人付き合いは、「アテンション」で決まる

ある日、あなたは退屈そうにソファに座って窓の外を眺めていた。すると木の枝の上にリスが乗っているのを見つけた。「あっ!」と声を出し、リスを指差す。すると隣で座ってテレビを観ていたあなたのパートナーは「どうしたの?」と訪ねてきた……。

何気ないこのやりとり、一見すればなんでもない日常の一コマに思えるが、じつはここに関係性をうまく進めていくコツが隠れている。

人間関係の根幹
“Bid for connection”とは

シアトルにある「Gottman研究所」は、一方の人間の何気ない行為、言動をbid for connectionと名付け、これは相手方からの反応を通してつながりを求める行為であると定義づけた。

また、カップルについての研究を行った臨床心理士のJulie Schwartz Gottman博士によると、Bids for connectionとは一方のパートナーがもう一方に興味を示したり、会話したりするきっかけを求める行為と定義づけることができるそう。彼女は、Bids for connectionに相手方がどのように反応するかによって二人の関係性がうまくいくかどうかが決まると説く。

”bids”は言葉によるものかもしれないし、身体的なものかもしれない。木の中にいる鳥を指さしたり、テレビで言っていたことを繰り返してみたり、アドバイスを求めたり、相手を微笑ませてみたり……。ここで何よりも大切なのは、どのようにアテンションを求めるかではなく、相手がどのように反応するかだ。

 

“反応’’の重要性

bids for connectionという言葉は、Gottmanの行った「Love Lab」という研究に端を発する。同研究は1986年から行われ、いくつかのカップルを6年間調査した。その結果、お互いのbidsの86%に反応したカップルたちは6年後も続いており、他方で33%しか反応していなかったカップルは6年後には別れてしまっていたそうだ。

bidsに反応を示すことをturning toward、反応を示さないことをturning awayと名付けたGottmanによると、いちばん良くない反応はturning against、いわゆる否定だという。bidsを投げかけた相手に「邪魔するなよ」と言われるような場合がこれに当たる。

Bids for connectionの原理

ミネソタ州在住の公認心理学者兼セックスセラピストであるLauren Fogel Mersy氏は、私たちは注意を向けられ、理解され、大切にされたいと思っているが、bidsを見落とされたり否定されたりすると、その逆、つまり注意を向けられていない、理解されていない、大切にされていないと感じてしまうと「CNN」の取材に応えた。

bidsが人間同士の関係性において重要であることがわかったが、すべてのbidsに反応すべきというわけではない。反応しない割合よりも反応する割合が高い程度で良いようだ。また、もしもあなたのパートナーがあなたからのbidsに無反応でいつづける場合は、注意を向ける必要がある。大切なのは、たとえ短い時間でも、相手に心を向けて接することのようだ。

“反応’’が人間関係を形づくる

さて、Bids for connectionは日本語に直訳すると“接続のための入札”となる。要するに繋がるための投げかけだ。相手に対してアテンションを向けるという行為は、相手に対する好意を表すものであるとも考えられる。

そしてこのBids for connection、なにもカップル間でのみ有効なわけではない。親子や友人、仕事上のパートナーにまで、幅広い人間関係において適用することができる。話し方や聞き方がコミュニケーションにおいて重要な要素とされているが、人と関わるときに本当に大切なのは、まず相手に興味を持つことなのではないだろうか。

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