英国の高校生が「電話対応の授業」を受ける?デジタル時代のコミュニケーション課題が浮き彫りに
デジタルネイティブとして育ったZ世代が、意外なコミュニケーションの壁に直面しているようだ。
イギリスの一部の学校では、大学入試を控えた10代の生徒たちに対し、「電話のかけ方」を教える授業が始まっているという。
大学入試の電話交渉に備えるための授業
この取り組みの背景には、イギリスの大学入試制度「クリアリング(Clearing)」がある。
これは、Aレベル(大学入学資格試験)の結果が予測を下回り、希望の大学に進学できなかった生徒が、定員に空きのある大学に入学願書を出す制度のこと。
この過程で、生徒は大学の入学担当者と直接電話で話す必要が生じる場合があるらしい。
しかし、現代の若者たちはスマートフォンを日常的に使用しているものの、その用途は主にSNSやテキストメッセージが中心。
そのため、フォーマルな電話での会話に自信がなく、不安を感じる生徒が少なくないという。
ロールプレイングから実践まで、学校の具体的な取り組み
こうした状況を受け、一部の学校では生徒の不安を和らげるための対策に乗り出した。
『The Times』の報道によると、ランカシャー州にあるグラマースクールの校長、James Johnstone氏は、「彼らは驚異的なデジタルリテラシーを持っていますが、対人スキルはあまり発達していません」と指摘する。
同校では、6ヶ月間にわたるプログラムを開発。
模擬面接やメールの書き方に関するワークショップに加え、電話での会話をロールプレイング形式で練習する機会を設けているとのこと。
練習では、呼吸法や事前に台本を用意すること、適切な質問の仕方、「本日はありがとうございました」といったプロフェッショナルな会話の締め方まで、具体的な指導が行われるようだ。
デジタル化を目指す大学入試と過渡期の課題
大学・カレッジ入学サービス(UCAS)は、将来的にはこのクリアリング制度をデジタル化し、生徒がオンラインで自動的に提示されるオファーを受諾・拒否できるシステムへの移行を目指している。
しかし、『The Times』が報じたところによると、UCASの最高責任者であるJo Saxton氏は、このシステムの導入には数年かかるとの見通しを示している。それまでの間、生徒たちが電話でのコミュニケーションを乗り越えられるよう、教育現場でのサポートが求められている状況のようだ。
この電話対応の授業は、学生ローンの管理や健康的な食事作り、公共料金の支払いといった、より広い生活スキルを教えるプログラムの一環としても位置付けられている。
デジタル化が進む社会の中で育った若者が直面する新たな課題と、それに対応しようとする教育現場の動きがうかがえる。






