重さ1兆トン、地球上最大といわれる氷山「A23a」が移動開始
「氷山の一角」という言葉があるように、私たちが普段目にする氷山は、ほんの一部にすぎない。巨大な氷塊は海面下にも広がり、想像を絶するスケールをもつ。
アメリカのロードアイランド州よりも巨大な氷山「A23a」も、そんな氷山のひとつだ。1986年に南極大陸から分離して以来、約40年間も海を漂い続け、2020年頃からついに南極海を離れ、北上を開始した。
巨大氷山「A23a」驚異のスペック
米「GIZMODO」によれば、「A23a」は面積約3672平方キロメートル、重さ約1兆トンという驚異的なスケールを誇る。これはなんと、東京ドーム約290個分に相当する大きさだという。
過去には世界最大の氷山として記録されたこともある「A23a」は、分離から長い年月が経った今もなお、その巨大な姿を保ちながら孤独な航海を続けている。
氷山の移動は
海洋生態系に"恵み"をもたらすのか
「A23a」は、その巨大さゆえに海洋生態系にも大きな影響を与えると考えられている。イギリス南極観測局(BAS)の海洋学者Andrew Meijers氏は「他の巨大氷山と同じルートをたどるのか、地域の生態系にどのような影響を与えるのか、見守ることは非常に興味深い」と語る。
BASは、最新鋭の極地調査船RRS Sir David Attenboroughを用い、極地の生態系を研究する「BIOPOLEプロジェクト」に取り組んでいる。その一環として、生物地球化学者Laura Taylor氏らは、「A23a」周辺の海水サンプルを採取し、氷山が海洋環境にもたらす影響を詳細に調査している。
Taylor氏は、「巨大氷山は、通過する海域に栄養分を供給することで、これまで栄養が乏しかった海域に、豊かな生態系を作り出す可能性がある」と指摘する。
地球温暖化による
氷の崩壊と海面上昇が示す「問い」
近年の地球温暖化により、世界各地で氷河や棚氷の融解が深刻化している。氷の融解は海面上昇を引き起こし、海抜の低い島国や沿岸地域に暮らす人々にとって、生活の基盤を脅かす深刻な問題となっている。
「A23a」の分離自体は、自然現象の一環である可能性が高い。しかし、その後の移動や融解プロセスは、地球温暖化の影響を受け、加速している可能性も否定できないだろう。
普段は意識することの少ない、地球の裏側で起きている現象。そこにも目を向け、「自分たちにできること」を改めて考える必要があるのではないだろうか。私達一人ひとりの小さな行動の積み重ねが、地球全体の未来を変えていく力となるはずだ。