美容予約は「店」より「人」で選ぶ時代へ
ロンドン発のAI搭載美容・ウェルネス予約プラットフォーム「Fresha(フレッシャ)」が、施術者個人を検索・発見できる新機能「Professional Profiles」の提供を開始しました。予約の起点を「店舗」から「人」へと転換するこの動きは、私たちの美容体験の選び方そのものを変えるかもしれません。
「どの店か」より「誰にお願いするか」
これまで、美容やウェルネスのオンライン予約といえば、まず「店舗」を探すのが当たり前でした。エリアやメニューで絞り込み、よさそうなサロンを見つけて、空いている時間に予約を入れる——多くの方がそんな流れに慣れているのではないでしょうか。
しかし実際のところ、リピーターになればなるほど「あの人にまたお願いしたい」という気持ちが強くなるもの。SNSの普及によって、施術者個人の技術やセンスが可視化されるようになった今、消費者の意識は明らかに「店」から「人」へとシフトしています。
Freshaが今回リリースしたProfessional Profilesは、まさにこの行動変容をプラットフォームの設計に落とし込んだ機能です。同社の発表によると、スタイリスト、バーバー、セラピスト、ネイルテクニシャンといった施術者一人ひとりに、InstagramやTikTokのようなユニークなハンドルネーム(個人ユーザー名)が付与されます。ユーザーは施術者の名前で直接検索でき、プロフィールページには認証済みのクライアントレビュー、提供サービス一覧、リアルタイムの空き状況、施術写真、対応言語、資格、専門分野などが構造化されたデータとして掲載されるとのこと。
CEOのWilliam Zeqiri氏はこの機能を「美容・ウェルネス業界に特化したLinkedInのようなタレントコミュニティの構築に向けた大きな一歩」と表現しています。予約プラットフォームが、単なる空き枠の管理ツールから「信頼でつながるマッチング基盤」へと進化しようとしている——そんな意志が感じられます。
施術者の「働き方」も変わる
注目すべきは、同時に発表された「Fresha Workspaces」という機能です。これは施術者が複数の店舗をまたいで柔軟に勤務できる仕組みで、たとえば午前はA店、午後はB店といった働き方を、ひとつのプラットフォーム上で一元管理できるようになります。
この機能は、フリーランスやモバイルワーカーとして活動する施術者にとって大きな追い風となりそうです。自分のプロフィールという「ポータブルな看板」を持ちながら、場所に縛られずに働ける環境が整うわけですから。一方、マルチロケーションで展開するサロンやフランチャイズ事業者にとっても、スタッフの配置や稼働状況をより精緻に管理できるメリットがあるといいます。
ギグエコノミーやクリエイターエコノミーの波は、すでにさまざまな業界に押し寄せています。美容・ウェルネスの世界でも、施術者が「所属する店舗のブランド」ではなく「自分自身のスキルと実績」で評価される時代が、いよいよ本格化しつつあるのかもしれません。
数字が示す「個人指名」の需要
Freshaの規模感も、この潮流の大きさを物語っています。同社の発表によれば、プラットフォーム上には82万3,000件以上のスタッフプロフィールが存在し、そのうち68万1,000人が予約可能な施術者として登録済み。アクティブパートナーの97%がすでに予約可能なプロフィールを活用しているそうです。
月間の予約処理件数は3,500万件以上、取引額は14億ドル(約2,100億円)を超え、蓄積された認証済みレビューは1億件以上。2026年4月時点で月間ダウンロード数は100万件を突破し、グローバルのライフスタイルアプリランキングでトップ10に入ったとのこと。120カ国以上、14万以上の事業者が利用するプラットフォームとして、存在感を急速に高めています。
グローバルの美容・ウェルネス市場は、Fortune Business Insightsの推計によると2034年には約4兆ドル規模に達する見通しです。また、Towards Healthcareのレポートでは、ヘルス&ウェルネス市場全体が2035年に10.48兆ドルへ成長すると予測されており、パーソナルケアやビューティ領域が最大のセグメントを占めるとされています。こうした巨大市場の成長を背景に、「誰に施術してもらうか」を起点とした予約体験への需要は、今後さらに高まっていくのではないでしょうか。
予約体験の「主語」が変わるとき
日本でも、SNSで気になるスタイリストを見つけてからサロンを探す——という逆引き的な行動は、もはや珍しくありません。ただ、その「発見」と「予約」の間にはまだギャップがあり、SNSで見つけた施術者の空き状況を確認するために別のアプリやサイトを開く、という手間が残っているケースも多いはずです。
FreshaのProfessional Profilesが示しているのは、発見から予約までをシームレスにつなぐ「人起点のインフラ」の可能性です。施術者にとっては自分の技術や人柄を資産として蓄積・発信できる場であり、消費者にとっては透明性の高い情報をもとに納得のいく選択ができる場。予約プラットフォームの役割が「取引の効率化」から「信頼の可視化」へと広がっていく、その転換点を私たちは目撃しているのかもしれません。
現在、Professional ProfilesはFresha Webマーケットプレイスで利用可能で、モバイルアプリへの展開も順次進行中とのことです。






