PRADAが「宇宙服」をデザイン。月面探査を支える革新と未来

スマートフォンや電気自動車など、かつては「SFの世界」のものでしかなかったものが、今や私たちの日常に溶け込んでいる。そして、今まさに再び「宇宙」が、遠い夢物語から現実へと変わりつつある。

民間宇宙開発企業「Axiom Space」が、ラグジュアリーブランド「PRADA(プラダ)」と共同開発した宇宙服のデザインを発表した。 それは、人類の宇宙進出における新たなフェーズを感じさせる、画期的な出来事ともいえる。

©Axiom Space
©Axiom Space

NASAが認めた
民間企業発の宇宙服開発プロジェクト

Axiom Spaceとプラダという異色のタッグは、2022年にNASAがAxiom Spaceにアルテミス計画における宇宙服開発を依頼したことから始まった。 契約金額は2億2800万ドル(約346億円)。 Axiom Spaceは、宇宙服開発にはさまざまな分野の専門知識が必要不可欠と考え、素材、製造プロセスに精通したプラダに協力を仰いだそう。

「限界を超えることは、ブランド精神と私の両親のビジョンを完璧に反映している。今日の成果を非常に誇りに思う。これは、Axiom Spaceとの長期的なコラボレーションの第一歩に過ぎない」とプラダグループのチーフマーケティングオフィサーLorenzo Bertelli氏は語る。単なるファッションアイテムとしてではなく、過酷な環境に耐えうる機能性を備えた宇宙服開発に、同社の技術とノウハウが活かされることに。

-200℃の極寒にも耐える
次世代宇宙服「AxEMU」驚異のスペック

©Axiom Space

共同開発された次世代宇宙服「AxEMU」は、従来のものよりも柔軟性、パフォーマンス、安全性が向上しているとAxiom Spaceは伝える。 最大の特徴は、月面南極を探査するための特殊なツールを搭載している点だ。 マイナス200℃を超える極寒環境でも活動できるよう、少なくとも2時間の耐寒性能を備えているというから驚きだ。 さらに、男性、女性の体格差を問わず、幅広い体型にフィットするよう設計されている点も画期的と言えるだろう。

宇宙服も「自己表現」のツールに!?

今回のプラダの宇宙服開発参入は、単なる話題作りとして片付けてしまうには惜しい、大きな可能性を秘めている。宇宙服における「ファッション性」の追求だ。過酷な環境に耐えうる機能性や安全性が最優先されてきた宇宙服だが、そこに洗練されたデザインが加わることで、宇宙飛行士の“個性”を表現する新たなツールとなる可能性を秘めているのではないだろうか。

宇宙開発の進展に伴い、宇宙服は今後ますます身近な存在になっていくだろう。民間人が気軽に宇宙旅行を楽しむ時代が到来したとき、プラダが提案するスタイリッシュな宇宙服は、新たな宇宙時代のファッションスタンダードになるかもしれない。宇宙服を選ぶ基準が、機能性一辺倒だった時代は終わりを告げようとしている。あなたならどんな宇宙服で、どんな宇宙の旅に出かけたい?

👀GenZ's Eye👀

近年、Z世代を中心に流行りの「テック系ファッション」。過酷な環境下でも絶えられるアウトドアやスポーツの要素があるものをフッションに取り入れる系統のことをいう。PRADAもこのテック系によく登場し、赤い線が特徴の「PRADAsports」は古着市場で人気のアイテムだ。その中でも、今回の宇宙服というのは「最強のテック系」と言えるのかもしれない。

Top image: © Axiom Space
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。