「モテ服」から「自己表現」へ。60年分のファッション誌が映す価値観の変遷

「モテ服」「愛され系」「男ウケ」——かつてファッション雑誌の表紙を飾ったこれらの言葉を、懐かしいと感じるか、少しだけ息苦しいと感じるか。

「集英社」が創業100周年記念として発表した展覧会は、その感覚の変化そのものを約60年分の自社アーカイブで可視化する試みです。

告白としてのアーカイブ展示

集英社は1968年の『週刊セブンティーン』創刊以来、『non-no』、『MORE』、『BAILA』、『SPUR』、『MEN'S NON-NO』など数々のファッション雑誌を世に送り出してきました。それぞれの誌面には、その時代が求めた「こうあるべき女性像」「こうあるべき男性像」が色濃く刻まれています

つまりファッション雑誌とは、トレンドの発信装置であると同時に、ジェンダー規範の形成装置でもあった。その当事者が、自らの膨大なアーカイブを「規範がどう移り変わってきたかの証拠」として展示する——これはある種の告白に近い行為ではないでしょうか。

展覧会の欧文タイトルは「The Evolving Role of Shueisha Fashion Magazines」。直訳すれば「集英社ファッション雑誌の進化する役割」。ここにも、自社メディアの役割を固定せず、変化するものとして捉え直す姿勢がにじんでいます。

雑誌と読者の「共犯関係」

主催者メッセージには、「いつの時代も、雑誌は私たちを取り巻く社会の変化を映し出してきました」という一文が。

ただ、正直に言えば、雑誌は社会を「映した」だけではなかったはずです。誌面が提示する理想像を、読者が内面化し、それがまた社会の空気を形づくる——雑誌と読者のあいだには、そうした共犯関係のような双方向性があったように思います。

内閣府の「男女共同参画白書 令和6年版」を見ると、「男女の役割分担意識」に関する数値は年々変化を続けています。McKinsey & Companyの「The State of Fashion 2025」でも、グローバルなファッション消費の動機が「他者からの評価」から「自己表現」へとシフトしていることが指摘されています。

そう考えると、ファッション雑誌のアーカイブは単なるバックナンバーの山ではなく、日本社会の価値観がどう揺れ動いてきたかを記録した「文化資料」としての厚みを帯びてきます。

クローゼットを開けるたびに響く問い

入場無料という設定も印象的です。商業イベントとして回収するのではなく、文化的な問いかけとして開く。100周年という祝祭の場で、自社の功罪を含めた歴史を開示するという判断には、出版社としての覚悟のようなものを感じます。

「おしゃれするのは誰のため?」——この問いに、きっと正解はありません。けれど、かつて自分が夢中で読んだ雑誌の誌面を時系列で眺めたとき、「あの頃の自分は、誰の目を気にして服を選んでいたんだろう」という問いが、ふと胸の奥に浮かぶかもしれません。

『おしゃれするのは誰のため?展 ファッション雑誌が映し出す時代とジェンダー』

【会期】2026年12月11日(金)〜 2027年1月11日(月・祝)※2027年1月1日は休館
【開館時間】11:00〜20:00(予定)※曜日により異なる場合あり
【会場】ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ 9F)
【入場料】無料
【主催】集英社(創業100周年記念企画)
【公式サイト】https://100th-exhibition.shueisha.co.jp

※開館時間および休館日は都合により変更になる可能性があります。

Top image: © 株式会社集英社
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。