をコンセプトに掲げるishinoko。国内外の若きクリエイター、アーティストが地元住民と一体となってフェスを作り上げていく。

日本の原風景と伝統文化が残る滝ヶ原だが、年々人口は減少傾向にあり過疎化に歯止めがかからない現状。現在、滝ヶ原に暮らすのはわずか200人ほどだ。そうした背景にありながらも、ishinokoはただ他のエリアから人を呼び寄せるだけでなく、地域の人々にもフェスを楽しんでほしいと考えた。今年、新たに新設される入場無料のコミュニティエリアは、この地を訪れる人と地元・滝ヶ原を繋ぐタッチポイントとなりそうだ。

たとえば、加賀地方の基盤として江戸後期より産出する「滝ヶ原石」の文化をめぐるツアーや、目と鼻の先にそびえる鞍掛山を愛する会によるガイド付きハイキング、さらには滝ヶ原石の釜で作られるピザや工芸品の展示など、この地を訪れる人々と地元を接続するアクティビティが盛りだくさん。

ジャンルや音の壁を超えた
秘境に鳴り響く「音楽」

©ishinoko株式会社

ところで、ishinoko 2024のラインナップは、じつに多様だ。日本のオルタナティブポップやエレクトロニックシーンの若手アーティストに加え、海外からも注目のミュージシャンが多数来日。以下、注目アーティストを紹介しよう。

洋の東西を問わずあらゆる音楽性を混在させたトラックを武器に国際的に活躍するNTsKi、世界各国のサウンドシーンを牽引してきたレジデントDJSAMO、そしてアルゼンチン出身の実験音楽家QOAのプレイも見逃せない。他にもアンダーグラウンドなアーティストを中心に17組を予定。

そうそう、滝ヶ原地域に伝承される和太鼓の演奏も見応え十分。美しいロケーションと音楽の調和に、自然と体が踊り始めるはずだ。

空腹を満たすだけにあらず!
独自の「フェスめし」スタイル

©ishinoko株式会社

ishinokoの特筆すべき点が“フェスめし”にある。

音楽フェスとは思えぬクオリティの高さは、訪れてその舌で体験してみないことには伝わらないかもしれない。が、例年フェスのためだけに特別編成された生産者・シェフ・出店者が集結。それも日本だけでなく、海外からも。季節ならではの加賀の味覚を活かした料理は、フェス会場であることを忘れさせるほど。

今年の注目は、コペンハーゲンから“パフォーマンスディナー”の旗手としてフードアーティストJohanne Stoffersenが腕を振るうほか、和食やエスニックの要素を取り入れたフレンチ「anneau」、シンガポールでの経験を活かした石窯ピザ「keenway」だろうか。他にも美味しい香りを会場に漂わす多様な味わいが出店予定だ。

フェスの合間にお腹を満たすというシンプルな欲求ではなく、地域や特産物を知り、食を通してこの土地をより深く理解する。こんなフェスめしが他にあるだろうか。

演者と観客が混じり合う
壁を取り除いた「アート」

©ishinoko株式会社

もうひとつ、ishinokoの独自性として挙げられるのが、パフォーマーと聴衆という壁を取っ払い、会場の全員がオープンな関係でインタラクティブな体験をつくりあげるというプログラムだろう。音楽とともにパフォーマンスも見どころのうち。そのパフォーマンスの輪に観客も加わるというのがおもしろい。

祭りと現代音楽を融合させ、独自の音楽形式を駆使したパフォーマンスで会場中を巻き込む「M集会」に期待大。さらには、滝ヶ原町内からは噛まれるとご利益があるという伝統の獅子舞が登場しダンスパフォーマンスを披露するそうだ。いずれも、見ているだけでなく参加してこその体験がそこにある。

自然と音楽と人と。
“手が届くフェス”なればこその魅力

昨年、現地で地肌で体感した筆者が思うに、滝ヶ原という地域に流れるある種独特な時間のゆるやかさと、そこで繰り広げられる音楽に参加者の呼吸が同調するかのように交わることで生まれる一体感。その化学反応に他のフェスと一線を画すishinoko固有の魅力が詰まっているのではないかと推測する。

夏場のうだるような暑さのなか、大観衆がひとつになって一体感を生み出す大型野外フェスとは性質が異なり、山から吹き下ろす風や足元で鳴く虫の声に秋の訪れを感じ、限界まで土地や自然と一体化した状態で音楽を楽しむのがishinoko。この日常とはかけ離れた時間の流れを音楽・食・アートを通して五感に染み渡らせる体験そのものが、ishinokoならではの価値を生んでいるような気がしてならない。

観光名所の代表地でもなければ、数万人が蠢くような大型フェスでもない。それでも海外から滝ヶ原に訪れる人たちがいる。観光地を巡っているだけでは知り得ない、この国に根付くカルチャーもフェスと同様にきっと楽しんでいるに違いない。地域の再活性と伝統文化の輪を広げたいと奔走するishinoko主催者らの想いが、海をこえて伝わっている何よりの証ではないだろうか。

なお、運営費用の補填やフェス文化を継承していくために、ishinokoならではのギフトが用意されたクラウドファンディングも実施。詳細・チケット販売などは、公式サイトInstagramでチェックを。

『ishinoko 2024』

【日程】10月12日(土)、13日(日)、14日(月)
【会場】石川県小松市滝ケ原町ヲ-66(Google map
【公式ホームページ】https://ishinoko.jp/
【公式Instagram】https://www.instagram.com/ishinoko.jp/

※チケットは現在、一般発売中。15歳未満の方は入場無料なほか、ユース割/北陸住民割(1日3,500円、3日間10,000円)など、お得なチケットも!

Top image: © ishinoko株式会社
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