加速する「美容とゲームの融合」。先行するゲーミフィケーションの新天地

女優のクロエ・グレース・モレッツとミュージシャンのリナ・サワヤマが立ち上げたビューティーブランド「Godmode Beauty」。

このブランドは、製品を単なる化粧品としてではなく、アバターや独自の神話を持つ、物語性のあるゲームのような世界観の一部として提示している。

美容とゲームという、これまで交わることのなかった二つの世界が融合し、ブランドと消費者の新たな関係性を築き始めているようだ。

© godmodebeauty/Instagram

「自己表現のレイヤー」としての美容とゲーム世界

このトレンドの背景には、ゲームがもはやニッチな趣味ではなく、若者文化の中心的な柱となったことがある。

全世界のゲーム人口は36億人を超え、中国では7億人のゲーマーのうち約半数を女性が占めるという。

こうしたデジタルネイティブな消費者にとって、美容とゲームは別々の関心事ではなく、自己表現のための重なり合ったレイヤーなのだ。

Nak3dの創設者であるKelly Vero氏は、「アルファ世代やZ世代にとって、アバターは自分自身を映す鏡です」と指摘。

現実世界でのメイクと、オンライン上のアバターの外見は、彼らにとって切り離されたものではない、と分析している。

中国市場が先行する「ゲーミフィケーション」

美容マーケティングにおけるゲーム要素の活用(ゲーミフィケーション)では、中国市場が世界をリードしている。

欧米のブランドによるコラボレーションが一時的なキャンペーンに留まることが多いのに対し、Perfect DiaryやFlorasisといった中国ブランドは、限定アイテムの発売やコレクターズアイテムといったゲーム的な仕組みを、eコマースやSNSの体験に常時組み込んでいるという。

コンサルタントのMiro Li氏は、オンラインでのゲーム的な仕掛けが実店舗への来店を促し、その体験がSNSでの共有に繋がるという、シームレスな循環が中国ブランドの強みだと語る。

ロマンスシミュレーションゲームと口紅の色合いを連動させたゲランの事例のように、国際的なブランドもこの潮流に乗り出しているが、単にキャラクターの画像を印刷しただけの高価なコラボ商品は、ゲーマーから「誠意がない」と厳しい批判を受けることもあるようだ。

女性ゲーマーが求める「本物」の在り方

この市場で特に重要となるのが、増加し続ける女性ゲーマーの存在だ。

Vero氏は、「女性ゲーマーは、彼女たちの知性を尊重した深み、表現、そしてデザインを期待しています」と述べる。

彼女たちが求めているのは、単にピンク色にされた製品ではなく、力強さや個性、そして本物であること。

Godmode Beautyのチームが90%を女性で構成し、コミュニティとの対話を通じて製品世界を共創しているという事実は、このインサイトを深く理解していることの表れかもしれない。

『Jing Daily』は、ブランドがゲームを単なる販売チャネルではなく、敬意を持って参加すべき一つの文化として理解することが、次世代のエンゲージメントを築く鍵だと結論付けている。

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