10代の人間関係が「30年後の体」を老けさせるという研究の衝撃

英紙『The Independent』が報じたバージニア大学の縦断研究が、思春期の対人関係と身体の老化速度の意外なつながりを明らかにしました。13歳から30歳まで追跡した121名のデータが示す事実は、子育て世代にとって見過ごせないものです。

17年間の追跡が示した事実

米国心理学会(APA)の学術誌『Health Psychology』に掲載されたこの研究は、Joseph Allen博士らが米国南東部の中学生121名を対象に実施したもの。13歳時点の攻撃的行動を、本人の自己報告・保護者による家庭内葛藤の報告・同級生の評価という3つの情報源から多角的に測定しました。参加者が30歳になった時点で、C反応性タンパク質や血糖値、白血球数など12項目の血液バイオマーカーを採取し、2つの検証済みアルゴリズムで「身体の生物学的年齢」を推定したとのことです。

結果、13歳時に攻撃性が高かった参加者は、30歳時点で生物学的老化がより進行し、BMIも高い傾向にありました。性別や家庭の収入、幼少期の疾患などを調整した後でもこの関連は有意だったといいます。

真の要因は「関係性の破綻」

注目すべきは因果の経路です。Allen博士らの分析によれば、攻撃性だけでは老化の加速を直接予測できなかったとのこと。老化が進んでいたのは、10代で攻撃的だった人のうち、成人後も対人関係の問題を抱え続けたケースに限られていました。つまり、攻撃性そのものではなく、それが引き起こす「対人関係の慢性的な破綻」こそが身体を蝕む真の予測因子だったのです。

良好な社会的つながりの蓄積がエピジェネティック(後天的な遺伝子発現変化による)老化を遅らせるという報告も近年増えており、対人関係の質と身体の老化が双方向に作用するという見方は学術的にも支持を広げつつあります。

「反抗期」を軽視しない視点

Allen博士は『The Independent』の取材で印象的な言葉を残しています。「思春期の若者は人間関係を生死に関わる問題のように扱うと揶揄されるが、ある意味で彼らは正しい」。大人が「反抗期だから」と片づけがちな10代の対人トラブルに、まったく異なる光を当てる一言ではないでしょうか。

一方、発達心理学の領域では、攻撃性が自我の確立や成長のための生命力として機能する側面も議論されています。問題は攻撃性の存在そのものではなく、修復されないまま成人期に持ち越される関係性の破綻パターンなのでしょう。

「関係性の健康」という投資

日本でも孤独・孤立が社会課題として認識され、人とのつながりへの関心は高まっています。しかしその議論の多くは成人や高齢者が対象。今回の研究は、対人関係の「健康格差」が思春期からすでに始まっている可能性を示唆しています。

子どもが友人とぶつかったり家庭内で激しく衝突する姿を見て、「そのうち落ち着く」と思う保護者は少なくないはずです。多くの場合はその通りでしょう。けれど、関係性を修復するスキルが育たないまま大人になったとしたら、それは30年後の身体に刻まれる健康リスクになりうるのかもしれません。問題行動の矯正ではなく、関係性を築き直す力を育てる支援へ。この研究は、そんな視点の転換を静かに促しているように感じます。

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