研究者らが発見、古代エジプトのマグカップから「幻覚剤」入りのカクテルが検出
古代エジプト文明。それは、巨大ピラミッドや謎めいた象形文字など、私たちの好奇心を刺激する魅力に溢れている。
そして近年、その神秘のベールに包まれた文化の一端が、一杯のマグカップから明らかになったらしい……!
守護神「ベス」が刻まれたマグカップ
解析してみると……
情報サイト「Hyperallergic」によると、フロリダとイタリアの合同研究チームは、フロリダ州・タンパ美術館に展示されている古代エジプトの「飲料用マグカップ」に注目。
分析を行った結果、このマグカップには幻覚作用を持つ植物、人間の体液、蜂蜜、小麦、酵母、リコリスなど、驚くほど多様な物質が含まれていたという。
マグカップに描かれているのは、古代エジプトで家庭の守護神として広く崇拝されていた「ベス」。特に、妊娠・出産・育児における守護神として、また悪霊や病気から人々を守ると信じられていたという。
研究チームの一員であるDavide Tanasi 氏は、様々な遺物に残留物をサンプリングする技術を用いて、問題のマグカップを分析。その結果、先ほどの含有物に加え、小麦やゴマ、酵母など、発酵飲料の存在を示唆する成分が検出された。現代でいう、ビールの原型とも考えられるとのこと。
古代エジプト人は
一体、何のために……?
研究チームの注目を特に集めたのは、幻覚作用を持つ植物「シリアンルー」の存在。この植物は、夢のような視覚体験を引き起こし、鎮痛剤としても効果を発揮する。陣痛促進や堕胎薬として使用された歴史もあり、古代エジプトの人々に親しまれていたという。それに加えて、軽度の陶酔作用と鎮静作用をもつことで知られる「ブルーウォーターリリー(エジプトの蓮)」の痕跡も検出された。
研究者らは、このマグカップには少量の「人間の体液」も含まれていることから、日常的に飲むには適さず、むしろ豊穣や出産、あるいは神の啓示を中心とした祝祭や儀式のために用意されていた可能性が高いと結論づけた。
しかし、幻覚剤が入っているともあれば、古代エジプトの人々は現代人がヨガや瞑想を楽しむように、"チル"のためにこれらの植物を利用していた可能性も考えられる。
真偽は不透明だが、今回の発見は古代エジプト文明における宗教儀式の詳細を解明するうえで、非常に重要な手がかりとなるだろう。現代社会においても、健康やウェルネスへの関心が高まるなか、古代エジプトの人々が実践していた儀式や自然との共存の知恵から、学ぶべき点はまだまだ多い……。
※一部記事内容に誤りがあり、加筆修正をしております。