休暇に行けないなら、AIに行かせればいい。偽の旅行写真を生成するアプリが登場

アメリカの労働者の半数近くが、年間の有給休暇を使い切れていない。

燃え尽き症候群(バーンアウト)が社会問題化する一方で、人々は休みたくても休めない現実に直面している。

そんな状況を逆手に取ったかのような、AI搭載アプリ『Endless Summer』が、今、皮肉な注目を集めている。

自由時間に作られた「偽りの自由時間」

『Endless Summer』は、ユーザーが実際に休暇を取ることなく、AIによって生成された「偽の旅行写真」を作成できるアプリだ。

開発したのは、MetaのSuperintelligence Labに所属するプロダクトデザイナー、Laurent Del Rey氏。

彼が自身の「自由時間」を費やしてコーディングしたというこのアプリは、Geminiの画像モデルを利用し、観光地やプールサイドでくつろぐ、ヴィンテージ風の休暇写真を自動で生成する。

毎朝2枚の写真が届く「ルームサービス」機能まで備わっているという。

穏やかな生活を「思い描く」ためのツール

開発者のDel Rey氏は、このアプリを「燃え尽き症候群に襲われ、自分が値する穏やかな生活を具体的に思い描きたい時」のためのものだと、X(旧Twitter)上で冗談めかして語っている。

あなたが見逃している素晴らしい休暇を、せめてAIで体験してみてはどうか、というわけだ。

しかし、このアプリがインフルエンサーによって、ブランド契約やエンゲージメント向上のための「偽りのライフスタイル」演出に利用される可能性も、容易に想像がつく。

「成功したふり」がもたらす皮肉な未来

皮肉なことに、このアプリで作り上げた偽りの人気が、彼らに実際の旅行をする経済的な余裕をもたらすかもしれない。

一方で、映画『Not Okay』が描いたように、こうした「成功するまで、成功したふりをする」というアプローチが、いつか大きな反発を招く危険性もはらんでいる。

ある専門家は、「企業が従業員の福利厚生として、縮小する有給休暇の代わりに、このアプリの利用料を補助する日が来るかもしれない」と、このトレンドがもたらすかもしれないディストピア的な未来を予見している。

Reference: nicoletaionescu
Top image: © iStock.com / Andrey Sayfutdinov
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