動物実験の段階的廃止を加速、英国政府が代替手法導入に向けた詳細なロードマップを発表

英国政府は、科学研究における動物実験をより迅速に廃止するための包括的な計画を発表した。

パトリック・バランス科学担当大臣によって公表されたこの戦略は、安全性と有効性が確立された代替手法への移行を促進し、政府の公約を実現するものだという。

生命科学分野の専門家や企業、動物福祉団体との連携のもと策定され、関係各所から野心的かつタイムリーな取り組みとして歓迎されているようだ。

代替技術の研究開発に7,500万ポンドを投資

この計画の実行を支えるため、新たに7,500万ポンド(約145億円)の資金が投入されることになった。

そのうち6,000万ポンドは、研究者間の協力を促進するための拠点設立や、新しい代替手法が規制当局の承認を得るまでのプロセスを簡素化するためのセンター開設に充てられるという。

また、医学研究評議会(MRC)、イノベートUK、ウェルカム・トラストからは合計1,590万ポンドが拠出され、有望な「ヒト生体外モデル」の開発が進められる。

これには、人間の細胞を用いて臓器の機能を模倣する微細な装置「臓器チップ」や、AIによる膨大なデータ解析、3Dバイオプリンティングによる組織サンプルの作成などが含まれる。

これらの技術により、動物を使用せずに医薬品の安全性や化学物質の影響をより正確に予測することが可能になるかもしれない。

2026年までに皮膚や眼への刺激性試験を廃止

今回発表されたロードマップには、今後数年間の具体的な目標が明記されている。2026年末までに、新規治療薬による皮膚や眼への刺激性、および皮膚感作性を評価するための動物実験を廃止する予定だという。

また、2027年にはマウスを用いたボトックス製剤の力価試験を終了し、医薬品へのウイルスや細菌の混入を調べる試験においてはDNAベースの実験室的手法のみを使用する方針が示された。

さらに2030年までには、薬物が体内でどのように動くかを追跡する薬物動態試験において、犬や霊長類の使用を削減することを目指している。

英国を代替手法の規制における世界的リーダーへ

英国はこれまでも、研究における動物の使用を「代替」「削減」「苦痛の軽減」する3Rの原則を推進する国立センター(NC3Rs)を設立するなど、この分野で実績を上げてきた。

今回の戦略は、その基盤の上に立ち、科学的な進歩を規制の枠組みに迅速に反映させることで、英国を代替手法の規制におけるグローバルリーダーとしての地位を確立させる狙いがあるようだ。

バランス科学担当大臣を議長とする委員会が監督を行い、来年には進捗状況を監視するための主要業績評価指標(KPI)が公表される予定となっている。

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