パイロットしか知らない「機内モード」の真実

飛行機内でもWi-Fiを使えることが当たり前になりつつある。快適な空の旅を楽しむための必須アイテムになりつつあるスマホやタブレットだが、機内モードについては「なんとなく設定しているだけ」「面倒だから」と感じている人もいるはず。

しかし、機内モードは、単なる航空会社のルールではなく、私たちの安全を守るための重要な役割を担っているようだ。

85万再生、パイロットの訴え

perchpoint / TikTok

あるパイロット(@perchpoint)がTikTokに投稿した動画が話題を呼んでいる。詳細を伝えた「Newsweek」によると、機内モードに関する内容の動画は、公開からわずか数日で85万回以上再生されたという。

動画内で彼は、「機内モードにしていないからといって、飛行機が墜落するわけではない」と語りながらも、機内モードを設定しない場合に起こりうる“あるリスク”について言及。それはヘッドセットに支障をきたす可能性だ。

なんでも、乗客が使用するスマホが着信のために無線基地に接続しようとする際、パイロットが装着するヘッドセットの電波に干渉するおそれがあるとのこと。

このパイロットの指摘は、決して大げさなものではない。元航空機パイロットで、現在はネバダ大学ラスベガス校の教授Dan Bubb氏は、Newsweekの取材に対し「(機内モードを設定するよう求めるのは)電波高度計への干渉の可能性があるため」と説明している。

電波高度計の重要性

電波高度計とは、航空機に搭載されている高度計の一種で、電波を用いて機体と地面との距離を正確に測定する機器のこと。パイロットは、特に着陸態勢に入る際などに、この電波高度計の情報を頼りに、安全な高度を保っている。

Bubb氏によると、「多くの飛行機ではパイロットの視界確保が難しく、電波高度計に頼って着陸態勢に入ることが多いため、電波干渉は深刻な事態になりかねない」という。

もし、機内でスマートフォンなどの電子機器が機内モードになっていなかった場合、電波高度計に誤作動を引き起こす可能性がある。これは、パイロットの判断ミスに繋がりかねず、最悪の場合、事故に繋がる可能性も孕んでいるというわけだ。

つながる世界と、切り離せない現実

現代社会において、スマートフォンは単なる通信機器ではなく、情報収集、エンターテインメント、決済など、生活に欠かせないツールとして完全に定着した。しかし、利便性が高まるいっぽうで、私たちはその電波がもたらす影響についても、あらためて考える必要がある。

航空業界では、世界的なパイロット不足が深刻化しており、「ボーイング社」の予測によると、2043年までに世界で67万4000人ものパイロット不足が発生するという。安全運航を維持していくためには、航空会社側の努力はもちろんのこと、私たち乗客一人ひとりの意識改革も求められているのではないだろうか。

機内モードへの設定は、ほんの小さなアクションかもしれない。しかし、その小さなアクションが、安全な空の旅の維持につながっていることを忘れてはならない。

Top image: © iStock.com/AlexeyPetrov
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