学校での「スマホ禁止」に10代が思うこと

「スマホがないなんて無理!」、そう感じる人が大半のことだろう。しかし、世界に目を向けると、学校へのスマホ持ち込みを禁止する動きが広がりつつある。背景には、スマホの使いすぎによる学力低下や、SNSを通じたトラブルの増加など、様々な問題意識があるようだ。

ここに紹介する記事は、先月「CNN」が「What this high school senior wants adults to know about classroom phone bans」と題して紹介した内容より抜粋したもの。教室での携帯電話禁止について、当の学生たちはどう感じているのだろう。現役高校生のリアルボイスをドウゾ。

スマホ利用禁止を決めた学校の対応

Mary Frances Ruskellは、サウスカロライナ州コロンビアにあるヒースウッド・ホール・エピスコパル高校の3年生。

彼女は10代としてスマホの利用禁止にどのような考え方を持っているのだろうか。

Mary:
今年の初登校日、私と友だちが教室に入ったときに先生は、教室のドアの近くにおいてある黒いプラスチックの箱の中にスマホを入れるように指示しました。

授業中にスマホを預けることは学校のルールでしたが、先生は初日の3時間目にはスマホを預けるように言うことを忘れており、二日目からは何も言わなくなりました。

先生たちは毎年こんな様子でしたが今年からルールは厳しくなり、毎日、毎時間、私たちはスマホを預けなければならなくなりました。

 

先生たちがスマホを取り上げることに躍起になっている理由は、スマホが子どもたちに与える悪影響にあった。

スマホが子どもに与える影響

ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネス倫理リーダーシップ教授であるHaidtは、スマホ中心の子ども時代は、将来彼らに心の不調を生じさせることになると論じている。

SNSは自殺や自傷など、有害なコンテンツに子どもをさらす可能性があり、特に思春期の女の子に対して自身の身体のコンプレックスについての悩みを助長し、鬱や自尊心の低下をもたらす危険性もはらんでいる。

また、スマホによって生徒が授業に集中できないことは、大きな問題であると既に多くの公立高校で認識されている。しかし、CNNによると4月に行われた「the Pew Reseach Center」の調査では、60%の教師たちがスマホ禁止のルールを実行することは難しいと答えたことがわかっている。

いくつかの州では学校でのスマホ利用を制限するための法律が定められており、すでに多くの学校では、在校中のスマホの利用を禁止している。にも関わらず、多くの教師がこの実行を難しいと感じているのはなぜだろうか?

スマホの利用制限

なぜ難しい?

スマホの禁止が難しいのは、その依存性の高さにあるようだ。

Mary:
確かに先生や専門家が言うように、スマホが私たちに悪影響を与えることは間違っていません。私の学校がこの問題に対処しようとしていることに感謝しています。

実際に、私は13歳のときに初めてスマホを持ちました。退屈な時はいつでもスマホをいじっていました。しかし、長い間スマホを見ていると時間を無駄にしていることをストレスに感じるようになり、そのストレスをごまかすためにまたスマホをいじる……無限ループにハマってしまっていました。

数年後、ようやく彼女はTikTokをスマホから消した。アプリを消したのは一日5時間もTikTokを使っていたからではなく、彼女自身がTikTok断ちをできることを証明したかったからだった。

Mary:
その後しばらくはスマホを使わない生活を楽しんだけれど、数ヵ月後、今度はInstagramのリールにハマっていました。

だから大人たちは、中途半端な利用制限よりも私たちからスマホを取り上げる方が最善の解決策であると考えるんです。

SNSの誘惑と10代の苦悩

Mary:
でも私はスマホを手放せません。学校や仕事、そして私たちの行う活動がスマホなしでは成り立たないため、スマホをやめたくてもやめられないんです。

学校のInstagramアカウントは私たちにとって必要な情報を発信しているし、校内イベントの情報だって知ることができます。それに他の人の投稿にいいねをすることは挨拶みたいなもの。10代の女の子としてInstagramは高校生活に必要不可欠なんです。

その他にも宿題について質問をしたり、友だち同士で話したりするためにスマホは必要。アルバイト先でもシフトを知ったり他の人に勤務を変わってもらったりするために連絡手段は必須ですから。

今の10代にとってスマホが生活の一部になっているのがわかる。しかし、Maryもスマホありきの生活に苦悩を覚えているようだ。

Mary:
ときどき、スマホを完全に手放せたらな、と思います。しかし実際にスマホ断ちに挑戦している友だちはみんな失敗しました。スマホを手放すことができないのは、この世界がスマホなしでは成立しないように作られているからなんです。

どうしたらこのスマホ利用の問題を解決することができるんでしょうか?私にはスマホなしの高校生活なんて検討もつきません。

スマホがなかった時代の学校生活

Mary:
私のお母さんが私くらいの年齢の時はソーシャルメディアなんてありませんでした。そのため、お母さんが高校でどんなことをしていたのかを聞いてみました。スマホ無しでどうやって生活していたのだろう?

お母さんたちが高校生だった頃は、ポスターを貼って私がスマホから得ているすべての情報を発信していたそうです。マーカーやグリッターを使って誰の目にも止まるように工夫していたようで、なんだかとても楽しそう。もしかしたら、昔の学校のやり方から習うのがいいのかもしれません。

少なくとも、スマホがなかった世代にどのように生活していたかを聞くことがスマホ問題の鍵になりそうだ。

Mary:
今のところは、インスタグラムの利用に時間制限をつけて使わないソーシャルメディアアプリを消して、よく使うアプリもホーム画面から消して検索しないと出てこないようにしています。使いづらくすることで使いすぎを防ぐことができると考えるからです。

しかし、彼女には自信がない。

Mary:
この方法で一日のスマホ利用時間を6時間から55分にすることができたけれど、社会規模での取り組みがなければこれ以上減らせるかはわかりません。

スマホ依存は「素質」か「環境」か

若者、特に10代のスマホ依存が問題となっている昨今、考えてみてほしいのはなにが彼らをスマホ依存にさせているのかだ。本人の素質、性格、それともMaryの言うように環境なのか。

スマホに依存してしまう10代が悪いのか、それともスマホがなければ成立しない社会を作ってしまった大人の責任なのか。あなたはどう思う?

Top image: © iStock.com/skynesher
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。